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認知心理学(宮城学習センター)
面接授業:宮城学習センター(2018/05/19~2018/05/20)
講師: 池田和浩

記憶研究のおこり
忘れる力も記憶
14歳から完全記憶
自分の意志とは全く無関係に雑多な記憶がフラッシュバックする
1800年代の記憶研究
ヴントと同時期に心理学研究室
忘れる力=要約する力
未来志向の認識
完全記憶→記憶が圧縮されていない→想起に時間がかかる
痕跡が蝋板に残っている限り、記憶
蝋板が歪むと痕跡がなくなる
蝋板には個人差
忘れる=使えなくなる
所持している鳥
今、思い出した記憶
所有している鳥
貯蔵されている記憶
忘れる=使えなくなるわけではない(今は使えないだけ)
忘却という日本語
忘:心が亡くなる。蝋板モデル
却:後ろへ下がる。鳥小屋モデル
哲学:記憶がどのように形成されるのか
16-19世紀 連合主義(ロック):心は白紙。情報と情報が連合することによって記憶が形成される
連合が強い→記憶は鮮明、連合が弱い→忘却
内観による。主観的なモデル。
哲学→心理学:主観的→客観的
もう1回完璧に学習できるまでの暗唱の数
10回で憶えた→忘れる→7回で憶えた→3回の回数が節約された(3回分の記憶能力が残っている)
ドンファンの節約率→22年後に再実験すると7%の節約率が残っていた
エビングハウスの記憶モデル
一般的な記憶
意思で失われた意識状態を再び意識に取り戻せる
忘れたという意識
過去に憶えていたということを覚えている
完全に忘却した人は忘却したことに気が付かない
意志の働きなしに自発的に現れる精神状態
ある特定の香りから、それにまつわる過去の記憶が呼び覚まされる心理現象。
再現されても想起したという意識が伴わない
20ms以下の映像は見たという認識ができない
リストの位置=系列位置によって思い出しやすい言葉と思い出しにくい言葉が分かれる
素材に依存しない
基本的にU字になる
最後があがらないときもある→記憶が2種類ある?
最初の間はリハーサルが可能
長期記憶を反映
妨害課題、干渉課題→遅延が大きいほど現れにくくなる
短期記憶を反映
親近性効果は単純に短期記憶で説明できるわけではない
単語ごとに妨害課題を入れる
親近性効果が復活する
単語の提示間隔と保持間隔の比率
親近性効果に関わっている?
親近性効果を完璧に説明できるわけではない
記憶の地図を作る
記憶機能
不注意→エラー
物忘れ→エラー
availability→低いとエラー
accessibility→低いとエラー
利用可能性は高いが、アクセシビリティが低い
記憶の分類研究
記憶は多様な要素の構成体
プラトンの蝋板モデルではない
注意された感覚記憶が短期記憶
されなかった感覚記憶は忘却される
短期記憶貯蔵庫にリハーサルが繰り返される
リハーサルが繰り返されるほど長期記憶に貯蔵される可能性が高まる
感覚貯蔵は意識にのぼらずに機能
実験には練習がいる
感覚記憶→容量は大きいが保持期間は非常に短い
アニメーションがなめらかに見えるのは感覚記憶に貯蔵されているから
感覚記憶がない人はボールを投げると瞬間移動しているように見える
感覚記憶で選択的注意された情報→短期記憶貯蔵庫
保持時間
妨害課題により再生を15秒遅延させると新近性効果消失
短期記憶は長くても15~30秒くらいしか保持できないのではないか
容量
人が物事を認識できる注意の幅:ミラーマジックナンバー7±2
チャンク(情報の塊)
人間が使用可能な情報量を増加する上で極めて重要
貯蔵形態:音韻情報
視覚的言語情報→音韻コードに変換
音韻的な文字列は干渉しやすいので人間は覚えづらい
P・T・Dの類似干渉
短期記憶貯蔵庫内でリハーサル→長期記憶
貯蔵形態:意味情報
音韻情報として長期記憶に貯蔵されることもあるのではないか(講師談)
多重貯蔵モデルの基本的な二つの仮説
短期記憶貯蔵庫を通過する
短期記憶貯蔵庫のリハーサルによって長期記憶への転送可能性が高まる
多重貯蔵モデルの欠陥
リボーの発見
健忘症患者は意味的記憶を失うが、無意識的記憶は維持している
エピソードは失う→技能や言語は失われていない
H.M.の症例
てんかん発作で両側側頭葉切除(Scoville & Milner, 1957)
海馬もほぼ切除
脳損傷前の記憶は無事
損傷後の新しい経験を記憶できない
鏡像模写(非常に難しい)などの技能は向上
練習したことは憶えていない
ヘンリーは鏡で年老いた自分を見ても驚かない
年老いていっているという自己認識を持っていた
紡錘状回(顔認識)は残っていた
紡錘状回を活用していたのではないか
他の症例ではびっくりした事例もある
リハーサルの回数が多ければ多いほど、長期記憶に貯蔵されるチャンスが増える
10円玉を何も見ずに描けない
リハーサルしていれば憶えるというものでもない
リハーサルの方法が重要
モデルの欠陥指摘後
短期記憶モデルに改良を加える研究
長期記憶を情報処理から新たに分類
タルビングによる分類
クレイク→記憶の処理水準の深さ

ワーキングメモリ
短期記憶→単に情報を保存する受動的なプロセス
ワーキングメモリ→保持情報を用いて行う一定の作業
注意制御を行いつつ、サブシステムを制御
従属システム
言語情報と音韻情報
視覚情報と空間情報
一次的な情報の貯蔵庫
音韻ループや視空間スケッチパッドの中身、一度中央実行系で処理されたものなど
事実・概念
前頭葉側頭葉の変性
単語は聞き取れるが意味が理解できなくなる
時空間が特定された記憶
スキル・技能、言葉にできない記憶
ドーパミンの放出量が少なくなる
統合失調症はドーパミン過剰
手続き記憶が障害される
意識的に想起
意識的に回想しなくても想起される
測定手法
先行する情報が後続する想起に影響する
最近出会った単語のほうが生じやすい
符号化される処理水準の相違により記憶成績が左右される
能動的な処理プロセス
処理の深さ
形態処理:表面的
視空間スケッチパッドを使った処理
音韻処理:少し深い
音韻ループを使った処理
意味処理:より深い
「はい」のほうが記憶に残りやすい実験結果
「いいえ」は「はい」より一様に低い
はいと答えたものは自分にとって意味のあるもの
批判
深い処理・浅い処理とは結果論ではないか?
脳科学的なデータで反論している
脅威:自分にとって危険なものは覚えやすい
報酬:自分にとって利益になるものは覚えやすい
ど忘れ
利用可能性は高く、アクセシビリティが低い
符号化するときの状況=検索する時の状況→想起しやすい
符号化するときの検索手がかり
実験 — いずれの実験も同じ文脈で記憶力が向上した
陸上と水中の再生実験(ゴッデン&バドリー)
男性の声と女性の声の再認実験(ゲイゼルマン&グレニー)
エクササイズ中と安静状態の再生実験(マイルズ&ハードマン)
古典的方略から得られる記憶促進方略
ハードウェア
脳を入れ替える、拡張
疲れているときに通常の認知能力に戻す
MMDAなどのスマートドラッグ
特殊例をのぞき、ハードよりもソフト改善
ソフトウェア
記憶料は記憶にかけた時間に比例
少しずつ、回数をかけたほうが記憶効率が良い
多くの古典研究からの頑健なデータ
徐々に難易度をあげる学習形態
インターバルを徐々に伸ばす
単純に正解し続けるのは記憶にとって良いわけではない
スランププラトー現象→難易度を高めたほうが良い場合もある
自分に関連した情報は記憶しやすい
意味処理
思い出す勉強
検索
モーツァルト効果は追試して全く再現されない
α波と記憶力には相関なし
記憶術
熟知した場所を利用
個々の情報を特定の場所においた状態を頭に思い浮かべ配置
具体的にイメージ化
物理的なものでないと覚えづらい
キテレツで卑猥でメチャクチャな状況を想定するのが効果的
この方法は海馬にある場所ニューロンの特性を利用している。
場所ニューロンは名前のとおり、場所の記憶を司る
場所の記憶は動物にとって重要なため、長期記憶に保存されやすい性質を持っている。
言語と視覚の両方の情報を符号化
番号の数字と同じ韻を踏む具体的なイメージ(peg)
ペグと記憶情報連結
視空間連想しやすい
名前を覚える
出身地や仕事などの情報は憶えるが名前は覚えられない
名前=視覚イメージのない情報
イメージが痕跡化する
だまし絵
形成化
顔と名前をどうペグできるか
行動よりも印象を記憶する
印象に矛盾した行動はさらに想起される
アメフトのラジオを聞きながら蛇行した道を運転
記憶を保存するだけの短期記憶では説明ができない
脳の中にコントローラーのような存在がある
ワーキングメモリーと相関のある事象
心理的障碍の抵抗力
社会的地位(Noble et al., 2007)
目標に向かって一時的に目標の遂行のために必要な情報を保持しながら処理を進める記憶システム(Baddeley, 1986)
処理資源のトレードオフ
情報保持↔情報処理
音韻ループ視空間スケッチパッドからの情報を統合し、不適切な情報処理を排除するといった、情報処理を支える制御機構(Baddely, 1992)
音韻ループと視空間スケッチパッド両方に処理資源があふれる→どちらかに絞る、など
ランダムな文字列生成課題
必要な情報を必要な量だけ必要なところに割り当てる
中央実行系は前頭葉が深く関わっている
課題関連情報を維持
今自分が何をやっているのか、何をこれからするのか
プランニング
複数課題の遂行
他者の内的状態の推測
課題セットの切り替えと抑制
葛藤の検出と(セルフ)モニタリング
イメージングのトレンドは変わりつつある
部位ごとの仕事ではなく、部位同士がどうつながっているかというストリーミングで捉える
内的なリハーサルで音韻情報を留める
音韻ストア:リハーサルによって維持される短期記憶貯蔵庫
構音コントロール:視覚的言語情報を構音コードに変換
音韻ループの特性
構音抑制(articulatory suppression):単純な音、言葉を発すると自分が処理しようとしている文章読解能力が下がる
語長効果:短い単語よりも長い単語の方が、再生が難しいという現象。
多数の音節からなる語は、リハーサルや再生を行うのが難しい。
音韻ストアに保存できる長さ
イメージング
言語系の処理は左脳優位
音韻貯蔵:ストア
頭頂/側頭の傍シルビウス
心内音声化:コントロール
視覚情報・空間情報の一時貯蔵
音韻的にリハーサルできないもの
視覚情報を一時的に保存
e.g. ロシア語を知らない人がロシア語のある文字列を憶える
ロシア語を知らない→音韻ループが作動しない
言語情報処理ができないので、見たままを覚えなければならない
場面の配置を維持
視空間スケッチパッドの干渉
右手で三角、左手で四角を描くのは難しい
過剰不可がかかるとコントロールできない
視覚キャッシュインナー・スクライブが駆動する脳の部位は違う
イメージング
右脳において全体的なストリーム処理が行われる
視覚系の処理は右脳優位
視覚はまず後頭葉
上を通るのがスクライブ
下を通るのが視覚キャッシュ
その後、前頭前野で統合
形や色の処理
空間・動きの情報処理
長期記憶から回収された情報とワーキングメモリを占拠している現在の情報との統合
中央実行系は情報を貯蓄しない。
中央実行系で処理した内容をエピソードバッファに一時的に保持
音韻ループは言語系、視空間スケッチパッドは視覚系の情報をキャッシュできるが、統合できない。
イメージング
海馬を使っていることは間違いないとは思われる
まだ議論中。様々な研究のメタ分析から提唱された。
右と左の前頭前野でやっていることが違う
左前頭領野→記憶の符号化と意味記憶検索
右前頭領野→エピソード記憶からの検索
エピソード記憶は時空間の情報処理
質疑応答
お酒で記憶を失うこと
お酒は神経毒
海馬が麻痺するので一時的な健忘が生じることがある
ワーキングメモリの大きさは年齢によって変わるのか
本日の授業で詳細
現実的には落ちる。
30歳がピーク
ワーキングメモリは精神状態によって変わるか
昔は生得的に決まっていると考えられていた
現在は変化すると考えられている
トレーニングで増やせる
増やしたものを日常生活のどこで活かせるのか?→転移の問題がある
転移を検証するのはとても難しい
ある状態に陥るとワーキングメモリは縮小する
身体で憶えることと身体感覚の境目は?
身体感覚自体がスキルの記憶
ものに届くかという物理的な認識と適切な行動の表出の仕方=社会的な文脈は分けて考える必要がある
ジル・ブライスのような脳の持ち主がなぜ存在するのか
基本的には一種の脳障害
H.M.の過去の記憶はどこに保存されているのか
エピソード記憶意味記憶が内包されているところは基本的に違っている
それがどこなのかはまだよくわかっていない
側頭葉のあたりが大事だと言われている
前頭がないとコントロールできない
ストリーム系の処理がトレンド(コネクショニズム)
どこがどのような仕事を担っているのか?ではなく、どことどこがつながっているのかが重要
類似干渉は日本語でも実験は行われているのか
無くはないとは思う。知らない。
日本語は特殊。漢字にイメージ内包がある。干渉が起こりづらいかもしれない。
うつを漢字でどう書く?→ペンを持ってないと空書する
漢字文化圏に特有の行動
意図的に忘れることができるのか
実験状況下において、検索誘導性忘却指示忘却などの実験がある。
記憶にロックをかける。
比較実験。思い出しづらくなる傾向がみられる。
Baddely, 2012のモデル改訂版
最新モデルではエピソードバッファがシステムを中継するように修正
五感が対応するようになった
臭覚味覚はエピソードバッファと紐付いている
プルースト効果も説明できる
ワーキングメモリの進化
チンパンジー道具(再利用はしない)
道具をどう使うのかはワーキングメモリの指標になりうる
ホモ・ハビリス:250万年に石器使用
石をぶつけてとがらせる→使用後に捨てる
ホモ・エレクトゥス:180万年前に道具を保存
左右対称な手斧を作成(アシューリアン石器)
心的表象を維持する創発的な能力
作った手斧を捨てなくなった
作成した石屑も保存した
ネアンデルタール人:20万年前に槍を作成
脳容量はホモ・サピエンスより多い
狩猟の成功確率が飛躍的に向上
ホモ・サピエンス:10万年前に修理道具を活用
飛び道具を作成
現場で修理できるように修理用具を持ち歩いていた
Lion-man 象牙を削って作成
WMの萌芽はエレクトゥスあたり?
現代と同じWMが形成されたのは?
エレクトゥス→ネアンデルタールで脳容量が増加している
脳容量の増加かWMかわからない
道具の持続可能性
長期的な時間認識
緊急時想定、計画
反応抑制
狩りに行く前に道具や修理用品を準備
現代と同じWMを持っていると断定できるのはホモ・サピエンス・サピエンス
装飾品を作っている
抽象化比喩心的表象の外在化
5万年前くらい?
進化史でみるとWMは最新技術
WMと知能は相関がみられる
知能テストは何をはかっているのか?
よくわかっていない。
知能の定義が曖昧
作成された経緯が恣意的
結果論で改定。改定が頻繁。
WM
概念(定義)が固定的
心理学的・生理学的理論に基づき課題が作成される
構成概念に基づき作成された課題→改定がほとんどない
IQの歴史
様々なテスト結果に正の相関
g因子(general 一般)によって知能の高低が決まる
知能のモデルは揺れ動いている
Binet(1911)
知能遺伝によって決まっているという考え
子供の知能測定→軍で使用
すぐに使われなくなった
テストのスコアが高くても兵士としての能力が低い
α式(言語知能系)とβ式(非言語系)
βテストを改定
αテスト→SAT
意味を見出す能力(g因子)
IQ、概念もテストもバラバラ
ワーキングメモリテスト
配列の異動判断
あまり使われていない。最近は徐々に。
数回前に提示された情報との異同判断
n回で難易度調整できる
文字だけでなく、絵や図形もできる
音韻ループ、視空間スケッチパッドなど駆動するシステムを変更できる
2個前:あ→い→う→→お→う→
最も使われている。
推論課題と極めて高い相関がある
コンプレックススパン課題と同じ場所が使われている
容量と個人差
横断研究(ある時期の全世代を同時)と縦断研究(追跡研究)
言語性2と視空間性1つのWM課題 (Alloway & Alloway, 2013)
30歳くらいでピーク
5-19歳:急増 → 20-39歳:微増 → 40歳以降:微減
言語性ワーキングメモリは頑強
なぜWM容量が失われていくのか
貯蔵空間が入力情報で専有された
注意散漫になりやすい→余計な情報を圧縮できない
あらゆることを同時にやる生活が日常になる
同時並行で行うので認知不可が高い
生活習慣でテストの結果が違うのではないか?(先生談)
絵を書くなど一つのことに集中する
処理と保持のトレードオフ
処理が多すぎる→記憶の忘却や変容
保持が多すぎる→処理速度の低下やエラー
認知配分のエラー→全体の処理エラー
低成績の特徴
一つの方略しか知らない
いらない情報の抑制ができない
近年はマインドフルネスに注目
処理資源の限界は個人差が顕著(Just & Carpenter, 1992)
加齢変化と対策
高齢者→一貫した能力低下
差の大きさはそこまでではないが…統計的に一貫した違いが見られる→差がある
歴史的変化による世代の格差
コホート効果を除いた世代差があるか
推論能力から推測
16年間の変化の縦断研究
若干落ちるが横断研究の1年分しか落ちていない
ワーキングメモリの拡張
記憶術
具体的なものには使えるけど抽象的なものには使いづらい
具体的なものに対する能力が抽象的なものにも使えるか
転移があるかどうか?
二重課題→スケジューリング課題の成績が向上
転移効果がある
2ヶ月くらい持続
1年ほど転移効果
転移効果があるのではないかという研究が複数ある
本当にWMのトレーニングの転移効果なのか?という批判
高齢者のWM改善に効果
第一世代型(パックマン、テトリス)はWM能力の向上に効果はない
テトリスなどはむしろ考えなくするのには効果がある
PTSDなど
RTSは効果あり
RoNをやったあと、Nバック課題の成績が向上した。
ワーキングメモリを向上させるには
注意を1つに集中
気が散ることへの監視
タスクスイッチング能力:気が散ったことから即座にもとに戻す
マインドフルネス状態
思考はあらゆるものを受け入れる
モニタリング能力
この2つの瞑想は排他的ではない
フォーカスアテンション→オープンモニタリングが多い
瞑想とワーキングメモリの関係
注意
瞑想経験が優位になる
選択的注意の効果が出る(Jha et al, 2007)
3ヶ月以上効果が持続する(MacLean et al, 2010)
注意資源の配分が効率化される
集中度と関連するEEG(P300)が瞑想経験者に出現しやすい(Slagter et al, 2007)
容量
瞑想群はWM容量が増大する
Nバック課題に類似した記憶テスト向上(Chambers et al, 2008)
WAISの数唱テスト向上(Zeidan et al, 2010)
兵役軍人のオペレーションスパンテスト向上(Jha et al, 2010)
記憶障害者の発話流暢性や論理的記憶向上、脳血流変化(Nなんとか)
WM推薦本

変化する記憶
なぜ記憶は変わるのか
古典的な実験
単純な線画を再現する時に生じる再構成(Carmicheal, Hogan & Walter, 1932)
提示された言葉で保存された記憶が変質
与えられた言語ラベルと似るように記憶が変化する
「幽霊の戦い」の再生実験(Bartlett, 1932)
西洋人にとってはつじつまが合わないと思える部分や迷信的な出来事が含まれる物語
筋が通らないので再生率は低くなる
どう変わるか?という研究
実際の物語よりも短い
既存の知識や文化的期待に沿うもの(筋が通った話になる)
物語を読んだときの反応や情動に結びつく
Bartlettの研究を追試した人はほとんどいなかった
Bergman & Roediger(1999)で追認
歪んだ記憶にほとんど変化はない
正確な記憶は時間経過とともに減少
重要変数
なじみのないスキーマ
長いインターバル
知識構造
柔軟で適応的
個別的かつ能動的かつ動的なシステム
検索
検索の時点でスキーマの再構成がすでにはじまっている
検索は自分が保持している情報を正しく引き出すということが前提となっていない
関連情報をfetchしてmergeする
情報に穴があれば補填する
間違った告発
勉強はeasyな記憶
間違っても正しい答えにすぐに再構成すればよい
トンプソン(心理学者)
レイプ犯に間違えられた
同時刻にトークショーに出ていた
犯行中にトークショーが写っていたため、トンプソンの顔と犯人の顔がすり替わってしまった
誤判研究
誤判が最も多いのは殺人事件、強盗、強姦
原因の50%以上は目撃者の誤識別
誤判の原因の90%が目撃者が関与
これらは無実を主張する人達でDNA鑑定を実施して無実が証明できた人達
DNA鑑定ができない人々は数字に入っていない…
目撃証言研究
Loftusを中心としたグループ 1970~
車の衝突動画→スピードについて質問
質問の単語の激しさ→答えるスピードに反映
車の衝突動画(窓ガラス割れてない)→割れた窓ガラスを見たか?
程度の激しい単語→破損した記憶が増加
スピードの程度と違い、記憶インプラントされている
誘導の意図がなくても、事実に反する記憶が形成される
この研究を起点として、いかに正確な記憶が保存されているか?→いかに記憶が歪んでいくのか?という方向に。
被暗示性測定
語法の変化は記憶の誘導効果を生じさせる
被誘導傾向にある人
検査:GSS, CIS
スポーツカーの映像→納屋はあるか?(実際にはない)
出来事を経験した後に、その出来事に関する誤った情報が与えられると記憶が変容し誤った想起がなされる
事後情報一致群と誤情報群では正解率がチャンスレベル(偶然起こるレベル)を超えている
誤情報効果の特徴
記憶の3段階(符号化・保持・想起)のそれぞれのフェーズで誤情報効果を検証
効果の適応範囲
あらゆる対象(ヒト・モノなんでも)に対して誤情報効果は生じやすい
効果の適応年齢
どの発達段階でも出る
弱い年代は基本的にない
警告効果
警告すると誤情報効果が抑制される
情報の隔たり
見た情報と誤情報の違いが大きいほど効果は抑制される
情報の文脈性
文脈情報があると効果は抑制される
いつ、だれから聞いたなどの文脈を使用できる状況
誤情報効果の理論
統合仮説
オリジナル情報を事後情報は上書きする
共存仮説
オリジナル情報と事後情報はそれぞれ残っている
統合仮説と共存仮説の包括的理論
意味的関連度と処理過程の概念を付け加えたモデル(Cachapuz & Maskill, 1987)
意味的関連が強いものほど密接
一つの概念が活性化すると隣接するその他の概念も活性化する              
概念ノードとリンク
文脈情報を概念として表現
起源の同定は概念間のリンクの活性化に従うことで行う
80年代
虚記憶生成実験(Roediger & McDermott, 1995)
12単語を聴覚提示→40%が虚記憶を生成
15単語になると55%
リンクが増えれば増えるほど、ターゲットとなるルアー項目の想起率が上がる
73%がリストの中に確かにあったと思い出せると判断した
虚記憶のイメージング
正再認と虚記憶の脳の動きは非常に類似している
内側側頭葉領域(海馬近傍)→見たものは鮮明度が少し高い。
語法効果×誤情報効果(池田, 2010) 先生の実験
ネガティブな記憶に対して、質問→誤情報を与える時、丁寧な言葉と粗野な言葉で実験
FA率(フォールスアラーム)→高いほど間違えている
丁寧なほどFA率は高くなる
ソース・モニタリング:情報の起源についての記憶(ソースメモリ)を弁別し、判断する認知プロセス(Johonson, Hashtoroudi & Lindsay, 1993)
リアリティモニタリングはソースモニタリングの一種
リアリティモニタリング:内的に得られたもの
外的ソースモニタリング:外的に得られたもの
記憶がどの程度鮮明かによって決定
感覚的印象が強い
高い明瞭性
詳細な記憶想起
現実で起きうる事象
内容の一貫性が高い
質的リアリティが高い記憶は現実だと判断
感情と記憶
エピソード記憶と深い関連
感情研究は難しい
感情と進化
西洋合理主義
感情は理性的な思考を妨害する要素
原始的で動物的
進化上に残った残滓
近代
感情システムは適応を生み出すのに必須のメカニズム(戸田, 1992)
基本感情の意味
喜び:適応感
楽しさ:達成感・好奇心
新規の経験と結びつきやすい
動物は環境に自分を適応させる、人間は環境を自分に適応するように変化させる
新しい環境を作り出したいという欲求
恐怖:消極的危機回避
怒り:積極的危機回避
嫌悪:忌避感
いじめ→くさい、ばい菌。嫌悪反応から。
驚き:予測不能事態対処
驚き→危機→恐怖 or 怒り
悲しみ:喪失感
喪失してしまった状態→未来がなくなる
力を温存
悲しみは他者援助を受けやすい
用語
感情:2つの包括概念
情動:一時的な強い感情
気分:持続的で弱い感情状態
感情が生じた際の主観的な意識
2つの軸
生理的な覚醒状態
主観的な意識と一致するとは限らない
おこっている!Arousalが高い
リラックス→Arousalが低い
快-不快次元
ポジティブ・ネガティブ
情動刺激→抹消神経→大脳皮質→身体反応→大脳皮質にフィードバック→感情的な主観経験
緊急反応の生理反応は画一的で感情を区別できない(キャノン)
脳破壊実験
視床下部が情動の中枢
情動刺激→視床下部→身体反応 & 大脳皮質→感情的な主観経験
身体反応と感情経験は平行して生じる
悲しいから泣くというよくある例は正確ではない→悲しいと泣くは同時に出ている
視床下部前核帯状回海馬を結ぶ情動回路
ジェームズ-ランゲ説とキャノン-バード説は両方存在する
扁桃体側頭葉前方、情動的な記憶に関与
直接ルートと間接ルートの2種類
直接ルート:視床→扁桃体。すばやく反応できるが処理が荒い
間接ルート:皮質を経由する。時間はかかるが正確な処理
感情と記憶
注意システム
強い注意が向けられた
扁桃体が海馬の動きを活性化?
扁桃体と海馬の関連
近い
感情と記憶は密接
自分の命を脅かすナイフや銃→犯人の顔や身なりを憶えていない
言語的記憶の抑制&意識的なアクセス回避
主体的にアクセシビリティを下げるという研究結果
抑制プロセスには異論あり
繰り返し思い出すから?
神経学的なメカニズムがゼロだとは思っていないが、30くらいでは。70くらいはリハーサルの影響なのではないか(先生談)
想起
感情が生起しているときには感情が一致する記憶を想起しやすい
知識表象における活性化拡散。対立する感情ノードは抑制しあう。
怒り←促進←悲しみ→抑制→喜び
ネガティブ感情時に中性感情時よりポジティブ記憶の想起が促進される
ネガティブ状態にあるとき、どうすれば?
気分緩和動機:自らの感情を緩和しようとする動機
ネガティブ感情時
重要な課題が控えるとき
感情を経験するだけでWMが圧迫される
気分緩和動機が高い→気分不一致効果
自尊心が高い、抑うつ傾向が低い→気分緩和動機が高い
効果の自動性
気分一致:自動的
気分不一致:意識的
自己の膨大な知識は複数の自己側面に分けられ保持されている(Linville, 1985)
状況ごとに対応する側面の自己知識のみが活性化(Markus & Wurf, 1987)
試験に失敗した自分→勉強している自分は感情と結びつきやすい(気分一致効果)
全く関係ない側面=友人が多い自分は結びつかない
全く違う側面=全く違う自己知識表象を意識すれば気分不一致効果を生じる可能性も高まる
自己知識の構造の個人差
値の高さは多くの事故知識が分化したことを示す(Linvile, 1985)
自己複雑性が高い→使用できる自己知識が多いと逃げ場所が多くなる→気分不一致効果のチャンスが増える
自己複雑性が低い→逃げ道が少ない