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ウィナー・テイク・オール: ひとり勝ち社会の到来

> 1章 「ひとり勝ち」市場
> 2章 「ひとり勝ち」市場の発生
> 3章 「ひとり勝ち」市場の成長
> 4章 急騰するトップの所得
> 5章 マイナーリーグのスーパースターたち
> 6章 競争者が多すぎる?
> 7章 浪費的な投資の問題
> 8章 教育的名声をめぐる戦い
> 9章 浪費的競争の抑制
> 10章 「ひとり勝ち」社会におけるメディアと文化
> 11章 古いワインを新しいボトルに
WTA(Winner Takes All)についての本
1998年発行の本
2022年現在は更に「ひとり勝ち」社会が広がっている
企業のトップ・CEOの報酬は増大する一方で、従業員の報酬はたいして増大していない
報酬の格差拡大の理由は、「機械の分布の偏り」であり、「能力の格差拡大」ではない
公正世界仮説は増々ぶち壊されている
アメリカにおける所得格差は問題となっている
アメリカと比べると日本ドイツの所得格差は控えめであるらしい

> 1章 「ひとり勝ち」市場
過去の時代はコミュニティに属する人数が少なかったため、ほどほどの才能の人でもコミュニティ内でトップとなれ、ポジションを得られていた
現代はテレビインターネットなどのテクノロジーの発展により、一握りの才能の持ち主がいればそれが行き渡り、ほどほどの才能の人は目立たずそのうち心が折れて諦める
一人勝ち市場は消費者にとってメリットになる
良いものが安価に手に入りやすくなる
しかし、多くのデメリットもある
本書はそのデメリットに焦点を当てて書かれている
自分が個人ゲーム制作で一発を狙うのもこの一人勝ち市場に憧れているからなんだなぁ・・・と自覚したkidooom
堅実に、公共の貢献になるような仕事の必要性も強く感じた
浪費的競争を制限するための協定が重要になる
書籍:ダーウィン・エコノミー 自由、競争、公益でも提唱されていた規制
本書では、「地位をめぐる軍縮協定」と呼んでいる
人々の共通の話題・認識となるものほど増々人気になるマタイ効果
p26
>「ひとり勝ち」市場が原因で発生する問題は、主として参加者が他人に及ぼす費用を感情に入れていないことから生じる。この意味で、これらの問題は公害問題とよく似ており、そしてわれわれの公害規制の経験は「ひとり勝ち」市場で生じる浪費を削減する最小の方法を見出す上で有益な手引となる。
他人に及ぼす費用とは?
ゼロサムゲームでの勝利確率、報酬分配の減少
自分より成功していない人に対して、相対的な不幸を発生させる
軍拡競争の拡大に協力すること

> 2章 「ひとり勝ち」市場の発生
「ひとり勝ち」市場の定義について
p30
>報酬が相対的な成績で決まることは、「ひとり勝ち」市場の単一で最も重要な特徴である。
「他の選手や他の参加者よりも優れているかどうか」で報酬が決まる市場
これに対し、時給労働や歩合制の労働は、絶対的な成績でのみ報酬が決まる
p31
>「ひとり勝ち」市場の第二の特徴は、トップの成績をあげた2,3人の手に報酬が集中する傾向があり、才能や努力の小さな差が所得に莫大な差をもたらすことである。
2009年連峯議員の有名な台詞「2位じゃダメなんでしょうか?
2位だと莫大な損失になりうる
人間の世界に限らない
動物界では、1匹のオスが複数のメスを支配する
ベータとVHSの戦い
コンピュータのOS戦争
ゲームハード戦争
ノーベル賞受賞者の出身大学の偏り
ある製品がひとり勝ちできる時、その製品が大量生産、クローンを作ることが可能であることが重要な源泉となる。
地元ライブでしか音楽を披露できない昔のミュージシャンは、世界市場で「ひとり勝ち」はできない
初期の小さな優位が、やがてほとんど克服し難いリードを生むことになる
初期の小さな優位を得られるかどうかが、才能よりも運のおかげであることが多い
「心の棚のスペース」は広大ではない
有名なテニスプレイヤーと言えば?と聞かれて一般人がイメージするのは、誰もが知っているような有名な1〜2人の名前になる
各分野のスター人材が「心の棚のスペース」に並び、マニアでない限りは3位、4位以下の人物は陳列されない

> 3章 「ひとり勝ち」市場の成長
輸送技術の発展が「ひとり勝ち」市場を成長させた
製品がより軽くなっている
そもそもソフトウェアはインターネット経由で即座に輸送できる
電子決済が可能になったことによる売買ハードルの低下
グローバルな取引が簡単になっている
英語の重要性が増大している
グローバルな取引には共通語が必要であり、それが英語となっている
自動翻訳技術の発展により、誰もが自国語を英語に変換可能になったのも影響が大きい
アダム・スミスのピン工場の表現
労働の分業化と専門化により、大量生産が可能になった
その結果、労働者は一部の作業のみに特化して歯車の一つのようになってしまい、資本家の一人勝ち状態になっている


> 4章 急騰するトップの所得
会社売却、ストックオプションによる一攫千金
プロテニスプレイヤーの報酬
かつては試合を観に来るファンのチケット販売によってもたらされていた
1970年代以降、テレビ放映権やスポンサー、テニス以外の仕事による報酬が圧倒的に増え、経済格差が大きくなった

> 6章 競争者が多すぎる?
過剰な参戦は、コモンズの悲劇の問題と類似している
既に過剰な競争が行われている一人勝ち市場に、他の市場で活躍できる技能を持つ新参者が入ってくることは社会全体の損失になる
収穫逓減の法則が働いて、過剰な競争の市場へ新参者が入るメリットはどんどん薄くなる
金銭的な報酬だけでなく、地位を得られることも過剰競争を生み出す
過剰な競争の「ひとり勝ち」市場に対しては、累進課税の引き上げを検討するのが良いと提案している
税収が増えるだけでなく、過剰な競争を減らすこと自体に経済価値がある

> 7章 浪費的な投資の問題
軍拡競争は囚人のジレンマである
勝者がどちらか一方である分野においては、軍拡競争が絶えず行われ、お金と時間が浪費される
スポーツ選手の過剰で過酷なトレーニング
時には死んでしまうほど
薬物使用による副作用の影響
メンタルを病むことによる自殺もある
p169
>どんな褒賞が競争にかけられていようと、社会的観点からは極端なトレーニング手段が浪費的であるという事実は変わらない。結局は、誰かがオリンピックの金メダリストや競技会のチャンピオンになるのであり、それは毎日のトレーニング時間が八時間であろうと四時間であろうと、怪我をしたとき痛み止めを使ってトレーニングを続けようと完治するまで休養しようと、皆が下痢や利尿剤を使用しようと誰も使用しなかろうと、当てはまるのである。  
ステロイドの慢性的な使用
薬物検査で見つかって失格になるリスクがあるが、それに見合うリターンがある
「ひとり勝ち」市場では、バレなければ大きなリターンが得られる可能性に賭けて不正が行われやすくなる


> 8章 教育的名声をめぐる戦い
学歴が採用に影響する
トップ大学の出身者ほど採用されやすく、役職も得やすい
だからこそトップ大学への受験戦争が熾烈になる


> 9章 浪費的競争の抑制


> 10章 「ひとり勝ち」社会におけるメディアと文化
チャンネル争いに勝つために、暴力的なシーンを放送するメディア
どこのチャンネルも同じニュースを扱う
「子どもたちの教育の良いかどうか?」よりも「センセーショナルな内容を流して視聴率を稼ぐ」ことがメディアのインセンティブになっている
メディアが流す内容はエログロに偏ったり、どこかのチャンネルで流行った番組構成のコピーが蔓延する
クイズ番組が流行ればどこのチャンネルもクイズ番組を放映し、グルメ番組が流行ればどこにチャンネルを変えても美味しそうな料理を食べるシーンが流れてくる


> 11章 古いワインを新しいボトルに
「ひとり勝ち」市場で成功した金持ちほど、節税対策がしっかりしていて租税回避できている
贅沢品の消費税こそ、累進課税にすべきであるという提案
CEOの高額な退職金を減らす目的の施策が、逆にCEOの退職金を増やすハメになってしまったエピソード
「XXドルまでしか税控除しませんよ」と決めたところ、「XXドルまでだったら退職金にしていいんだな!」と暗黙の了解となり、それより低い額を支払っていた企業がXXドルまで支払うように増やしてしまった