三十六歌仙の歌仙絵を読んでみる 25~36
初見
あまつかぜ / ふけゐの / 浦に / ゐるたづの / などか雲居に / かえらざるべき
深掘り
二句目の
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を「か」と読んだがあっているかどうか
「け」だなこりゃ
ふけいのうら
>大阪府泉南郡岬町深日(ふけ)の海岸。古くから景勝地として知られ、鶴の名所であった。ふけいの浜。歌枕。〈日本国語大辞典〉
雲居
空という意味と、転じて非常に遠く高い所を指す
>思ひきや雲ゐの月をよそに見て心の闇にまどふべしとは(金葉集・雑上・571、平忠盛)
殿上を申し出て許されなかったときに詠んだ歌
今回は後者のニュアンスを感じる
田鶴が空に帰らないことがない(ように、なぜ宮中にかえらないことがあろうか)
みたいな
>思ひきや深山の奥に住まひして雲居の月を他所に見むとは(平家物語・大原御幸)
思いも寄りませんでした、この深山の奥に住み、宮中で見たあの月を他のところから見ることになろうとは。
初見
水の面に / 照月なみを / かぞふれば / こよひぞ秋の / もなかなりける
拾遺和歌集の秋171番歌
深掘り
秋の盛りをいう歌っぽい
つきなみ
水面の波に映る月と、月次(つきなみ。月の移り変わりのこと)をかける
もなか
真ん中のこと
>いけみづのもなかに出でて遊ぶいをの数さへ見ゆる秋の夜の月(公忠集)
「いを」は魚のこと。秋の夜の月の明るさで、池水の真ん中で泳ぐ魚の数さえ見える
景物の「月」と時節の移り変わりの「月(次)」を詠み込んでいる
初見
右→左
契けむ / 心ぞつらき / 七夕の / 年に一度(ひとたび?) / ?はあふかは
五句目の漢字だけわからない
契りおいた心こそ辛いのです。七夕の牽牛織女のように、年に一度( )
深掘り
五句目の漢字
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「辶」のある漢字と見てよさそう
「あふかは」と対句表現?
遭うか会わざるか、みたいなものを想像した
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「逢」うかも
あってそう
結果
契けむ / 心ぞつらき / 七夕の / 年に一度(ひとたび) / 逢はあふかは
契りおいた心こそ辛いのです。七夕の牽牛織女のように、年に一度逢うとははたして「逢う」といえましょうか?
これ古今の歌だな
古今和歌集(岩波文庫、佐伯梅友校注、p.60)
>年に一度会おうと約束したわけだろうが、その約束した心が、ほんとうにつらい。
>年に一度会うなんて、会うという中にはいらない、という気持。(古今和歌集、秋上、178)
初見
契きな / かたみに袖を / しぼりつゝ / すまの松山 / 波こさじとは
かたみは潟+見(かたみ、海を見る)と形見を掛けてそう
形見となってる対象がわからんが……
袖は自分のだろうしなぁ
須磨の松山?
須磨は松で有名
でも「松山」はあまり聞いたことがない
深掘り
初見では「ま(満)」だと読んだ
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違ってそう
横の点がある
というかこれ百人一首の歌か
す「ゑ」の松山だ
点があるのとはらいが「満」とは違うな
結果
契きな / かたみに袖を / しぼりつゝ / すゑの松山 / 波こさじとは
契り+き(過去の助動詞の終止形)+な(詠嘆の終助詞)で「約束していたのになあ」
かたみに
副詞、「互いに」。
>陸奥(みちのく)にあったという山。現在の宮城県多賀城(たがじょう)市にあったとも、岩手県一戸(いちのへ)町と二戸(にのへ)市との境ともいわれる。歌枕。絶対に起こり得ないことのたとえとして「末の松山を波が越える」ことがひかれ、和歌では、男女が別の相手に心変わりすることのたとえに使われる。〈全訳古語辞典〉
男のほうが女の心変わりを憎んで言ってるのね
約束していたのになあ、互いに涙で濡れた袖をしぼりながら、末の松山を波が越すことがないように、私達も心変わりせまいと。(なのにあなたは心変わりしてしまったのですね)
初見
三芳野の / 山のしら雪 / つもるらし / ??寒く / ?まさる?
深掘り
四音
下をどこかで見たはず
里?
「故里」みたい
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前を引き継いでいくと「故里寒く◯まさる△」
〇は
まさるが後に付くので連用形
漢字一文字
漢字一文字
「哉」ではなさそう
「らし」を漢字でいうことはあったかな……
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そもそも三句で出てるからほぼない
初見
さきにけり / ?山里の /
卯花は / かきねにきらぬ / 雲とみるまで
おそらく夏歌
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深掘り
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わからん
山里に付く漢字一文字
音節は二つくらい
見返したら既出だった!「我」だ
「かきねにきらぬ」の意味がとれない
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これが「ら」でなかったかも
「え」かな?
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垣根に消えぬ雲と見るまで
結果
さきにけり / 我山里の /
卯花は / かきねにきえぬ / 雲とみるまで
倒置法の初句切れ
初見
大井川 / そま山風の / さむければ / たつい?なみを / 雪かとぞ見る
川に立つ波を雪と見た、という大意だと思う
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深掘り
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わからん
見たことはある
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音数から一文字の漢字or仮名だと予想
「わ」だったら「立つ岩波を」となりそうだが……
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ちょっと形が違う
い「は」なみ?
盤
「は」をながめてみたが確定できないなあ
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そま山風
「そま」は「杣」のことだろう
樹木を植え付けて材木を切り出す山のこと
>万葉集〔8C後〕三・四七六「吾が大君天知らさむと思はねば凡(おほ)にそ見けるわづか蘇麻山(ソマやま)〈大伴家持〉」
この歌から比叡山の別称として「杣山」というようになったらしい
慈円の歌もこれを下敷きにしているのだろう
杣山から吹く風が寒い
>*順集〔983頃〕「もみぢばをそまやまかぜのふきつめばふねにもくれのあきはきにけり」〈日本国語大辞典、「杣山風」の用例〉
紅葉の葉が杣山から吹き下ろした風で葺きつめるので、舟にも暮れていく秋は来たのだなあ
落葉は秋~冬の景物
初見
思はしな / 人に見?はや / 夜もすがら / わが?こな?に / おきゐたる露
恋歌っぽく見える
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夜もすがら泣いて、置いた涙(露)を相手に見せたい?
深掘り
「せ」か、「を」だと思った
たぶんこちら
「せ」の場合は「見せばや」
終助詞「ばや」で、話し手の願望を表していると解釈
四句目
わが「?」こ
脱落、なにもないように思える
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「つ」
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に見える
わが?こなつ
とこなつ(常夏)?
夏から秋にかけて咲く
露も夜も秋とともによく詠まれる題材
>*古今和歌集〔905~914〕夏・一六七「ちりをだにすへじとぞ思ふさきしよりいもとわがぬるとこ夏の花〈凡河内躬恒〉」
夏歌の終部に配置されている(169から秋歌)
恋のイメージのふくらむ歌語
>*名語記〔1275〕九「とこなつ、如何。瞿麦の異名也。常夏也。花のさくこと一度にはさかずして、をひをひにひさしく、たえずさく故に、とこなつといへる歟」〈日本国語大辞典、「常夏」〉
撫子と露を読んだ例が源氏物語にある
>山がつの垣(かき)ほ荒るともをりをりにあはれはかけよ撫子(なでしこ)の露
補うとしたら「と」かな
他の本見てみたい
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思わしな
最初思わじな=思いもよらなかったことだ、と解釈していたけど違ってそう
初句と二句の両方が切れてしまう
訳: 思いもよらなかったことだ。人に見せたいものだ。
2箇所も句切れがあるケースはまず見ない
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観測範囲問題かもしれないが……
別の解釈はないか?
「思ひしる」かも
「ひ」
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「る」
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この「る」と同じだ
「思ひ知る」でよさそう
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結果
思ひしる / 人に見せばや / 夜もすがら / わが(と)こなつに / おきゐたる露
(とこなつであれば)ちょっと恋歌を踏まえて歌っている気持ち
興趣のわかる人に見せたいものだ。夜を通して、私の撫子に置いている露を。
初見
みかきもり / 衛士の?火の / 夜はもえ / 昼はきえつゝ / 物をこそ思へ
知ってる歌
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衛士のたく火の、だったはず
御垣守
宮中の諸門を警固する衛士のこと
衛士
>令制で、諸国軍団から毎年(のちに三年)交替で上京し、衛門府、左右衛士府に配属された兵士。宮門の警備や行幸の供奉などにあたった。定員には変動があった。〈日本国語大辞典〉
「焼」でよさそう
この漢字をどう読むか?
「やく」
室町末期書写
「たく」
刊年不明
「焼」を「たく」と読む例が確認できた
結果
みかきもり / 衛士の焼火の / 夜はもえ / 昼はきえつゝ / 物をこそ思へ
この衛士が焚く火のように、夜は恋の思いに燃え、夜は魂も消えて、毎日物思いをすることだ。
音にのみきくの白露夜はおきて昼は思ひにあへずけぬべし(古今・恋一・素性)
詞花和歌集・恋上・225に題知らずで入集。
初見
いづかたに / 鳴て行らむ / 郭公 / よどのはたりの / まだらふかきに
二句目と四句目に自信がない
五句目も微妙
深掘り
二句目
「鳴」の例
「啼」かな?
いや、これは「鳴」でよいか
て(天)であってそう
行+ら(良)+む(無)
「ら」がわかりにくい
四句目
よ(良)+と(止)+の(濃)
と、最初は「し」に見えていた
おそらく「淀」を指しているのではないか
は(八)+た(多)+り(里)
さて「はたり」とは何なのか?
副詞に「はたり」(ものの落ちる軽い音やその様を表す。多く「と」を伴う)があるが、格助詞の「の」が下接しているから違う
「はたり」は名詞っぽい
「わたり」じゃないかなと思ってる
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>ある場所の、そこを含めた付近。また、そこを漠然とさし示していう。その辺一帯。あたり。へん。へ。近所。〈日本国語大辞典〉
>心ある人に見せばや津の国の難波わたりの春の景色を(能因法師)
けど「わ(和)」よりも「は(八)」に見える……
五句目
「まだらふかきに」という句の意味がよくわかんない
郭公がまだら?
淀のあたりがまだら?
最後の「に」は逆説の接続助詞の「に」に思える
「~なのに、郭公はどこに行って鳴いているのだろう?」というような
有名歌
しのぶれど / 色に出にけり / 我恋は / ものやおもふと / 人のとふまで
20番・恋
> 二十番の勝負において判者の実頼は優劣を付けられず、持にしようとしたが、帝から勝敗を付けるようにとの仰せがあった。実頼は補佐の高明に決めてもらおうとしたが高明は平伏して何も言わない。実頼は窮したが、その時帝が「しのぶれど」と兼盛の歌を口ずさんでいるのを高明が聞きつけ、実頼に伝えた。それでようやく実頼も決心が付き、右方の勝ちと判定を下した。その間、左右の講師はずっと歌を読み上げ続けていた。
> 卑官だった壬生忠見は、出世を懸けて詠んだ歌が接戦の末に負けたことを悲観してその後食べ物を受け付けなくなり、そのまま死んだという逸話もあるが、その後の晩年の歌も残っている。天徳内裏歌合 - Wikipedia
初見
秋風の / 吹につけても / ?ぬかな / おきの?ならば / ?はしてまし
ちょっとわからない。平仮名でなくて漢字っぽくはある。
前に出てる、「葉」
「荻の葉」かな
荻と風を詠み込む有名な例があったな
「音」に見える
音はしてまし
解けなかったのでちょっとずるをして調べた
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230番に秋風の吹くをりにしもとはぬかなをぎの葉ならばおとはしてましがあった
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これは「問」らしい
こりゃちょっとわからんな
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秋風が吹く時分になってもあの人が訪れない。荻の葉ならば、(風で散るときに)音も立てるでしょうに。(貴方と来たら音沙汰も寄越さないでいらっしゃる。)
訪れぬ相手をなじる歌。「秋」には「飽き」がこめられているだろう。