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依存症ビジネス――「廃人」製造社会の真実


僕らはそれに抵抗できないが2019年の本に対し、こちらの本は2014年の本
まだSNSの勢いがそこまで強くなかった頃

目次 https://www.diamond.co.jp/book/9784478022924.html より (インラインで自分の感想や印象に残った箇所の引用を書いていく)
>第1章 社会は私たちを「廃人」にしたがっている
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>     ──iPhoneいじりと甘すぎるスイーツに見る病みつきビジネス
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>カップケーキiPhone鎮痛剤 ──21世紀をむしばむ「3種の欲望」
カップケーキに含まれる砂糖の量に驚いた。こんなに入れるの?
「すぐに気分を良くしてくれるもの=フィックス」に手を出してしまう本能がある
フィックス漬けにするビジネスが増えているため、それらに対抗する努力が必要になってきた
フィックスを目に見えない、手に届かない場所に遠ざけるのが安全

>依存症の私と、健全な彼らのあいだに差はあるのか?
筆者は14年間ほどアルコール依存症だった

> ▪脳の「ストップ&ゴー」システムを狂わせるテクノロジー
> ▪見直される依存症、拡大する依存症
>砂糖まみれのカップケーキと過食症
カップケーキは、エンプティカロリーとも呼ばれているが、病みつきになる人が多い
過食症の女性は、カップケーキを大量に食べては吐くのを繰り返す

> ▪iPhone依存症 ──「病みつき」になるデザインとその被害者たち
> ▪なぜ新製品が出るたびにアップルストアに並ぶのか?
> ▪2億人がハマるよう仕組まれたゲーム「アングリーバード
当時はハマるゲームと言ったらアングリーバードが代名詞だったのか、と懐かしい
正直もっと複雑で面白いゲームはたくさんあると思うが、手軽にハマれるものに依存しやすい

> ▪セレブの娯楽となった鎮痛剤「バイコディン
日本では馴染みが薄いトピック
薬物全般の記述は日本人に当てはまらないかも

> ▪ハイになるために医者に通う ──「乱用者」たちのあきれた実態
> ▪「感情のコントロール」というニーズと、それを過剰に満たす社会


> 第2章 依存症は本当に“病気”なのか?
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>     ──環境次第でだれもが「依存者」になりうる社会
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> ▪依存者の集会で感じた2つの疑問
筆者は、依存症のことを「病気」だと思ったことは無いとのこと

> ▪アルコール依存を救うAAが編み出した「依存症=病」という公式
筆者は、「病気なのだから仕方ない」、「病気だから自分の意志だけでは治らない」といった依存症をカモにしたビジネスを多く見てきた
依存症患者が「病気にかかってしまった」と、自分の意志で立ち向かおうとしない受け身の姿勢になってはいけない

> ▪2人の友人、その運命を分けたもの
> ▪依存症は本当に「疾患」なのか?
> ▪自力で立ちなおったら依存症ではない? ──医者たちの傲慢な言い分
>ベトナム戦争の怪 ──なぜ兵士のヘロイン依存は突如として治ったのか?
ベトナム戦争の兵士の多くは、帰国後にヘロイン依存から回復できた
ヘロインの入手しやすさが重要だった?
現地のベトナム人たちも、ヘロインビジネスで儲けようと頑張っていた
アメリカに帰国されてしまったら、射程外になってしまう
アメリカではそれらの兵士たちに積極的なヘロインビジネス勧誘が近寄ってこなかっただろう
戦地での辛い環境が、ヘロインを使いたくなる心境を作っていた
アメリカに帰国したら戦いはもう無いので、安心できた

> ▪病ではなく習慣 ──依存に至る4つの「入手しやすさ」とは?
入手しやすさが、依存に繋がる
p77
>社会において薬物が入手しやすければしやすいほど、より多くの人がそれを摂取する可能性は高くなり、そうした人々が問題を抱える可能性も高くなる。
これは薬物だけでなく、アルコールやゲーム、ポルノ、承認欲求(いいね)など依存を生むビジネス全てで言えると思う

> 第3章 なぜ自分を破滅に導く習慣をやめられないのか?
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>     ──病みつきビジネスが利用している脳の仕組み
>
> ▪突然ギャンブルポルノにハマった70歳
パーキンソン病患者だった70歳の人が、急にギャンブルとポルノにハマる事例が意外と多いらしい
犯人は、パーキンソン病の症状を改善する薬
ドーパミンを増やす役割のある薬だった

> ▪快楽物質ドーパミンは「欲望物質」だった!?
ドーパミンは、「欲しい!」という感情を強くする
「好き!」ではなく「欲しい!」が依存を生む
ここが本書で強く印象に残った箇所
「好き!」と「欲しい!」は違う
「欲しい!」ものを手に入れた時に「好き!」になるとは限らないし、意外と大したことが無かったりする
そして、次の「欲しい!」が発生し、依存症になってしまう
暇と退屈の倫理学でも、「消費」がこのサイクルを生むと指摘している

>パーキンソン病が内向的な人ばかりを襲うワケ
> ▪ヘロイン、MDMAアルコール ──薬物に対する脳の反応カタログ
> ▪私たちを欲望のとりこにする合図はあらゆるところに
> ▪ただし、脳を見てもだれが依存症かはわからない
> ▪自分のためにならないとわかっていて、なぜわざわざやってしまうのか?
> ▪レジ横のクッキーから始まる依存症ビジネスの仕組み
「欲しい」の衝動が金になるのだから、依存症ビジネスが隆盛してしまうのはしょうがない
我々消費者側が抵抗できる仕組みを作らなければならない


> 第4章 お買い物とヘロインとお酒の共通点とは?
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>     ──自由市場と依存の関係は18世紀ロンドンで始まった
>
>ショッピングモールは人を「ゾンビ」にする?
> ▪「カードを決済端末機に入れたくてたまらない」 ──買い物依存の実態
> ▪SNSもドラッグである ──テクノロジーと依存症の共犯関係
> ▪世界一人気のある向精神薬「アルコール」の歴史
> ▪18世紀ロンドンの「ジン狂い」に見る「入手しやすさ」という隠れた要因
歴史上初めて記録された大量飲酒の流行は、18世紀のロンドンで大流行したジン
「入手しやすさ」が流行を作り出した
p121
>マイケル・ゴソップの主張を繰り返すと、人々が薬物の問題を抱える確率がもっとも高くなるのは、薬物が、物理的・経済的・社会的・心理的に入手可能になったときだ。
>ティッピング・ポイントを超えた先 ──だれが依存症になるかは予測できない
> ▪清朝200万人がアヘンにハマった本当の理由
>カジノストリップクラブ ──依存を巧みに利用する自由市場の力学
> ▪ヘロインが恐ろしいのは成分や習慣性が理由じゃない
> ▪依存症はすぐに「浮気」する
> ▪ある「CD収集狂」の告白


> 第5章 スイーツはもはやコカインだ!
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>     ──スタバの「フラペチーノ」に仕込まれた巧妙な戦略
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> ▪オフィスを侵す「ごほうびスイーツ」
> ▪『スーパーサイズ・ミー』が糾弾すべきは「バーガー」ではなかった?
映画「スーパーサイズ・ミー」は、マクドナルドを食べ続けることで起きる体の変化(肥満)を写したものだが、バーガーよりもポテトよりも、ソフトドリンクに含まれる大量の糖分が体重増加に寄与していると推測される
> ▪砂糖は脳を支配する ──ケーキとコカインの類似性
砂糖はエンプティカロリーとも呼ばれるが、エンプティどころか、有害ですらある
砂糖はコカインのように依存作用を生む
> ▪「コーヒーと一緒なら許される」 ──クリスピー・クリーム・ドーナツとスタバの戦略
> ▪外食の楽しみが「食べる」から「撮る」に変わったのはいつから?
> ▪スーパーの陳列棚は依存につけこむアイデアで溢れている
> ▪食品業界が悪用する4つの状況「HALT」
> ▪フラペチーノ ──欲望のスイッチを押す巧妙な製品
> ▪肥満になったナバホ族 ──食の「欧米化」は遺伝子をも変える
> ▪「食べ物によって自分をねぎらう」という新しい習慣
頑張った自分へのご褒美というマーケティングによって悪しき習慣が作られてしまった
毎日の仕事後にご褒美をあげるようになってしまったら、肥満へ一直線


> 第6章 どこに行っても安く、大量に酒が手に入る世界で
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>     ──社会をアルコール漬けにするメーカーと販売網
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> ▪ユーチューブに溢れかえる「酔っぱらい動画」
イギリスでは、酔っぱらい動画が増えていたらしい。
女性が特に多かったとのこと
日本でそのような事例は観測した経験は、自分には無い
> ▪アルコールにおける男女格差は縮まっている!
> ▪私はこうして人生の支配権を失った① ──人づきあいの不安から酒に手を……
> ▪私はこうして人生の支配権を失った② ──酒が友人となり、AAの扉を叩く
> ▪酒造メーカーと販売店が狙う夜の世界経済圏
> ▪入手できるならMDMAでも精神安定剤でも ──若者の「酒×ドラッグ」文化


> 第7章 処方箋薬がこれほどいい加減とは!
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>     ──合法的なおクスリでもじゅうぶんトベる
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> ▪ADHDの薬「アデロール」のもう1つの顔
> ▪18世紀のライプツィヒにタイム「トリップ」
> ▪9歳の子どもから元ジャンキーまで ──600万人がやってる処方箋の不正利用
> ▪私のアルコール依存、その最終段階 ──精神安定剤にハマって儀式を執りおこなう
> ▪「眠らずにすむクスリ」を乱用して勉強する大学生
> ▪「向知性薬」頼みの生活の副作用やいかに?



> 第8章 ゲームという新時代のギャンブル
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>     ──合言葉は「ユーザーを永遠のキャッシュマシンに!」
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> ▪「ネトゲ廃人」デニスと9つの人格
セカンドライフに没頭していた父親のエピソード
このようなネトゲ廃人は、最近もっと増えていると思う
> ▪「インターネット依存症」は存在するのか?
> ▪「ゲーム化」するテクノロジーが僕らをハメる
ゲーミフィケーションは、ゲーム化することで人々を依存させるテクニックとも言えてしまう
功罪がある概念
「これからはゲーミフィケーションだ!」は、功罪どっちに転ぶか分からない方針
アプリのアイコンに通知を示す数字があると、それに気を取られてしまう
> ▪オンラインゲームの第一命題は「脳のハイジャック」
>アプリ内課金という悪魔 ──デザインの力で気づかずに金を使わせる
> ▪人は偶然ゲームに病みつきになりはしない ──すべては開発者の戦略
World of Warcraftにハマったゲーマーのエピソード
依存ビジネスに関連する本では、お決まりのタイトルになってきたな
この本では、ガチャ依存や継続的対価と断続的対価の話はない
ガチャ依存は日本特有の傾向なのだろうか?
> ▪「アングリーバード依存」は治療できるか?
> ▪「友達リクエスト」と「ブロック」でゲーム化される人間関係
> ▪ゲームへの依存が引きおこす2つの弊害とは
> ▪「絆」がドラッグになるとき


> 第9章 「無料ポルノ革命」の衝撃
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>     ──最新テクノロジーを最大限に活かす無秩序な業界とその餌食たち
この章は結構大事だと思った
あまり公にはされない、性生活に関する依存への章
無料ですぐに手に入るポルノが蔓延している社会は、何かしら人間に悪影響がありそう

> ▪ユーチューブとその兄弟が引きおこしたポルノの大洪水
> ▪インターネット・テクノロジーは子どもも老人も区別しない
自分の子供に対しても、これが心配
p261
>「前は、わざわざ専門店に行かなきゃならんかったが、今じゃ、月に住むハマグリでもなけりゃ避けられないほど、簡単に手に入るようになったな」
> これはポルノ依存と戦っている65歳のアメリカ人男性の声だ。
あまりに簡単にポルノが入手できるようなって、もう見ることを避けられない
自分の意志で強く断らないとポルノ依存になりかねない
> ▪とんでもない量のポルノが世界を駆け巡る
p264
>1960年代に生まれた私の世代の男子生徒たちにとっては、ポルノにクールな要素など1つもなかった。ポルノ雑誌を買うことは、客(必ず男)にとって冷や汗をかくような不安な経験だった。おそらくそれは何世紀ものあいだ、ずっと変わらずそうだったに違いない。17世紀の完了、サミュエル・ピープスの日記にも、そう思わせる記述がある。ピープスは「地味な装丁の・・・浅はかで破廉恥な本」を購入し、読みおわりしだい破棄しようと心に決めていた。
50年~ 前以上の男たちに比べて、入手可能性が格段に上がりすぎている
昔の人々と比べたら現代の大多数の男たちは、ポルノ依存といってもおかしくない状態になっているのかもしれない
1つ前の章のゲーム依存とポルノ依存はかなり密接に関わっている
露出が多いキャラクターが登場するゲームが莫大な利益をあげている
> ▪もはやヘンタイと後ろ指さされることなく「ハードコア」を見られる時代に
> ▪テクノロジーの進化とポルノの巧妙化・ハード化
> ▪無秩序な市場で行われるユーザーの「目」と財布の奪いあい
> ▪「エロトトキシン」説VSポルノ学習説。勝者は……
> ▪ポルノとドラッグの類似点
> ▪「コカイン×ポルノ」の二重依存者ポールの破滅
> ▪児童ポルノで逮捕された司祭① ──強迫的なコレクター
> ▪ポルノサイトはスロットマシンと同じ設計!?
> ▪児童ポルノで逮捕された司祭② ──孤独感からうっかりダウンロード
> ▪ヘンタイ性ですら「自分らしさ」に
> ▪リアルな女性に興奮できない若者たち
> ▪「供給主導型」の依存症ビジネスがもたらす悪循環
ポルノを見るのは、それが大量に供給されているから
p297
>つまり、これは、18世紀の「ジン狂い」をはじめとする、その他多くの依存症と同じように、根本的に供給主導型の現象なのである。


> 第10章 われらを誘惑から救いたまえ
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>     ──依存の「解毒」ですら商売になる時代で
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> ▪元売人で、依存症専門の心理学者ジャフィ
> ▪ドラッグの合法化で問題は解決できるのか?
> ▪依存を理解するための3つのカテゴリー
> ▪いかに病みつきにさせられるか? ──競いあう企業と無防備な消費者
> ▪危険ドラッグは氷山の一角 ──グローバル化がもたらした貧困より重い「病」
> ▪マフィアと若者の思惑が一致して、マーケットが生まれる
> ▪依存の治療でさえビジネスに ──膨れあがるリハビリ産業
依存を作って利益を得るものもいれば、その依存の治療もビジネスとなる
> ▪はびこる無力感と21世紀の「免罪符」
> ▪キリスト教もペルーのカルトも ──「依存から救う」をネタに勢力を伸ばす宗教家たち
> ▪われらを食い物にするビジネスとテクノロジーに対抗するすべはあるか?
ポール・グレアムのエッセイから引用が行われている
ここも本書で印象に残る
p332
p333
>たいていの人におなじみなのは、自分が欲望をコントロールしているという感覚ではなく、その逆だろう。欲望は、格闘しなければならないものなのである。そして、この格闘は、私たちの祖先の暮らしが貧困や病気との格闘によって形づくられたように、現代の人々の人生を形づくっている。
> ▪「廃人」リスクが高まる社会で、己の欲望と向き合うために