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資本主義の先を予言した史上最高の経済学者 シュンペーター


内容メモ
シュンペーターは 「イノベーションの父」
シュンペーターがイノベーションの概念を初めて世に問うた
同時に、「創造的破壊」 や 「企業家 (アントレプレナー)」 という言葉を生み出した
シュンペーターの考えの一部
「アイディアはただのゴミ」 であり、「既存のものを組み合わせることが大切」 ← はるかに大きなものを生み出せる
生み出したものを世の中に広めることが大事
新しい利用シーンを生み出す方が大きな流れを生む
シュンペーターは資本主義の終焉を予想していた
本書は 3 部構成
1 部 : シュンペーターとその思想
2 部 : イノベーションの本質
3 部 : 資本主義の次に来る世界

1 部 シュンペーターは何者?
1 章 シュンペーターの思想を知る
資本主義が迷走している中、持続可能性 (サステナビリティ) が現代のキーワードになっている
成長の限界は、1972 年にローマクラブシステムダイナミクスの手法で試算していた → 100 年以内に限界
SDGs の問題点は、儲からないこと
持続可能であるために、事業利潤を生み、その利潤を再投資するというダイナミズムが必要
資本主義は、それ以外にも良い属性がある 「魔法の杖」 → その本質はイノベーション
シュンペーターの価値を再発見したのはピーター・ドラッカー
新結合 : あらゆるイノベーションに共通する方法論
デジタル化により、あらゆる情報が 0 / 1 に変換される → これまで融合できなかったもの同士を融合させられる
資本主義イノベーションによって 50 年周期で好況と不況を繰り返す : コンドラチェフの波
社会課題は大きすぎて、何からやればよいかわからなくなりがち
行動するためには自身のが大事
資本主義により社会が成熟すると、格差を小さくする力が働く → 社会主義化
国家が主権を握る共産主義ではなく、民主的な社会主義 (北欧型の社会民主主義が近い)
社会価値経済価値の両立の代表的なモデルが、マイケル・ポーター教授が提唱した共通価値の創造 (CSV : Ceating Shared Value)
ポーター理論にはイノベーションの視点がない

2 章 シュンペーターは何者か
経済学を代表する 4 人のうちのひとり
シュンペーターは、マルクス同様、資本主義経済の発展を洞察するところからはじめた
29 歳で出版した最初の主著は 『経済発展の理論
マルクスは、労働者を搾取することにより余剰価値を獲得することが資本主義の本質だと論じた
シュンペーターはイノベーションを本質的な力だとみなした
どちらも、やがて資本主義はダイナミズムを失って社会主義の時代が来ると予言
シュンペーターがいう社会主義は、国家に権力を集中させるような極端な共産主義ではない
同年代、ケインズは時代の寵児として活躍
世界恐慌の中で、従来の自由放任主義を批判し、政府が積極的に経済に介入して需要を作るべきだと主張
フランクリン・ルーズベルト大統領のニューディール政策 (1933 ~ 1937 年) にも取り入れられた
ケインズ理論は、『雇用・利子および貨幣の一般理論』 として出版され、長らくマクロ経済学の主流に
ケインズ経済学は、公共支出需要を人工的に作り出す
短期的には景気を押し上げる効果があるが、財政悪化インフレといった強烈な副作用もある
シュンペーターは最初からケインズ理論に批判的 (反資本主義的と断じる)
シュンペーターのアカデミックのキャリアにとってもケインズ旋風は迷惑だった
雇用・利子および貨幣の一般理論』 の陰に隠れて 『景気循環の理論』 が注目されなかった
貨幣論の原稿も出版を断念
シュンペーターのゼミの弟子たちがケインズ理論に走った
シュンペーターは計量経済学に早くから着目はしていたが、機械的な定式化には懐疑的だった
シュンペーターのイノベーション論を数式化する試みは続けられている : ネオ・シュンペタリアンの一派
20 世紀後半にシュンペーターを再発見したのがピーター・ドラッカー
1954 年に書かれた 『現代の経営』 において、シュンペーターを 「もっとも偉大な近代経済学者」 と呼ぶ
ドラッカーも、ケインズの考えが誤りだとみなしている
ケインズは健全かつ正常な経済は均衡状態にあるという前提だが、それは正しくない
シュンペーターもドラッカーも日本での人気が高い
日本の経済学者に影響を与えている
遠近複眼思考 : 時間軸をミクロ、マクロ、メガで捉えて俯瞰し、自在にずらす

2 部 イノベーションとは何か
3 章 シュンペーターの思想の本質
アダム・スミス以来の経済論は、自由競争により市場に均衡がもたらされることを前提としていた
シュンペーターは、それは机上の空論だとし、創造的な力で均衡が破られることこそ経済発展の本質とした
経済発展の理論』 にて、動態論を具体的に展開
動態論は、20 世紀後半に複雑系理論の中で脚光を浴びる
この社会経済の進化論は、複雑系理論進化経済学の系譜に受け継がれた
自己組織化創発型組織といった組織論は、シュンペーターが源流
VUCA というが、安定ではなく変化こそが常態
DXSX などの時代の潮流に乗るだけでは、激流に流されるゴミと同じ
流れの先を読み、次の変化を自ら仕掛けることこそがイノベーション
イノベーションの名手 : スティーブ・ジョブズ柳井正

4 章 イノベーションのカギは 「新結合」
新結合が手段で、新価値が結果
新結合には 5 種類 (シュンペーターの 5 類型)
イノベーションの確率を高めるには?
1. を高く掲げて、それを軸にする
2. あらゆる可能性を視野に入れる
3. 仮説を設定したら行動に移す
4. 思いを顧客にしっかりと伝える
新結合は群生する
イノベーションには異質なもの同士の新結合が必要 → 異結合
イノベーションを起こすには内部の充実が必要
自社資産の分類 : 資産の三枚おろし
日本人が情報を編集する際には独特のフィルターを通す : ジャパンフィルター
基本の型は 「人文科学 × テクノロジー × ビジネス
STEM だけでは足りない、シリコンバレーでは 10 年以上前から Art を足した STEAM 教育
江副浩正も多くの異結合を起こした
リクルート事業開発 (見立てる・仕立てる・動かす) とシュンペーターの 3 つのステップは同じ
ダイバーシティ異結合を起こすためにある
> 異能の人財が定着しようとするのは、その企業独自の組織能力がテコになって、自分の力が桁違いの価値を生み出すと確信したときだけ
インクルージョンの力がカギを握る

5 章 アントレプレナーになろう
与えられた環境を甘受する幸福主義的、快楽主義的な静態的人間は何もできない
ウェルビーイングの標榜や幸福主義は、快楽主義の表れ
3 つの行動意欲
社会的摩擦により心理的摩擦が起こりがち
アントレプレナーにとっては障害にならない
行動への衝動
創造的衝動による進化を創造的進化と呼ぶ
ベルクソンの思想は、マルティン・ハイデガーらの実存主義ジル・ドゥルーズらのポスト構造主義へ受け継がれた
社会経済学に展開したのがシュンペーター
大切なのは決断すること (アイデアを作ることではない)
イノベーションを持続させようとすると (持続的イノベーション)、やがて破壊的イノベーションに負ける
創造的破壊を仕掛け続けるのがアントレプレナーの役割
アントレプレナーの反対は事業管理者
均衡に向かう静的側面を重視
MBA には未来を託せない
アントレプレナーをイノベーションに駆り立てる動機
金銭目的、権力目的、創造目的
創造目的な人を創造的人間と呼ぶ
本当に創造的な活動ができる期間は限られる (燃え尽き症候群)
燃え尽きないためにはロマンが必要
子供のような好奇心
利他の心
松下幸之助は社会全体の貧乏の克服
イーロン・マスクは人類に貢献すること

6 章 信用を忘れてはいけない
未来は現在の延長ではなく、自分で作り出すもの
そのために、同志を増やすこと
それにはが必要
信者を増やす
購買力 : 既存の資産を動員する力
購買力は信用から
銀行家アントレプレナーに購買力を貸す
銀行家は市場の最高監督者
アントレプレナーがディレクター (現場の統括) で、銀行家はプロデューサー (資金、管理の総責任者)
最終的にリスクを負うのはアントレプレナーではなく資本家
将来価値をどう捉えるか
NPV で判断すると、10 年後の価値を例えば 7 % で割り引くと価値は半減
10 年後と同等のキャッシュをその後も生む場合、永続価値はその事業の現在価値の 2/3 を占める
直近 1 年で価値を判断すると 5 % 未満
現在価値にむりやり換算する意味はない
投機ではなく投資
銀行家は、社会全体のイノベーションを促進する力をもつ
サステナビリティESG ウォッシュで終わらせないために、イノベーションが必須
アントレプレナー銀行家は、価値創造の方程式資本市場に語り、共感し、信頼してもらうのが仕事
合本主義を唱えていた
欧米では二項対立、東アジアや日本では二項合一の思想
この思想を欧米に広めたきっかけのひとりがジャック・デリダ
イノベーションをめぐる新しい銀行
イノベーションを仕掛け続けるために、シュンペーターの 5 類型の 5 番目 (組織能力) が重要
日本では POC 病
PBR が 1 を割っている → 有形資産の総和よりも企業価値が低い
無形資産が全く評価されていない
無形資産を将来価値に変換する方程式が確立されていない
ブランド資産に落とし込めていない
ここに成長機会がある

7 章 時代の波を読む
景気好況不況の波を繰り返す
波動 : 時代の波
鳥の眼に必要なのは MTP (Massive Transformative Purpose) (大志北極星)
短期の変化が激しい → PDCA サイクルは役に立たない → OODA ループ
日本企業は中期計画病
魚の眼 (魚の目) で時代の潮流を読んだうえで、流れに逆らって行動する
学ぶべきこと
1. 目の前の現象にとらわれない
2. 歴史は繰り返す
3. 右肩上がりの循環である

3 部 資本主義の先を見る
8 章 資本主義の後に
持続可能性ESGSDGs がキーワードに
世界規模で次世代資本主義モデルを模索
日本では新しい資本主義構想
公益資本主義が有力なモデル
その次の時代は社会主義
シュンペーターは、マルクスを 「未来の理論といえる経済理論を最初に思い描いた人物」 と評価
マルクスが唱えた古典的な社会主義ではなく、新しい社会主義
革命によりできるものではなく、資本主義の発展
資本主義の枠組みでの進化を追求したのがケインズ (修正資本主義酸素室の中の資本主義)
実際には社会主義への道を転がり落ちるだけ
そのような社会主義化への抵抗 → 新自由主義
反シュンペーター的で、アメリカでもイギリスでも不首尾に終わる
資本主義国では、現在左傾化が進む (ジェネレーション・レフト)
民主主義を正義や価値観として振りかざすべきではない
合意形成の手段、政治の手段に過ぎない
市民の意識が高くない限り、衆愚政治 (ポピュリズム) や群集心理の操作に終わる
第三の道 (資本主義でも社会主義でもない道)
新しい社会民主主義モデル ← シュンペーターのいう資本主義の先に近い
多くの社会課題が未解決のママ放置される

∞ 章 もしシュンペーターが現代日本に現れたら
資本主義は、ヒト・モノ・カネのうちカネ中心
今やカネは有り余っている
ヒトの志を中心とすると正しい進化に向かうのでは?
社会民主主義が機能するために
政治化や官僚が 100 年先の社会を構想できるか
nobuoka 100 年先の構想、無理では?
市民が未来をしっかり洞察できるか
本業のど真ん中でイノベーションを仕掛ける必要
3 つのアウト
ズームアウト : 未来を見つめる
ありたい姿を自分で描く
VUCA の時代なので、超短期と超長期の視点を使い分ける