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存在脅威管理理論
自尊感情は、死の不可避性という存在脅威を緩衝する装置として機能すると考える理論
人間は高度な認知能力を身に着け、それによって自らの生存能力を高めたが、一方でこうした能力は同時に、自分がいずれ死すべき運命にあることを認識させるに至ったという
このような死の不可避性から生じる恐怖(存在脅威)に打ち勝つために、文化を発展させ、それによって世界に意味や秩序、安定性、永遠性を与えようとしたと考える
世界は永続しているという文化的世界観を持つことで、自分はただ死という運命に翻弄されるだけの存在ではないという意識が喚起され、存在脅威の不安が和らげられるという
しかし、文化的世界観が存在脅威の緩衝装置として働くためには、自分がその社会や文化の中で価値のある人間として認められることが必要
「自分は文化の中で価値がある存在として認められている」という感覚こそが自尊感情であり、私達は存在脅威から身を守るために自尊感情を維持・高揚しようとする

批判
不可避の死に気づくことが麻痺をもたらすことを示した知見は一つもないし、その他の詳細に関しても恐怖管理理論は破綻している(Buss, 1997; Leary, 2004; Navarrete & Fessler, 2005)
進化的観点から見ると、自尊感情の維持が進化によって獲得された心理機構の究極的な機能であるなど到底あり得ない
自尊感情というのは他者あるいは理想の自分と比較して今の自分がどれくらい有能であるかと考えているかを反映したものであり(Leary & Baumeister, 2009)、社会関係において主導権を握るための調節機構と解釈できる(ソシオメータ理論)
つまり、自尊感情を損なう経験は、うまく行きそうにない課題や勝てそうにない勝負は避ける賢明だと判断することの統計的な指標であり、自尊感情が高まる経験は、その後の行動に逆の効果をもたらす
ヒトの精神が自尊感情の上昇や低下のサインを無視し、自身の実際の欠点に注意を向けることなく、恣意的で内部完結した制御戦略に基づいて自尊感情を一方的に高めるものだとしたら、とても奇妙で非機能的