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増補改訂版 道具としてのファイナンス
2022/7/8

>恥ずかしい話ですが、道具を書いた当時は、IRR(内部収益率)で私が理解していたのは「NPVがゼロになる割引率」ということだけでした。それが何を意味するのか、人に説明できるほどに腹落ちした理解ができていませんでした。
>また、「IRR(内部収益率)の再投資の隠れた前提」は本の中で言及しているものの、自分でも意味が分かっていませんでした。
> 正直に言いましょう。「フリーキャッシュフローの定義で運転資金の増加額をマイナスする理由」が感覚的にしか分かっていませんでした。
>また、EV(Enterprise Value)は企業価値だと思っていましたし、そう書いてあります。
>ブログ「EV(=Enterprise Value)は企業価値ではない」の最後に「EV=企業価値と考えている人が多いので注意して下さい。」と書いていますが、それは私だったのです。
>レバードベータとアンレバードベータの変換式についての私の中途半端な理解についてはすでに告白した通りです(ブログ「ごめんなさい、私、間違ってました!」)
差分
>【第1章 投資に関する理論】で追加しているのは、IRR(内部収益率)の本質的な意味合い、再投資の隠れた前提、MIRR関数の提案などです。
> 【第2章 証券投資に関する理論】では、接点ポートフォリオと市場ポートフォリオとの関係や、ベータをより感覚的に理解できるような説明、資本市場線と証券市場線との関係などを追加で説明しています。
> 【第3章 企業価値評価】では、類似企業比較法(マルチプル法)の具体事例などを追加しました。EV/EBITDA倍率のEVはもちろん修正してあります。
> 【第4章 企業の最適資本構成と配当・自己株式取得】では、MMの第1命題までしか説明できていませんでしたが、第2命題を追加しています。「資本コストがデット(有利子負債)の利用で下がるのは、コストの低い負債コストの割合が増えるからだ」と思っている実務家が多いので、この辺りの説明を厚くしています。
> 【第5章 資本市場に関する理論】では、債券の価格変動リスクに関するトピックでデュレーションを追加しました。これは私がビジネススクールでもよく理解できなかったところです。日産でも財務担当者として実務で使わなかったこともあり、省いていたところですが、本来はカバーしておくべきトピックです。
> 【第6章 デリバティブの理論と実践的知識】では、クロスボーダーの投資評価において為替レートはどう考えるのか、グローバルCAPMやカントリーリスクプレミアムの算定などを追加しています。オプション価格の算定に関しては、二項モデルによる評価(リスク中立確率)も追加しています。
> 【第7章 経営の自由度の価値評価】この章が新たに追加された部分です。今回の目玉とも言える章です。NPV法では捉えることができないのが経営の自由度の価値です。その評価方法を二つ説明しています。
>従来はリアルオプションの評価についてはBlack-Scholes equation・モデルのみ説明していましたが、今回は二項モデルによる評価も追加しています。


目次
ファイナンスの武者修行
■銀行での修行時代— 16
■ビジネススクールでの修行時代— 16
■Excelで開眼か? — 17
■日産自動車での修行時代—17
■ファイナンス理論は 「ビジネスの共通語」 19
■ファイナンスとは 22
第1章 投資に関する理論
1.1 将来価値とは
明日の100万円より、 今日の100万円
金利と将来価値の関係を見てみよう
1.2 現在価値とは
5年後に100万円もらえる宝くじの値段- 29
将来価値と現在価値の不思議な関係 30
1.3 将来もらえる年金の価値を計算してみよう
永久値の現在価値 32
成長型永久債の現在価値 33
年金型投資商品の現在価値
1.4 正味現在価値による投資判断
投資判断の決定プロセスを知る
正味現在価値の意味をつかもう
複数のプロジェクトから投資すべきものを選択しよう
1.5 正味現在価値(NPV) 以外の指標による投資判断
収益性インデックスとは 44
内部収益率 (IRR) の求め方 45
IRRの本質とは
ハードルレート
NPVとIRRの関係とは 49
1.6 資本支出予算
NPV vs. IRR、 すごいのはどっち? 51
内部収益率の知られざる注意点とは
MIRR関数を使うという新提案 56
資本制約がある場合はどうするか?
プロジェクトの期間が違う場合はどうするか? - 63
第1章 まとめ 66
第2章 証券投資に関する理論
2.1 リスクとは
リスクのない企業など存在しない!
急激に株価が下がっても 「リスクが高い」 とは言わない!
イメージでリスクをつかもう70
Column 過去のリターンと未来のリターン 71
2.2 平均と標準偏差
統計の第一関門は意外と簡単 72
標準偏差の正体とは 74
リターンの確率分布 75
貴金属の価格のボラティリティは? 77
Column 期待値どちらのくじ引きがお得? 79
2.3 共分散と相関係数
2つの変数の相性は 80
相性の強さを表わす相関係数— 82
相関関係のイメージをつかもう
【Column 算術平均幾何平均の違い 85
2.4 ポートフォリオによる分散投資 リターンと分散の求め方
ポートフォリオのリターンのグラフを書こう 87
ポートフォリオの中身を変えてみよう
悪いポートフォリオとよいポートフォリオー 90
相関係数とefficient frontierの関係
【Column 市場ポートフォリオとは
市場リスクとβ (ベータ) - 104
証券市場線の真実 106
ウィーク・フォーム (weak-form)
セミストロング・フォーム (serristrong-formn)
ストロング・フォーム (strong-form)
第2章 まとめ
第3章 企業価値評価
3.1 加重平均資本コスト (WACC)とは
株式による資金調達— 116
3.2 CAPMを使って株主資本コストを求めよう
リスクフリーレートr
マーケット・リスクプレミアム (E(r_m)-r_t)
ベータβの問題
CAPMの知られざる問題点とは
事業リスクとリターンの関係
資本コストよりも低いハードルレート
事業別のハードルレート (割引率) の設定
エーザイのハードルレート (割引率) の設定
3.3 クロスボーダー案件の株主資本コスト
クロスボーダー案件の株主資木コストの推計
グローバルCAPMの修正方法— 134
3.4 企業価値評価のための会計の基礎
貸借対照表(B/S) を解剖する 139
損益計算書(P/L) を解剖する 140
キャッシュフロー計算書を解剖する
3.5 Free Cash Flowとは
フリーキャッシュフロー (FCF) とは 144
キャッシュフロー予測の注意点
「With-Withoutの原則」 とは 151
企業価値は誰のものか? 154
企業価値は何でできているか? - 154
どうすれば、 企業価値は高まるのか?
3.7 EVA って何?
株主資本コストを考慮した業績評価指標 165
3.8 類似会社比較法 (マルチプル法)
自社と同じような上場企業をベンチマークする 169
価値算定の事例
3.9 企業買収の効果の測り方
買い手企業にとってのNPVで判断する
3.10 ESGは企業価値を増やすのか
フリーキャッシュフロー (FCF) の増加― 176
WACCの低下
第3章 まとめ 178
第4章 企業の最適資本構成と配当 自社株買い
4.1 資本構成と企業価値 (MM命題)
MM 命題とは 182
WACCに関するよくある間違い
法人税がMM命題に与える影響
節税効果と財務破綻コスト 189
財務破綻コスト
デットの思わぬ効用とは
利害対立の影響は
最適な資本構成を求めて
資本構成に影響を与える要因 197
資本構成をどう見積もるか 199
4.2 ペイアウト政策と企業価値
伝統的な議論とは 201
配当政策が株価に与える影響とは
自社株買いとは 203
自社株買いと株主価値- 203
自社株買いの目的 204
今後のペイアウト政策
●第4章 まとめ 207
第5章 資本市場に関する理論
5.1 債券とは
債券とは 210
債券にはどんな種類があるか 210
債券の発行条件とはどんなものか 211
5.2 利回りと価格はどう決まるか
債券の利回りとは 213
債券価格はどうやって決まる? — 217
5.3 債券のリスク
債券の信用リスクと格付
債券の価格変動リスク 22:3
5.4 金利の期間構造
スポットレートで債券価格を求める 229
5.5 株式の基礎
株価のウソ・ホント 236
株価はどう決まる? -236
第5章 まとめ 242
第6章 デリバティブの理論と実践的知識
6.1 デリバティブの種類
先物取引とは 244
先渡し取引とはどういうものか 245
為替予約レートの決まり方 247
購買力平価とは 249
相対的購買力平価とは 250
自国通貨法と外国通貨法とは
Column インフレーションと金利 256
6.3 先物取引の特徴
取引所の存在 257
先物取引と先渡し取引って同じ? — 261
スワップの価値とは 266
スワップ取引にひそむ罠— 269
6.5 オプションとは
本源的価値と時間価値 278
6.6 オプションの価値を決める
オプション価格変化の要因
オプション価値の早わかり術
二項モデルでオプション価値を求める <-286
複製ポートフォリオ 287
リスク中立の世界とは
リスク中立確率でオプション価値が求まる理由-
演習問題 (コールオプションの価値算定) -
6.7 ブラック=ショールズ・モデルとは何か
ビジネスに方程式をどう使うか
ヒストリカル・ボラティリティ
インプライド・ボラティリティー 301
【Column 連続複利とは 302
6.8 日産でのブラック=ショールズ・モデル活用編
転換社債とは 309
転換社債の価格はどう動く? 310
新株予約権の行使と株主構成の変化 315
第6章 まとめ 316
第7章 経営の自由度の価値評価
7.1 経営の自由度とは
経営の自由度を評価する— 318
ディシジョンツリー分析法とは何か
リアル オプション法とは何か
リアル オブションの事例 326
二項モデルの事例
第7章 まとめ
参考文献 (増補改訂版)

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旧版
2005
投資理論
それ以外の投資判断
資本支出予算
投資証券理論
ポートフォリオによる分散投資
企業価値評価
CAPMを使った株主資本コストの算出
会計の基礎
企業の最適資本構成と配当政策
財務破綻コスト
資本市場に関する理論
株式の基礎
デリバティブの理論と実践的知識

問題集