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『ユリシーズ』
ユリシーズ初版書影(パブリック・ドメイン)
青くてきれい
ダブリンの海の色とこの色ってなんか関係あるのかな?ないか…
>縫糸のほつれた袖口の向うに、傍らのよく肥えた声が大いなる慈母と呼びかけた海が見える。湾と水平線の輸が鈍い緑の液体のかたまりを抱える。〈『ユリシーズ1-12』 第一挿話,p.15〉

>Stephen, an elbow rested on the jagged granite, leaned his palm against his brow and gazed at the fraying edge of his shiny black coat-sleeve.

マルセル・プルースト『失われた時を求めて』と並び評される、20世紀の小説にものすごく影響をもたらしたとされる作品。
日本では『ユリシーズ』。英語ではUlysses

Project Gutenbergで原文が無料で読める

構成
三部、全十八挿話からなる。
第一部
第一〜第三挿話。
この前の作品にあたる『若い芸術家の肖像』の主人公、スティーブン・デッダラス(22歳)が中心となる。
第一挿話:テレマコス
1904年6月16日午前8時~8時45分
場所:マーテロ塔
出来事
マーテロ塔でバック・マリガンと髭を剃る
母親の死を思い出す
スティーブン・マリガン・ヘインズで朝食
第二挿話:ネストル
第三挿話:プロテウス
第二部
第六挿話:ハデス
第七挿話:アイオロス
第八挿話:ライストリュゴネス族
第九挿話:スキュレとカリュブディス
第十挿話:さまよう岩々
第十一挿話:セイレン
第十二挿話:キュクロプス
第十四挿話:太陽神の牛
第三部
第十六挿話:エウマイオス
第十七挿話:イタケ
第十八挿話:ペネロペイア

スティーブンは母を亡くして落ち込んでいる
作者の過去作、若き芸術家の肖像の主人公でもある
ブルームはこの日に妻が情夫と家で逢う約束をしているのを知っており、家に帰らないようにふらふらする
友人の葬式に出たり、広告の仕事のために新聞社に行ったり、図書館に行くついでにかもめにケーキをやったりする
このふらふら歩き自体がホメロスの「オデュッセイア」を下敷きにしている
20年間放浪した英雄の物語を、一日ダブリンをうろつく寝取られ中年夫の物語とする
ナボコフはこの対応関係自体はブルームの街あるきのなかに、ホメーロス的な流浪の主題の反響が、ごくかすかに、たいへん漠然と響いているのは明らかであるというが、またこの小説のあらゆる登場人物、あらゆる場面のなかに古典との親密な並行・対応を探し出そうとするのは、まったくの時間の浪費であるだろうともいう
じゃあ何を見るべきかというとブルームと運命という主題である
>1. 取り返しのきかぬ過去。ブルームの息子が幼くして死んでからすでに久しい、が、その子の面影はいまなお彼の血と頭のなかに生きつづけている。
> 2 滑稽で悲劇的な現在。ブルームは妻のモリーをなお愛している、が、すべてを運命の女神にまかせている。(...)
> 3 悲しい未来。ブルームはまたもう一人の青年――スティーヴン・ディーダラスにも出くわしつづける。ブルームはこれもまた運命のささやかな心遣いではあるまいかと、しだいに悟ってゆく。(ナボコフの文学講義(下)、p.212)
文体の異なる全十八挿話からなる
>ジョイスは『ユリシーズ』の18の章をそれぞれ「同業者には未知で未発見の十八の違った観点と同じ数の文体」で書くことを試みている。ユリシーズ - Wikipedia
第十四挿話「太陽神の牛」と第十八挿話「ペネロペイア」が特に有名
第十四挿話「太陽神の牛」は英語文体史パスティーシュ
>この挿話は、英語文体史を概括するパスティーシュの集積で成り立っており、古代の呪いから始まって、ラテン語散文、古英語の韻文、マロリー欽定訳聖書文体、バニヤンデフォースターンウォルポールギボンディケンズカーライルというふうに次々と文体が変わってゆき、最後にスラングまみれの話し言葉となって終わる。
日本語訳にあたっては丸谷才一が日本の古典に引き直して訳している
>(…)古代英語祝詞および『古事記』、マロリーは『源氏』ほかの王朝物語エリザベス朝散文は『平家物語』、デフォーは井原西鶴マコーリー夏目漱石、ディケンズは菊池寛、ペイターは谷崎潤一郎で。
第十八挿話「ペネロペイア」
>8つのパラグラフからなるモリーの独白で、句読点のない滔々とした文章になっている。その内容は、ブルームとボイランとの比較やモリーのこれまでの人生の回想、ブルームとの出会いや彼との生活、ブルームが連れてきたスティーブンのことなどである。最初は、ボイランとの行為を満足をもって振り返るが、やがて彼の粗野さに気付き、ブルームの優しさを再確認する。最後は、16年前にブルームからプロポーズされたときの回想と、それに伴って現れるYesという言葉で終わる。(and yes I said yes I will Yes.
この独白体を借りているのがエホバの顔を避けての終盤

文体のパロディの連続





読解にあたって
『ユリシーズ』集英社ヘリテージシリーズが巻末注を多く持っている
翻訳に対する批判が柳瀬『翻訳はいかにすべきか』(岩波新書)にあり
日本語訳については『ユリシーズ1-12』が参照されるケースが多そうcFQ2f7LRuLYP
明石書店の連載が読み進める上で大いに参考になる
読まれていないという言説を再生産しているのはむしろユリシーズの紹介者
芳しい花を求めて飛び回る蜂のように、テキストとテキストを渡り歩くような読書
シェリーの引用
>全体として1篇の詩になっていなくとも、諸部分がそれぞれ詩的になることはある。ある1つの文章がうまく落ち着いていない箇所のなかにあったとしても、その文章それ自体を1つの全体と考えることもできるだろう。たった1つの語が消しがたい不滅の思想を生む火花となるかもしれないのだ。



長いしよくわからん話が満載だし文体も一定でないので非常に読みにくいcFQ2f7LRuLYP
読み通せる気がしない
開き直って通読をやめて面白そうな場面を探している
途中の話から読んだり
パッと広げたとこを読んだりして
「良い!」と思う場面に出くわしたりもする
17話でベッドに入ったとき、妻の体の存在と、自分のものではない男性の肉体の痕跡に遭遇し、あらためてショックを受けるブルームとか(ネタバレ)
>What did his limbs, when gradually extended, encounter?
> New clean bedlinen, additional odours, the presence of a human form, female, hers, the imprint of a human form, male, not his, some crumbs, some flakes of potted meat, recooked, which he removed.
>(...)With what antagonistic sentiments were his subsequent reflections affected?
> Envy, jealousy, abnegation, equanimity.
あとそのあとブルームが夢に落ちていく場面とか
> Womb? Weary?
> He rests. He has travelled.
> With?
> Sinbad the Sailor and Tinbad the Tailor and Jinbad the Jailer and Whinbad the Whaler and Ninbad the Nailer and Finbad the Failer and Binbad the Bailer and Pinbad the Pailer and Minbad the Mailer and Hinbad the Hailer and Rinbad the Railer and Dinbad the Kailer and Vinbad the Quailer and Linbad the Yailer and Xinbad the Phthailer.
> When?
> Going to dark bed there was a square round Sinbad the Sailor roc’s auk’s egg in the night of the bed of all the auks of the rocs of Darkinbad the Brightdayler.
> Where?
>
そしてペネロペイアに続く……