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洞察問題
心的飛躍が必要な問題

・多くの人が解くことに時間がかかる、または解けない
・解決までのステップ数は関係ない(ステップが少なくても起きる)
・ヒューリスティック思考や認知スキーマが解決を妨害する
・同じ失敗を何度も繰り返す
・解決へのヒントを見逃す(無視する)
・解決は主観的には瞬間的に訪れる
・答を見れば、簡単に理解できる

関連

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他の洞察問題
・蝋燭問題
画鋲、箱の蓋、蝋燭
・8コイン問題
・チェッカーボード問題
・100円問題
伸吾、剛、吾郎の三人で500円ずつ出して、1500円のワインを買いに行った。店員は彼らから1500円受けとったが、店主がラベルに傷があるところを見て、店員に1000円で売るように言った。店員は500円のうち300円を伸吾、剛、吾郎の三人に渡して、200円をくすねてしまった。伸吾、剛、吾郎は300円返してもらったので1200円支払ったことになる。ところがこの1200円と店員がくすねた200円を合わせても1400円にしかならない。残りの100円はどこに行ったのか。
・Tパズル
・マッチ棒問題
6本で正三角形を4つ作る
・奥深くにある腫瘍への放射線治療問題
・農場問題(要塞問題)
・文章による洞察問題
正答率 50%
>免許証不携帯の無職の女性が踏み切りで一次停止を怠ったあと、一方通行の標識を無視して3ブロック逆走した。しころがその一部始終を知覚で見ていた勤務中の警官は、その女性に対して交通違反切符を切ろうとはしなかった。それはなぜか?
>ある少年が寝室の電気を消して、部屋が暗くなる前になんとかベッドにもぐり込んだ。ベッドは電気のスイッチや電球から3m離れており、少年は電気を消すために針金も紐もその他のどんな装置も使っていない。いったいどうやったのか?
>高層オフィスビルで窓掃除をしていたハーディ氏は、足を滑らせて高さ20mの梯子からコンクリートの歩道に転落した。ところが信じられないことに、彼はかすり傷一つ追わなかった。それはなぜか?
>締め切った部屋の外にスイッチが三つあり、部屋の中には電球がある。ドアを閉めた状態で任意の数だけスイッチをオンにしたあと部屋の中に一度だけ入り、どのスイッチがどの電球とつながっているのかを判定しなければならない。どうすればできるか?
> アンティークコインを扱っている古物商のもとに、美しい銅貨を買わないかというオファーが舞い込んだ。銅貨の片面には皇帝の顔が、もう片方の面には紀元前544年という文字が刻まれていた。古物商は銅貨をよく調べたあと、それを買い取らず警察に電話をかけた。それはなぜか?
> ジュリエットとジェニファーは同年同月同日、同じ父母のもとに生まれたが、この 2人は双子ではない。なぜそんなことがありえるのか?
> n-e-w-d-o-o-rという文字を並べ替えて別の単語を作ってみよう。
> ある囚人が塔から抜け出そうと試みていた。独房の中には一本のロープがあるが、その長さは安全に地上に降りるのに必要な長さの半分しかない。囚人はロープを半分に切り、2本をつなぎ合わせて塔から脱出した。いったいどうやって脱出したのか?
> スチール製の巨大ピラミッドが、先端を下にして絶妙なバランスで逆さまになっている。少しでも動かせばピラミッドは倒れてしまう。ピラミッドの先端の真下には100ドル紙幣が挟み込まれている。ピラミッドを倒すことなく紙幣を取り除くにはどうすればいいか?
> どんよりと雲が垂れ込める1月のある寒い日、新しい最高行政官ーーその国で歴史上最年少の最高行政官の一人ーーが、就任の宣誓を行おうとしている彼はカトリック教徒として育った。最高行政官の地位まで登りつめることができたのは、その強烈なカリスマ性による。彼は国民から崇拝されており、これから国が直面することになる軍事的危機において、きわめて重要な役割を果たすだろう。彼の名前は伝説になるだろう。
多くのアメリカ人が「ジョン・F・ケネディ」と答える。ヨーロッパ人は「アドルフ・ヒトラー」と答える。

放射線治療問題と要塞問題の研究
Ryo Orita, Masasi Hattori (2014),洞察問題解決における手がかりの利用に気分が及ぼす影響

関連

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T字パズル
>洞察研究ではいろいろな問題が使われているが、ここでは私たちのグループが長らく扱ってきたTパズルを紹介したい。 図6-5 に示したパズルがTパズルである。皆さんはもう正解を提示されてしまっているので難しさがわからないだろうが、これはことのほか難しいパズルである。私が最初にチャレンジした時は、おそらく四〇分以上かかっている。友人たちにも解いてもらったが、二〇分以内で解ける人はほとんどいなかった。また初期の頃、考えていることを話しながら解いてもらった時には、この問題は解決不可能であることを証明(?)してくれた人さえいた。

四つを組みあわせてT字を作る

ヒューリスティック思考や認知スキーマが解決を妨害する
>一般にこういうパズルを行うと、人間はピースを安定した形に置きたがり、接続する場合には接続後にできる形がきれいになるようにする。こうした人間の傾向性は、さまざまな可能性の中から特定のものを選ぶという意味で、第4章で述べた制約とみなすことができる。このような制約にしたがうと、五角形ピースはその一番長い辺が基準線(机の端など)に平行、あるいは垂直になるように置きたくなる。また、五角形ピースにある変な形のくぼみが気になり、この部分を他のピースを使って埋めてきれいな形を作ろうとする。こうなってしまうと、全く正解図形とは一致しない。

同じ失敗を何度も繰り返す
>こうした間違いは何度も何度も繰り返される。五角形ピースを平行、垂直に置く試行、そのくぼみ部分を埋める試行は、だめだとわかっていても何度も繰り返される。ある研究によると、試行の六割以上は過去にやってみて失敗がわかっているものだという。そういう意味で制約はきわめて強固で、少しの失敗では緩和されることはない。

解決へのヒントを見逃す(無視する)
>さて、洞察はこういう状態から突然、一気に訪れるのだろうか。実はそうではない。回数は少ないが、ほとんどの人はかなり初期からよい置き方、つまり制約を逸脱した置き方をしているのである。そばで見ていると「あれ、この人もう解けちゃうの?」と思ったりすることもある。しかし、こうした制約を外れたよい試行は無視され、また制約にとらわれた実りのない試行へと逆戻りしてしまう。そして、またしばらくするとよい試行が行われ、また捨て去られる。今までで最もびっくりしたのは、 図6-5 の左の三つのピースを正しく接続し、あとは長い台形をつければ終わりというところまで進んだのに、これを崩してまた最初からやり直すというものだった(結局、この人は一五分の制限時間内で解決できなかった。

解決は主観的には瞬間的に訪れる
>多くの人において、よい試行の発生頻度は、問題解決を続けるうちに徐々に増加していく。しかし、本人は全然そのことに気づいていない。つまり、徐々によくなっているにもかかわらず、本人はひたすらできないと感じ、徒労感を募らせていくのである。それにめげずに問題に取り組み、四、五回に一回程度、制約を外れたよい置き方が起きる頃になると、解決に至ることが多いようだ。そして解けた時には、多くの人は突然に解けたかのように感じる。

解決に向けて進んでいるのに主観的には気づいていない
>ここには、常識から考えれば非常に奇妙な(しかしこの章で述べてきたことからすれば容易に予測できる)人間の振る舞いがある。つまり、数は少ないながらもはじめから適切な振る舞いが現れ、それは徐々に増加しているにもかかわらず、それに全く気づくことなく問題解決が進められ、ある時にあたかも突発的に解にたどり着いたかのように感じる、そういう人間の姿である。

>実はこうした現象は、このパズルを解く時だけに生じているわけではない。寺井( 69) たちは、別のタイプの洞察問題でこのことを検討している。ただし、彼らは手の動きではなく、目の動き、つまり着眼点を計測した。彼らの実験で解決に至った人たちは、はじめは不適切な目の動きをしている。しかし、失敗を重ねるにつれて、徐々に適切な目の動きが相当に増えていく。一方、問題が解けなかった人たちにはこうした変化はさほど顕著ではない。だいじなことは、適切な目の動きをした途端に問題が解けるわけではないということだ。意識レベルの発見、つまり「わかった」という意識は、適切な目の動きが増加してから五~六試行後くらいに現れている。

無意識下での解決
連続フラッシュ抑制を用いたサブリミナル実験を用いて、認識できないヒントを情報を参加者に与えると解決が数点程度で解けるようになった*1。

参考

出典

論文
(69), 寺井仁・三輪和久・古賀一男(2005). 仮説空間とデータ空間の探索から見た洞察問題解決過程

*1, 鈴木 宏昭, 福田 玄明(2013):洞察問題解決の無意識的性質 連続フラッシュ抑制による閾下プライミングを用いた検討.


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調べる
洞察問題解決におけるメタ学習

洞察問題解決の性質 三輪和久 寺井仁

思考の言語化が洞察問題解決に及ぼす影響

洞察問題解決におけるアイデア生成

洞察問題解決におけるアイデア生成と抑制機能
西田 勇樹, 織田 涼, 服部 雅史, ヴァレリア カストルディ, ローラ マッキ

洞察問題解決に試行と他者観察の交替が及ぼす影響の検討
清河 幸子, 伊澤 太郎, 植田 一博

洞察問題解決の無意識的性質
鈴木 宏昭, 福田 玄明


「T パズルは洞察問題ではない」の実験的証明
髙岸 悟

創造的問題解決における多様性と評価 鈴木宏昭

認知を生み出す:洞察