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トランスジェンダー入門

1 章 トランスジェンダーとは?
従来、FtMMtF といった表現も使われていたが、これらは医学的な性別移行に重点を置いた表現に由来
最近では、当事者のジェンダーアイデンティティをより尊重したトランス男性 (トランスジェンダー男性) やトランス女性 (トランスジェンダー女性) という表現が好まれるようになってきている
が、ノンバイナリーの当事者の中には、自分がトランスジェンダーだとは思っていない人もいる
日本語圏では X ジェンダーという言葉が似た意味で使われている
「身体の性」 と 「心の性」 で説明することの問題
「身体の性」 ではなく 「出生時に割り当てられた性別」 という表現が使われている理由
「身体の性」 と言ったときに、日常的には外性器ではなく、髪の長さや胸の大きさなど、雑多な身体的特徴が使われる
「身体の性」 は、手術などによって変わりうる
「心の性」 と言ったときの弊害
社会的な要素が欠落 : 社会で生きる中で、自分の性別についての認識を確立していくプロセスを考慮できていない
その時々で変化しそうな不安定さがある
割り当てられた性別に関する 2 つの課題
「女/男としてこれから生きなさい」 という課題
トランスジェンダーの人はこちらの課題をクリアできない
「女/男は女らしく/男らしく生きなさい」 という課題
こちらは、例えばフェミニズムによって批判されているもの

2 章 性別移行
精神的な (性別) 移行
社会的な性別移行
医学的な性別移行
基本的にはテストステロンの服薬
パスと埋没

3 章 差別
日本には LGBT について学校教育で指導するカリキュラムが存在しない
そもそも、前提となる性教育の状況が悲惨
いわゆる歯止め規定など
職場の差別がきっかけでうつ病を発祥する人が後を絶たない
自殺念慮自殺未遂の経験率も高い

4 章 医療と健康
トランスジェンダーであることは病気か?
歴史的には性転換症性同一性障害という名前で、精神疾患精神障害の扱い
病気としての扱いを受けることで、一部のトランスの人は必要な医療的を受けることができたという事実はある
実際には病気ではないから、病理化の歴史には修正が必要だった
同性愛バイセクシュアルA セクシュアルの人たちが病気でないように、トランスジェンダーも病的な状態ではない
トランスジェンダーの脱病理化
米国精神医学会の 「精神疾患の診断・統計マニュアル」 (最新版は DSM-5) でも、世界保健機関 (WHO) の国際疾病分類 (最新版は ICD-11) においても、トランスジェンダーであること自体は直接は病気や障害ではない
医学の世界では、長らくトランスジェンダー病気扱いしてきた
一番初めは、強制的にホルモンを投与したり、電気ショックを与えたりして、ジェンダーアイデンティティを無理やり変えさせようとしていた
性転換症 (TSトランスセクシュアリズム) という病名が普及し、ジェンダーアイデンティティに沿って身体を変えることこそが必要な医療だという認識が確立した
現在では、性別違和性別不合と言われる
トランス自体は病気ではないが、快適な身体、自分として生きられる身体を取り戻すために医療的な治療を選択することもある
妊娠は病気ではないが、医療的なサポートが必要である、というのと似ている
ことの発端は 1964 年のブルーボーイ事件
闇医療に法の網がかけられ、医師たちが委縮した → 停滞期へ
そのような状況を打破するために、1997 年に初版のガイドラインが策定された
世界的には、トランス医療には WPATH という専門組織がある
日本のガイドラインと異なり、脱病理化の成果に依拠している
日本では性同一性障害や性別不合の診断が最初に来るが、IC モデルではそれを重視しない
それよりもホルモンを打つとどうなるか、などの説明を重視する
医療における差別
入院時に個室を選択させられ、差額を請求される

5 章 法律
このような法律を一般に性別承認法という
今後は、現状の医学モデルから人権モデルに転換すべき
戸籍制度自体不要と言える
同性婚ができないこと
特例法の非婚要件に関わっている
トランスジェンダー異性愛者ではない人の割合が多い (ノンバイナリーも含む)
差別禁止法がないこと
野党が LGBT 差別解消法などの名前で法律を作ろうとしたが、与党が強硬に反対して LGBT 理解増進法
nobuoka 本書の発行前には LGBT 理解増進法が成立済み
日本には性的マイノリティに限らず様々なマイノリティへの差別禁止の法律がない
障害者差別解消法が数少ない例外

6 章 フェミニズムと男性学
フェミニズムトランスジェンダーの政治は密接にかかわっている
トランス女性フェミニズムが置き去りにしてはいけないことは明白
第二派フェミニズムにおける 「名前のない問題」 は白人女性の問題だった
同時代の黒人女性の多くは労働に従事していた
ノンバイナリーの人たちが団結して社会運動をした歴史は可視化されていない
最優先の要求は、過剰な男女分けをやめてほしいこと