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ブレインストーミング解説

京大サマーデザインスクール2014京大サマーデザインスクール2014西尾泰和(c)2014西尾泰和(サイボウズ・ラボ)

ブレインストーミングブレインストーミングブレインストーミング

Q:ブレインストーミングってアイデア出しの方法でしょ?学び方とどう関係があるの?

アイデアと仮説と計画と“わかった"気持ちは根が共通

アイデアは実行して検証しなければうまくいくかわからない

仮説は実験して検証しなければ正しい仮説かわからない

計画は実行して検証しなければ期待通りになるかわからない

“わかった"という気持ちは実行して検証しなければ本当にわかっているか不明

この4つはすべて“知識の結合によって新しく生み出され今後検証が必要なもの"

KJ法も発想支援の方法であると同時に“わかる"ための手法である

このスライドの目的
ブレストに関する思い込みを取り除く

“ブレインストーミング"オズボーンによる造語
1950年頃

よく“ブレストのルール"として紹介される4項目

ブレインストーミングの4原則
判断しない・結論を出さない(結論厳禁)
自由なアイデア抽出を制限するような、判断・結論は慎む。…
粗野な考えを歓迎する(自由奔放)
誰もが思いつきそうなアイデアよりも、奇抜な考え方やユニークで斬新なアイデアを重視する。…
量を重視する(質より量)
様々な角度から、多くのアイデアを出す。…
アイディアを結合し発展させる(結合改善)
別々のアイデアをくっつけたり一部を変化させたりすることで、新たなアイデアを生み出していく。
他人の意見に便乗することが推奨される。
Wikipedia「ブレインストーミング」より抜粋

このルールの出典は?

“開会に際してリーダーは問題の提示とともに次の事柄を説明すべきである。(1)…(2)…(3)…(4)…
オズボーン『創造力を生かす』p.272太字は筆者による

ブレインストーミングリーダーはこれらの注意事項を自分の言葉で述べるべきである。
ブレインストーミングは常に非公式のものであるべきだからである。"
『創造力を生かす』p.273太字は筆者による

・最初に問題を提示する
・4つの注意事項を自分の言葉で述べる

これで全部? NO!

“厳密に正式に行わねばならない唯一の事柄は、提出されたすべてのアイデアの記録である。"
『創造力を生かす』p.273太字は筆者による

ブレインストーミング
・すべてのアイデアを記録
・最初に問題を提示する
・4つの注意事項を自分の言葉で述べる
すべてのアイデアを記録することが一番重要なルール

“アイデアの流れを何かに書き留めてメンバ全員に見えるようにしよう" IDEOが導入している追加ルール。『発想する会社!』p.70

1986年に書かれた本でも“記録係が片端からメモする"と書かれている。
なぜ記録の重要性が忘れ去られてしまったのか…『思考の整理学』p.168

ブレインストーミングオズボーンはこうも言う: “この記録の写しが会議後全員に渡るようにすること"『創造力を生かす』p.273太字は筆者による

ブレインストーミングここまでのまとめ“アイデアを記録する"がもっとも重要なルールこれをないがしろにしているケースがすごく多い

ブレインストーミングブレストって口頭でアイデアを言い合う硬くない会議のことでしょ

ブレインストーミングブレストって口頭でアイデアを言い合う硬くない会議のことでしょ

ブレインストーミングオズボーンの提唱後50件以上もの実験によって意外な事実が明らかに…

ブレインストーミング
口頭で行う場合複数人のグループでやるより個別にやったほうがアイデアの量も質も高い McGrath(1984)

ブレインストーミング1.生産性の阻害他人の話を聞くことが自分の考える時間を奪う話題が固定化する、など『凡才の集団は孤高の天才に勝る』p.84

ブレインストーミング2.社会的抑制他のメンバにどう思われるか心配して発言できない『凡才の集団は孤高の天才に勝る』p.84

ブレインストーミング3.社会的怠惰責任がグループに分散し、個々人の必死さが失われる『凡才の集団は孤高の天才に勝る』p.84

ブレインストーミングこの問題を解決する方法は?

ブレインストーミング“ブレインライティング"個々人で書いてから共有する高橋誠“ブレインライティング短時間で大量のアイデアを叩き出す「沈黙の発想会議」"

ブレインストーミング“電子ブレインストーミング"口頭での発言をチャットで置き換えるこの方法は必要なら匿名化も可能という特長がある。Dennis and Valacich(1993) Computer brainstorms

ブレインストーミング“グループウェアはコンピュータでブレインストーミングの舞台を作ろうというもの"『組織とグループウェア

ブレインストーミングここまでのまとめ“口頭"は必須ではないむしろ生産性を損ねる

ブレインストーミング個人でもブレストの訓練後アイデアの量が増す→ひとりでやっても有益『凡才の集団は孤高の天才に勝る』

ブレインストーミング書いてから共有する→同じ時間にやる必要がない

ブレインストーミング“インターネットの普及により大規模なアイデアの収集が容易になった"『クラウドストーミング

ブレインストーミング“チームメンバが集まる"というイメージがそぐわない

ブレインストーミングブレストの原理を応用して見かけの異なった手法がつくりだされてきている

ブレインストーミング“ブレストとはだ"と決めつけるのではなくwhyを考えることが大事

ブレインストーミングブレストの問題点「質より量」しかし量が多すぎると人間が圧倒されてしまう

ブレインストーミング一つの解決策は投票IDEOではブレスト終了後出席メンバーが気に入ったアイデアに投票する

ブレインストーミングもう一つの解決策はKJ法視野を広く使うことで一度に作業記憶に載る情報の量を増やす

ブレインストーミングこのワークの基本構造もブレスト→KJ法「各自が書いてから共有」は「アイデアの記録と配布」に相当

参考文献
•A.オスボーン(2008) “創造力を生かす:アイディアを得る38の方法"豊田晃訳,創元社トム・ケリー,ジョナサン・リットマン(2002) “発想する会社! 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法",鈴木主税訳,秀岡尚子訳,早川書房外山滋比古(1986) "思考の整理学"ちくま文庫高橋誠(2007)"ブレインライティング-短時間で大量のアイデアを叩き出す「沈黙の発想会議」" McGrath, J. E. (1984) "Groups: Interaction and performance" Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall Alan R. Dennis and Joseph S. Valacich (1993) "Computer Brainstorms: More Heads Are Better Than One" Journal of Applied Psychology 1993, Vol 78, No. 4, 531-537キース・ソーヤー(2009) "凡才の集団は孤高の天才に勝るー「グループ・ジーニアス」が生み出すものすごいアイデア"ダイヤモンド社ショーン・エイブラハムソン(2014) "クラウドストーミング-組織外の力をフルに活用したアイディアのつくり方"阪急コミュニケーションズ

ブレインストーミングオズボーンが言っていること“提案の恩恵を受ける人たちからの簡単な感謝状を全員に配布する"『創造力を生かす』p.273

ブレインストーミングオズボーンが言っていること“アイデアが採用される場合には、会議の人たちにその旨を報告して彼らを激励する"『創造力を生かす』p.273

このスライドについてこのスライドは、サイボウズ・ラボの西尾泰和と竹迫良範が、京都大学サマーデザインスクール2014で行った「学び方のデザイン」の講義資料の一部です。他のスライドはhttp://nhiro.org/kuds2014/で見つけることができます。