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新解釈 コーポレートファイナンス理論 「企業価値を拡大すべき」って本当ですか?
宮川 壽夫
2022
縦書き、数式なし
数式なしの方が難しそうだ...基素
この理論は価値価格は同じという前提で進む
買い物は将来の利益と不確実性の綱引きだ
コートを買うときはこんなことを考えながら値札を見る
positive この冬を乗り切れるかもしれない、かっこいいかもしれない
negative 暖冬かもしれない、似合わないかもしれない
そして値札を捲る。これだけの価値があるのか?
価値=(将来起きる良いこと)/(将来の不確実性 良いことが起きない確率)
企業価値 = 将来の予想キャッシュフロー / 資本コスト
欧米のテキストにCooporate valueなんて単語はほぼ出てこない
出てくるとしても企業価値と日本語で言うような意味ではなくもっと限定的な意味
代わりに「shareholder value」が使われる。つまり株価
株主価値とは時価総額のこと
企業価値の拡大はそう易々とおこらない
リスクとリターンは比例する(1960s)
TOPIXなどの日本の株式市場は1969年に100円で始まっており、年率およそ6%
株の期待リターンは6-7%
市場全体のリターンが得られる時の市場全体のリスクβを1.0とおく
βを0とみなせるもののリターン(10年国債の利回り)と株式市場全体の期待リターンの線形直線(証券市場線)を発見したのがCAPM
リスクとリターンは線形であるという主張
仮定
完全競争市場が成立している
βはほとんど企業が行なっている事業リスク


目次
第1話 会社が儲かるとは、そもそもどういう状態を言うのか? 株式会社という説話原型
資本が企業のテンションを上げてしまう
企業は資本を調達して資産を買う
企業は資産を使ってキャッシュを稼ぐ
出資者の顔が見えないまま資本は成長する
世の中のおカネがぐるぐる回るために
投資したものはいつか返ってくるという信仰
column コーポレートガバナンス・コードの功罪
第2話 株価の変動がでたらめだったら何がうれしいのか? 不確実性理論という宿命
リターンとリスクの関係は人生そのものだ
株価はでたらめに動いているという衝撃
すべての情報を織り込んだ株価はどう動く?
だから相場は相場に聞け
ランダムな現象には法則がある
過去の繰り返しが未来を創る
人が勉強するにはワケがある
第3話 なぜ人はリスクを恐れるのか? CAPMというイニシエーション
リスクが低いものは高く値付けされる
どうやってリスクを表現するか
要するに価格は釣り合っている
βは企業が行う事業が決める
資本コストの計算と理屈はとても単純にできている
column 2 あきらめがつくリスクとあきらめがつかないリスク
第4話 株価はどうやって決められているのか? 割引現在価値という決まりごと
市場が価値を反映して価格をつける
おカネさえ出せばそれは自分のものになる
株価が決まるメカニズム
債権者のことも考える必要がある
将来得られるものとそれが得られない不確実性の綱引き
他者の存在があってはじめてわかる自分の価値
第5話 どんなときに企業価値は拡大するのか?―正のNPVというメカニズム
価値が拡大するメカニズムはいたって単純
ちょっとした事例でIRRも体験
「自社の資本コスト」によって事業案件を検討してはいけない理由
WACCハードルレートに用いることの危険性
現金が企業価値を毀損するわけではない
企業の資本コストは絶対音感?
正確な資本コストを計算することの限界
大事なことは結果にいたるプロセス
column 3 本当に長期的株主がほしいですか?
第6話 株式市場は正しい答えを持っているのか?―効率的市場仮説という自己矛盾
株式市場に押し寄せるバッファローの群れ
行列ができる人気ラーメン店はこうして生まれる
株価は正規分布しない?
市場価格が正しくないとなにが困るのか?
相場師たちの矛盾
効率か非効率かではなく程度の問題
ではなにを信じるべきか?
column 4 市場の効率性に関する3つのフォーム
第7話 価値を拡大することはなぜ困難なのか?―完全市場というフィクション
アルプスの少女ハイジのような理想的世界
現実の世界では株主価値がもともと毀損されている?
企業価値の拡大は並大抵のことでは起きない
なぜ完全市場という前提が必要なのか?
現実は本当に完全市場ではないのか?
期待に応えただけでは価値を生まないという厳しい現実
組織はエンジンを積んでいるか?
資本コストを低下させるという幻想
他社にできないことができるから価値がある
他社に持てないものを持っているから価値がある
完全市場の壁から背中を引きはがせ!
column 5 完全市場がファイナンス理論を発展させてきた
第8話 コスト削減の努力は報われるか? キャッシュフローという現実性
corporate finance理論に会計の知識は必要か?
ルールに基づく「過去の記録」と裁量による「将来の予想」
資金繰りがうまい企業の価値は高い: 運転資本の問題
利益を拡大しても企業の価値は拡大しない 減価償却費の問題
費用を削減しても企業の価値は拡大しない : 費用削減の功罪
構造を変えないままの費用削減は無駄になる
数学理論は必ずしも正しくない
悩みの種はトレードオフ
わかっちゃいるけどやめられない埋没費用
そもそもわかっちゃいない機会費用
たらればの価値を計算することには意味がある
第9話 財務分析はどこまで役に立つのか? ROE崇拝の迷宮
当期純利益を使わないと会社法違反?
宿命的に資本は増えていく
高ければいいというわけではない不思議な指標
ROE改善大号令の背景
時制が異なる資本コストとROE
資本コストは個別の投資ごとに決まります
俊足はトップバッターの条件か?
ふるいにかけることがシゴトではない
具体的な数値ではなくいっそのこと思いきり抽象化してみる?
財務分析の達人、それはヒマラヤの雪男
column 6 合併効果の疑わしさ
第10話 配当? 払ったことないですけどそれがなにか?―ペイアウト政策のパズル
配当政策というミステリー
稼いだおカネはどこへ行く?
ペイアウトには意味がない?
ペイアウトは支払わないに越したことはない?
ペイアウトは情報とともにやって来る
さわやかじゃないレモンのお話
配当が送っているシグナルとは?
なんだか膝を打つ感じがしないシグナリング仮説
世の中はエージェンシー関係にあふれている
自分の利益しか考えない経営者?
株主価値の拡大を怠るエージェントの投資行動
エージェンシー関係から発生する無駄な費用
理論はエレガントでも実証結果は不安定
ペイアウトは成熟企業の証?
結局のところペイアウト政策はなんのためにある?
「科学的」とは100%の正しさが保証されていないということ
column 7 2つにひとつを決めるための科学的プロセス
第11話 現金? 持ってないですけどそれがなにか? 企業の現金保有とペッキングオーダー理論
最も価値の低い資産、それは現金
現金を持つとロクなことがない
なんの自慢にもならない無借金経営
企業が保有する現金は年々増えている
企業が現金を保有する動機は昔から存在した
内部資金を活用して価値を拡大してきた米国企業
おいしいものから先に食べる:ペッキングオーダー理論
余裕があるというのは時として強い?
企業の競争優位性は現金で買えるか?
持っているかどうかではなく、持っているものを活かせるかどうか
column 8 企業の内部留保にまつわる誤解
第12話 会社は本当に株主のためだけに存在するのか? 株主プライマシーとステークホルダープライマシー
万人ウケしないけど迫力あるオヤジ、 フリードマン
同じ寝床で異なる夢を見るステークホルダーたち
順番が最後になる株主の取り分
なぜ株主は企業のリスクを負っているのか?
経済学的視点から見た株主プライマシー
法学的視点からの株主プライマシー
ステークホルダープライマシーは本当に公平か?
トリックアートを彷徨うように
column 9 バーリとミーンズの意外な本業と2人の出会い