ボロメオの輪
ラカンが提唱した
精神分析用語で、
象徴界・
想像界・
現実界の関係を図式的に表したもの。ボロメオの結び目とも。このボロメオの輪を保たせているものが
父の名であり、
鏡像段階で父を受け入れることができなかったとき、それは精神疾患となって現れる。その時は精神疾患が
父の名の代わりにこのボロメオの輪を維持する。そしてラカンは、精神病(統合失調症)はこのボロメオの輪が外れかかる、もしくは外れた状態のことだと主張する。そこで精神病患者は幻覚や妄想でこの輪をつなぎとめようとする。
構成要素
〈他〉の享楽
意味
ファルス的享楽
モデルとなったボロメオ家の紋章。(中央左下)日本では「三つ輪違い」とも。
ラカンによるジョイス
ジェイムズ・ジョイスの小説は、あまりに特異であるとして注目されている。ラカン曰く、ジョイスの文体は精神病的、つまり統合失調症的であるという。これは、言語を経ずに現実を表そうという言語活動ということだ。
サミュエル・ベケット曰く、「これは何かについて書かれたものではなく、その何かそれ自体なのである」。つまり出来事を小説にしているのではなく、むしろ出来事それ自体だ。なので、ラカン的に考えれば彼は、現実を言語を使わずに表現しようとしたということになる。
斎藤環『生き延びるためのラカン』第17回 ボロメオの輪の結び方
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