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イコノロジー
図像解釈学
図像を記述・解釈する技術
とくに20世紀の美術史学において、図像を生み出した社会や文化全体と関連づけて解釈するために発展した

現在の図像解釈学の端緒は、アビ・ヴァールブルクが1912年に発表した15世紀イタリア美術についての研究報告とされるが、本格的に体系化されたのは、エルヴィン・パノフスキーの研究においてである。彼はエルンスト・カッシーラー象徴形式の哲学に大きな影響を受け、より精密で普遍的に応用しうるイコノロジーを提案した。


>イコノロジーにおける三つの層

パノフスキーは、一つの作品は、ある意味を担う一種の言語とみなされるが、その意味には三つの層 (Three Strata)があるという。イコノロジーにおける三つの層を解説する。
例としてアルブレヒト・デューラー『メランコリア I』を参照する。


> ①第一段階的・自然的主題 Primary or natural subject matter
母親らしき女性と子供を描いた絵であるとか、穏やかな表現であるといった、画面に描かれた対象や色彩・形状など。

(例)デューラー『メランコリア I』では、「翼を持った人物がしゃがみこんでいる」「道具類が周囲に散らばっている」といった、そこに描かれている事柄や状況(事実的主題)。また「この人物は物思いにふけっている」といった、特段の知識がなくとも見て取れる感情や心理的意味(表出的主題)。

ばる絵画を見た時に僕たちが一番最初に感じとる部分だと思われる。「シリアスな顔の、翼を持った人がしゃがみこんどるなあ」
とか、「隣に天使っぽいのがおるけどめっちゃ暗いやん」とか「めっちゃごちゃついとるな、掃除しろや」とか。

> ②第二段階的・伝習的主題 Secondary or conventional subject matter
聖母子を描いた西洋絵画においては青色のガウンが貞淑さを表すとか、「剣」が正義や勇気を表現するといった、制作当時に常識とされていた慣習や取り決めなど。

(例)『メランコリアI』では、膝の上に肘をついたこの人物のポーズが「四体液理論」でいう「憂鬱質」を示すこと、この人物が手に持っているコンパスや床に置かれている玉などが古くから「幾何学」の象徴であることなど。
これは作品そのものから読み取れず、この知識を得るためには過去にさかのぼる広範な史料調査を行う必要がある。パノフスキーはこの段階をイコノグラフィ(図像学)と呼んで、イコノロジーとは区別する。

ばるこの第二段階には知識が要求されるようだ。昔絵画を読み解いてみよう!というイベントで解説したが、ルネサンス期などの西洋絵画においてはある共通の約束事、コードが存在していた。青はマリアの色だとか、鍵を持っている人物はペテロとか。
この事物は「〇〇の象徴」という話だ。『メランコリア I』からは、コンパスや床に置かれている玉などが「幾何学」の象徴として読み取れるとのこと。ここまでは図像学の範疇であり、パノフスキーのイコノロジーはこれにさらに当時の社会の文化や精神性と関連づけることで解釈を広げる。

> ③内的意味・内容 Intrinsic meaning or content
作品のさらに奥底にある歴史意識や精神文化。たとえば聖母子像に意識的・無意識的に宗教観・世界観の変遷が表現されているといった、作品が差し出している総合的な意味。パノフスキーは、これを探るための手法をイコノロジーと呼んだ。

(例)『メランコリアI』では、第一段階の観察、第二段階の史料踏査を踏まえたうえで、なぜ「憂鬱質」の人物が「幾何学」と結びつけられているのか、床に雑多に並べられた「幾何学」とは無縁に見える道具類が何を意味するのかといった、作品の最終的な意味に対する総合解釈をもとめる作業が、この三段階目にあたる。
パノフスキー自身は、この人物の空を凝視する視線・力なく開かれた手のひらといった描写と、周囲にちらばる創造的な道具類との取り合わせが、高度な技術と知性を持ちながらも自らの限界に悩む人間の絶望感、とりわけルネサンスの美術家の挫折感の表現だとする解釈を提示している。

ばる第三段階は、第二段階までを踏まえて、描かれた事物から、描かれた当時の意識や精神性を歴史的に解釈、”推論”していくような感じなんだろう。これは画家が意識的に描いた部分だけでなく、無意識的な領域も考えていくようだ。

ちなみにここまでWikipedia参考にしてます


最後に、こういうのもある→イコノロジーへの批判