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インフラ(STS)

インフラ(infrastructure):スーザン・リー・スター and ルーレダの論文にて提起された概念。STSにおける古典のひとつ。kentnkmr

インフラ概念が提案された論文(スターandルーレダ、1994年(たしか))

(雑な)解説
> ちなみに複数人での協調作業をどうコンピュータで支援するかというのは学術的にも難問で、僕(kentnkmr)が今勉強しているSTSという(雑に言えば)科学技術の社会学的な領域では、94年に出たスターとルーレダによる論文が古典のひとつになっています。
> ”WCS(Worm Community System)"というのは、ゲノミクス研究のために線虫という生き物のゲノム解析をみんなでやるという国際プロジェクトが立ち上がった時にできた、ゲノム生物学者たちとその仕事をつなぐ大規模協調作業システムです。この論文はCSCW(Computer Supported Corporative Work)研究というジャンルにも属しています。ネット空間での共同作業というのは、単純な技術的問題ではなく、社会的関係を巻き込んだ複雑な事象だという、今考えれば至極真っ当な指摘でした。(この研究はインターネット黎明期、パーソナルコンピュータ普及以前のタイミングで行われています)著者らはこれを「インフラ」という概念で整理しました。

インフラの性質(スターらの論文による)
- Embeddedness(埋め込み)
 インフラは社会的な取り決めや技術の中に埋め込まれている。
- Transparency(透明性)
 インフラは目に見えない形でタスクを支援する(都度組み立てる必要はない)
- Reach or scope(距離や範囲の越境)
 インフラは単一のイベントや場所を越えるものである。
- Learned as part of membership(メンバーシップの一部としての学習)
 インフラは実践共同体(Lave and Wenger 1992)の中で学習される
- Links with conventions of practice(実践の慣習との連関)
 インフラは既存の慣習を引き継ぐ(例:QWERTYキーボード)
- Embodiment of standards(標準の具体化)
 インフラの透明性は標準化による他のインフラやツールとの相互接続によって獲得される
- Built on an installed base(既存の基礎からの形成)
 インフラは既存のインフラの上に形成され、長所や限界を引き継ぐ(例:システムの後方互換性)
- Becomes visible upon breakdown(崩壊による可視化)
 インフラは壊れた時に初めて可視化される

hr

kentnkmr
kentnkmrがいま書いてる修論がこういう科学技術のメンテナンスとかリペアがテーマなのです→修理する権利




hr
余談(ご自由に #書いてけ )
twitterにツリーがあるのでご参照ください。

論文abstractと翻訳
> This paper analyzes the initial phases of a large-scale custom software effort, the Worm Community System (WCS), a collaborative system designed for a geographically dispersed community of geneticists. Despite high user satisfaction with the system and interface, and extensive user feedback and analysis, many users experienced difficulties in signing on and use, ranging from simple lack of resources to complex organizational and intellectual trade-offs. Using Bateson's levels of learning, we characterize these as levels of infrastructural complexity which challenge both users and developers. Usage problems may result from different perceptions of this complexity in different organizational contexts.(本論文では,大規模なカスタムソフトウェアであるWorm Community System(WCS)の初期段階を分析する.WCSは,地理的に分散した遺伝学者のコミュニティのために設計された共同システムである.システムおよびインターフェースに対するユーザーの満足度は高く、ユーザーからのフィードバックや分析も広範に行われたが、多くのユーザーはサインオンや使用において、単純なリソース不足から複雑な組織的・知的トレードオフに至るまで、様々な困難を経験した。Batesonの学習レベルを用いて、私たちはこれらをユーザーと開発者双方に課題を与えるインフラストラクチャの複雑さのレベルとして特徴づけています。利用上の問題は、この複雑さについて組織的な文脈で異なる認識を持つことに起因している可能性があります。)