反デカルト主義の哲学
> 数学者にして科学者でもあり、しかも哲学者であったパースは、自分の使命がデカルトやライプニッツなど、過去の偉大な科学者・哲学者の批判的乗り越えにあると考えた。そこで彼は自分の哲学の最大の課題を、近代哲学の父デカルトの批判というテーマに見定めたわけであるが、その反デカルト主義の哲学はだいたい次のようにステップを踏んで展開されたといえる。
①
デカルトの認識論的出発点をなしている「普遍的懐疑・方法的懐疑」という発想が、そもそも無意味かつ不可能な企てであることを示す。
②
デカルトにおいては、懐疑の末に「明晰・判明な
観念こそ
真理である」という原理が立てられた。しかし、懐疑が無意味であるとすれば、「観念の明晰性」(明証性)ということについて、別の基準・格率が立てられる必要がある。われわれのもつ
信念や
観念は、どのようにして明晰化できるのか。彼の「方法としての
プラグマティズム」はまさにこの問題への回答である。
③この基準のもとでは、
観念が明晰であることは、そのまま
真理であることを意味しはしない。そこで、
真理とは何かということをもう一度定義しなおす必要がある。