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LGBT を読みとく ― クィア・スタディーズ入門

セクシャルマイノリティについて全く知識がなくても読めて、セクシャルマイノリティについての最先端の知見や現代的な諸問題に対応できることを目指した書籍
肝は、クィア・スタディーズという、性の多様性を扱う学問領域

1 章
差別に対する知識の観点からのアプローチの重要性
「普通」 であれ、という暴力を解除できないアプローチは不適格
良心があっても勝手なイメージを持っていれば差別が起こりうる → 差別をしないために知識が必要
差別は知ったかぶりの形で現れる

2 章
LGBT のそれぞれ
LGBT に含まれない性的マイノリティのあり方

3 章
同性間の親密な関係は大昔から存在したが、だからといって同性愛が昔からあったと言うのは早計
同性愛という概念が生まれ、流通することで、同性間の親密な関係や性行為に対する人々の考えが変わったことを考慮していない
中世ヨーロッパのキリスト教世界
生殖に結びつかない性行為はひとくくりにソドミーと呼ばれ、宗教上の罪
19 世紀後半のドイツとイギリスでは、同性間の性行為は犯罪化
あくまで男性間の性行為が想定されており、同性愛という概念はなかった
異性愛者が有り余る性欲のために同性にも手を出す、という想定
19 世紀後半、性科学同性愛という用語と同性間性行為の医療化を主張
レズビアンの社会運動に限定すると、フェミニズム運動との関係が重要
レズビアンゲイ解放運動の中で軽視されることは少なくなかった
フェミニズムレズビアンラベンダー色の脅威として排除した歴史がある
レズビアンは、女性としての抑圧と、同性愛者としての抑圧の、二重の抑圧を受けていた
ゲイ解放運動の基本的な特徴をふまえ、社会運動との連携を目論んで生まれた学問がレズビアン/ゲイ・スタディーズ
「同性愛」 という言葉が登場し、流通したのはせいぜい 100 〜 150 年前
同性間の性行為はそれ以前からあったが、同性愛というのは性行為の有無ではなく、性愛の形である
nobuoka ほんとにそうか? という気持ち

4 章
トランスベスタイトという概念が発明された 1910 年代以降の歴史を、アメリカを中心に追いかける
精神療法で患者のジェンダーアイデンティティを身体上の性別に合わせることは不可能で、ホルモン治療性別適合手術こそがトランスセクシュアルへの正しい対処、とした
当事者の権利擁護が、医者や性科学者といった権威に主導された
可視化されたトランスセクシュアルやトランスベスタイトがコミュニティ形成し、1960 年代には抵抗の動きが活発化
トランスセクシュアルやトランスベスタイトが、同性愛の一部とみなしたりみなさなかったりする状況が続いた
当時のゲイという言葉には、広義のトランスジェンダーも含まれていたと考えるべき
トランスセクシュアル女性は 1960 年代にはコミュニティを形成していたが、トランスセクシュアル男性のコミュニティ形成は 1970 年代
トランスセクシュアル・トランスベスタイトの社会運動は 1970 年代に勢いを削がれた
フェミニズムがトランスセクシュアル女性を排除
トランスセクシュアルをフェミニズムへの裏切り行為とするもの
トランスセクシュアル女性が、望んで女性らしさを身につけようとする点
「本物の」 女性を抑圧してしまう
同性愛者がトランスセクシュアルを不可視化
古今東西のトランスセクシュアルに類似した現象を、同性愛がどこにでもある証拠として自分たちのものにした
同性愛を脱病理化するために、トランスセクシュアルの抑圧に手を貸した
同性愛が脱病理化されたのと対照的に、1980 年の DSM-III には性同一性障害が掲載
トランスセクシュアル・トランスベスタイト、性同一性障害の周縁化や病理化への抵抗の中で、1990 年代にトランスジェンダーの概念が普及
1970 年代にトランスジェンダリズムという言葉
「普通の」 男性や女性に近づくというトランスセクシュアルの主張に対し、性別二元論からの脱却を目指すという合意もあった
トランスセクシュアルやトランスベスタイトも含んだ広義のトランスジェンダーというカテゴリができたのも 1990 年代
トランスジェンダーの歴史は、自らを同性愛と差異化し、トランスジェンダーという概念に至る、という歴史

5 章
クィア・スタディーズの成立に重要な役割を果たした歴史的な動き
HIV/AIDS の問題 : 新しい発想を必要とする問題 → HIV/AIDS と性的マイノリティ
ポスト構造主義 : 新しい発想を提供する学問潮流
3 つのポイント
多様性と連帯の接続
差別への抵抗の契機の探求
アイデンティティの両義性への着目

6 章
クィア・スタディーズフェミニズムには密接な関係があることがわかる

7 章
クィア・スタディーズの基本的な視座から現実の諸問題を眺める
同性愛は病気ではないと主張してきたのと対照的に、トランスセクシュアル当事者の運動は性同一性障害概念を確立してきた
非合法の高リスクな治療を避けるという意義
治療が美容を目的とした整形手術などとは違い、生存にとって切実なものということを示す効果
性のあり方は肯定しつつ、苦痛は治療の対象とする

8 章
気になる事象をクィア・スタディーズの視座から検討するには
まずは従来の考え方で検討、批判する
その上で、クィア・スタディーズの視座で捉える

読書案内
雑誌 『現代思想』 の 2015 年 10 月号 「特集 LGBT」
1997 年 5 月臨時増刊号の 「総特集レズビアン/ゲイ・スタディーズ」
男性同性愛では 「セクシュアリティの変容」 が最重要
など
トランスジェンダー
いろいろ