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アーキテクチャ
ised@glocomでは現在、ローレンス・レッシグの使う人文的な意味合いと、経営学的な意味合いの2つのアーキテクチャの用法が混在している。
主にローレンス・レッシグが"CODE"で用いた「法、規範、市場、アーキテクチャ」という規制4分類の文脈で使われている。以下の解説を参照のこと。
>そもそものレッシグの言説戦略を簡単にたどってみよう。レッシグは『CODE』で人間を規制・制御するものとして「法、規範、市場、アーキテクチャ」の4つがあるとした。4番目のアーキテクチャは通常「建築・土台」を意味するが、「コンピュータ、ネットワーク、プログラムなどのシステム設計および設計思想」のことを指し、ここでは「環境」の意味に近い。アーキテクチャによる規制は、そもそもその規制の存在そのものが認識しにくく、不自由感を相対的に与えることなく、無意識的にコントロールに従うよう人々の振る舞いを誘導する。
設計研第1回での石橋啓一郎講演
>情報技術と社会ということを考える際に必ず参照されるようになった、レッシグの「アーキテクチャ論」について触れておきましょう。本来アーキテクチャとは建築とその構造のことを指すのですが、最近ではソフトウェアの基本構造のことも意味するようになっており、レッシグもこの後者を指してアーキテクチャと呼ぶわけです。そしてレッシグはこのアーキテクチャが、人間社会における4つの規制方法のひとつだというんですね。有名な「法、市場、規範、アーキテクチャ」の4分類です。
>アーキテクチャの特徴をレッシグはこういいます。アーキテクチャが生む秩序の特徴は、それに従う主体に対して、なにか主観化されたあるいは内面化された共通の前提(約束)を踏まえる必要がない、一種の「自動的な」規制方法であると。たとえばドアがあってカギがかかっていれば、主観的にそのドアを前にしたものがどう思おうと、物理的にそれを乗り越えることができない。ここになにか価値観は必要ない。これは最も単純なアーキテクチャの例です。そしてレッシグは、情報技術というものは、人々の無意識の行動をコントロールするアーキテクチャとしての力を実現し、情報社会化が進めば進むほど「アーキテクチャ型規制」の重要性は増してくるんだというわけです。
また東浩紀はこの「アーキテクチャ」に基づく権力を、フーコーが分析した近代社会における権力概念である「規律訓練」と対比させ、「環境管理」と呼び変えている。
経営学的な用法としては文字通り「ビジネス(市場構造・組織構造・産業構造)の枠組み、または構造」といった意味だが、多義的な意味合いを込められている。たとえば設計研第1回で村上敬亮によって紹介された、EAエンタープライズ・アーキテクチャ)もそのひとつである。(isedキーワードEA」参照のこと。)
特に、情報産業の分析から抽出されてきた「モジュール化」の理論が注目を集めてからの含意としては(isedキーワードモジュール化」参照のこと。)、
その含意としては、以下の2つがあるだろう。
1.「財・技術のモジュール性が、広く産業構造や組織構造に影響を与える」という認識
広く、強くビジネス行為を規定する基底としての、アーキテクチャ
2.「そのアーキテクチャは不可視なものではなく、モジュール性などの概念装置によって可視化・設計可能である」という認識
ビジネス主体にとって可視的なもの、設計可能なものとしての、アーキテクチャ
(またそれと並行して、企業戦略を抜本的に改革、支援する道具としての企業内・企業間情報システムについての認識も相まって、)
上記を合成して、アーキテクチャとは「設計可能な」+「基底」という意味合いだと考えればよい。
國領二郎「オープン・アーキテクチャ戦略―ネットワーク時代の協働モデル」(ダイヤモンド社、1999年)asin:4478372829
藤本隆宏 他編著「ビジネス・アーキテクチャ―製品・組織・プロセスの戦略的設計」(有斐閣、2001年)asin:4641161143
青木昌彦 他編著「モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質」(東洋経済新報社、2002年)asin:4492393706