コンテキスト
揺れ:コンテクスト
選択肢の現れかたを左右する刺激
路上で有名なアートが置かれていてもほとんどの人は見向きもしないが、美術館に置いてあると、多くの人がかけがえのない価値のものであるかのように接する。人は状況の計算に特化している。
これをネジと呼ぶか、金属と呼ぶか、画像と呼ぶか
雪山か、緑で茂る山か
この山は書き手に、緑で茂っているのか、はげているのか、私たちの選択肢の現れ方を刺激してる
バナナはおやつに入りますか
この質問が現れたタイミングはバナナが今の価格で1万円だった
今なら、ゴディバチョコ、シャインマスカットや太陽のマンゴーはおやつに入りますかになるだろうか
コンテキスト
選択肢の現れかたを左右する刺激
刺激から生じる予感
開発の文脈
私たちは一人一人コンテキストが違う
だから誤解、すれ違いが起きる
すれ違い、誤解を乗り越えることで認識が広がる
顧客は私たち同士よりも、コンテキストにギャップがある
だから製品開発と、顧客の利用には誤解とすれ違いが起きる。
>有機体に対し、次に行うべき選択の選択肢群がどれであるかを告げる出来事すべてに対する集合的総称である。
>すべての生物は環境に条件付けられた再生産装置であり、環境にその行動は埋め込まれている。
生成的コンテクストでは、コンテキストが変化する
経験と行為の連続的な時間は、認識によって区切られる。この区切られた経験と行為を操作できるようにしたものがコンテキストである。あるコンテキストが他のコンテキストと同じように扱ったり、違うと見なしたりして個々のコンテキストは識別される。
コンテキストの利用
人を特定の行動へと駆り立てる
>プラシーボ(偽薬)。これを与える医者は、患者の主観的経験が変化するような、コンテクストを設定することを図っている。
限られた刺激から適切な反応をする仕組み
コンテキストを無視することは困難
選択肢の現れ方を左右する刺激を無視するのは困難。
Q.「ぞうさん、ぞうさん、どうしてお鼻が長いのよ~」さて、鼻の長い像を考えないでください。
A1.どうしても象さんを考えてしまう
A2.「いや、私は象以外のことを考えているぞ」 「象さんを考えないでください」という刺激による、象以外のことを考えてしまっている。選択肢から象以外を選んだ結果の思考をしている。Qの前の状態で考えることが]難しい。
コンテキストの定義
戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)問題解決型サービス科学研究開発プログラム 研究開発プロジェクト 「高等教育を対象とした提供者のコンピテンシーと受給者のリテラシーの向上による共創的価値の実現方法の開発」研究開発実施終了報告書
Context Awareness
>Context is an agent’s understanding of the relationships between the elements of the agent’s environment
>コンテキストとは、エージェントの環境の要素間の関係についてのエージェントの理解である。
Hinton 2015
>Context is any information that can be used to characterize the situation of an entity
> コンテキストとは、あるエンティティの状況を特徴づけるために用いられる情報である
Perera 2013
>Any information that characterizes a situation related to the interaction between users, applications, and the surrounding environment
>ユーザー、アプリケーション、および周囲の環境間の相互作用に関連する状況を特徴づける情報
Dey 2001a
Human-Centered Design
>Certain range of technical, physical and social or organizational conditions that may affect system use
>システムの使用に影響を及ぼす可能性のある技術的、物理的、社会的、組織的な条件の特定の範囲
Maguire 2001
>The characteristics of the context (the users, tasks and environment) may be as important in determining usability as the characteristics of the product itself
>コンテクストの特性(ユーザー、タスク、環境)は、製品自体の特性と同様に、ユーザビリティを決定する上で重要である可能性があります。
Bevan 1994
組織論
>Situational opportunities and constraints that affect the occurrence and meaning of organizational behavior as well as functional relationships between variables
>組織行動の発生と意味、および変数間の機能的な関係に影響を与える状況的な機会と制約
Johns 2006
>The role of the organizational context as a major factor affecting leadership behavior and outcomes
>リーダーシップの行動と結果に影響を与える主要な要因としての組織的コンテクストの役割
Porter 2006
言語学
>言語表現または言語伝達は,テキスト(言語表示)とコンテキスト(非言語的要因)から成り立っている
河原1996
文化人類学
>異文化のコミュニケーション環境を説明するための手段として,「高コンテキスト文化」と「低コンテキスト文化」という概念が頻繁に用いられる.Hallは世界の文化を,高コンテキスト文化と低コンテキスト文化に分類している.
Hall 1976
経営学
>コンテキストとは,情報の送り手と受け手との間のコミュニケーション効果を高めるための認知プロセスにおいて,コンテンツの保有する潜在価値の発見や新たな価値の創造や既存の価値の増大に対して多大な貢献をする機能である.
原田2012
サービス研究
> Unique actors with unique reciprocal links among them
> 彼らの間でユニークな相互リンクを持つユニークなアクター
Chandler 2011
小林2014
>Thesocial context constitutes a system in which service is exchanged for service and for how value is co-created
>社会的文脈は、サービスがサービスと交換され、価値がどのように創造されるかというシステムを構成しています。
Edvardsson 2011
コンテキストのマネジメント
刺激の偏り
刺激に偏りがあると、知っていることと知らないことに偏りが編まれる。知識が偏って分散する。
コンテキストのマネジメントとは、問題空間における刺激をマネジメントすること。
なぜこのようなへ刺激への偏りが生まれるのか。
文化、制約、刺激を選り分ける知識、信頼
刺激の何をシグナルあるいはノイズとしてフィルタするか
人の存在
ある人が参加すると…
実のある話題が増える
下ネタの話題が増える
コンテキストによって行動を引き起こす
愛猫の治療費捻出のためスープラを出品 落札者からサプライズ
多重のコンテキスト
ガードレールは街路に装飾と、安全と、椅子を提供している
コンテキストが提供されることで語りが促される
重要な概念
近年の最も重要な概念はコンテキストだと私は考えている。
コンテキストとは、次に行うべき選択肢群がどれであるかを告げる刺激の総称だ。
コンテキスト(次に行うべき選択肢群がどれであるかを告げる刺激)の理解と活用が、ビジネスにおいて極めて重要だ。
理解するのに時間がかかったが、なにも複雑ではなかった。しかし非常に重要だった。生物は環境からの刺激に適応する機能の塊。外部環境に状況(温度、湿度、液体と空気、周囲の脅威)に合わせて、人も動物もうまくうごく。より複雑な生物は内部環境(空腹、筋感覚、疲労)からの刺激も活用する。
たとえば夜に「ぷ~ん」と音が聞こえてきたら、蚊取り線香をつけたりする。これがコンテキストの活用だ。
ただしコンテキストが重要なのは、単に刺激と反応の関係ではなく『自分にとって重要な刺激を何をとするか』だ。何を刺激として注目するかによって、どのように反応するかが大きく変わる。
人はコンテキストに反応する達人だけれども、コンテキストそのものの重要さに気付いていない。そのため人によってコンテキストの活用に差が生まれる。
たとえばカンファレンスや勉強会では、キーノートセッションが行われる。これは参加者にコンテキストを提供している。
質の高いプレゼンテーションが冒頭に話されると、参加者はそのコンテキストに合わせて、いつもとは異なる発想ができるようになる。
例えばScrum Fest Osaka 2020では永瀬さんがリモートでのキーノートスピーチの依頼を受けたときに、「うっとなったけれど、これは自分が成長する機会だ」という話をされた。永瀬さんの個人のコンテキストと、参加者がScrum Fest Osakaで「うっ」について話すコンテキストが提供された。
Scrum Fest Osaka 2020では「うっ」が流行語となり、スタンプも作られ、至る所で用いられた。
有名なレンガ職人の話からコンテキストを解説してみよう。
A「私はただただ毎日レンガを作るだけのつまらない毎日です」
B「私は大聖堂を作っているのです」
AもBも自分が信じる価値のコンテキストに基づいて行動しているが、異なるコンテキストに反応しながら同じ仕事をしている。
質素な建築物なら両者に差はたいして生じない。ところが高度な建築物になるとAとBの両者が作るレンガは大きく変わる。れんがに精通している人ならば、ちょっとした花壇を作るためのレンガなのか、1000年残る大聖堂を作るかで、土選び、加工の手順、品質チェックの質を調節するだろう。
コンテキストの違いによって、人の関わり方が変わり、その結果大きな違いが生まれる。コンテキストは重要だ。
このコンテキストを意識的に生成したり、質を操作する技術を、私は「コンテキスト生成技術」と呼んでいる。
コンテキストの生成に関わる文章になったモノには例えば次のモノがある。
理解と活用をまとめた『パタン・ランゲージ』。
コンテキストの質、認識の過程を描いた『禅とオートバイ修理技術』。
コンテキストは言語化されているものと、されていないものがある。
言語化もしやすいものと、しにくいものがある。
なぜ今なのかという話。
それはヒット商品作りとして不可欠になってきているから。
たとえばGMailが大きなリニューアルする。コンセプト動画を作っているがコンテキストを受け入れさせる表現が非常に優秀。
今回のリニューアルが、
・どのように人々の意見を取り込んだのか
・なぜ今回のようなリニューアルになったのか
・どのように使うことが私たちの仕事をスムーズにするのか
・どのような仕事の流れが私たちにとって必要なのか
これまで大黒柱のような中核サービスは、少しでも変更があると何百万人もの人からクレームが届く。それを認知的抵抗少なく受け入れさせるには、コンテキストをスイッチさせる必要がある。認知科学的に言えばスキーマのスイッチ。
動画は無声。コンテキストを言葉にすると文字数が溢れるので、あえて動画のみで表現した気がする。
同様のものに昔から「
ストーリーテーリング」と言われていた技法があったけれど、「ストーリーテーリング」という言葉そのものは意味を成していない。
分かる人だけが分かる言葉になっていて、なぜそれが必要なのか、どのような仕組みで効用があるのかを説明できていない。
ゲームの制作過程
ゲーム開発をゼロから現在まで見せるという、支援促進の演出。これも先日紹介したGMail大リニューアルと同じコンテキスト生成技術だなー。
180度開ける水平開きノート
コンテキストを日本語にできないか
選択肢を知らせる刺激
Stimulus to inform you of your options
関連
コンテキスト能力
>これは顔認識に限らず、ありとあらゆる認識について言える。知的であるというのは要するに、五感から入ってくる膨大なデータから本質的で抽象的な情報を抽出する能力があるということだ。高度な大きい脳を持つ動物は、単に周囲の光、音、においに反応するのではなく、知覚した世界の本質的かつ抽象的属性に反応する。そのおかげで新たな状況できわめて微妙かつ複雑な共通点や差異に気づくことができ、経験したことのないような場面でも適切な行動をとることができる。
> 本質的かつ抽象的情報が有益なのは、おそろしく複雑なさまざまな選択肢のなかから、自分の興味に合ったもの(それがどんなものであろうと)を選ぶのに役立つからだ。たとえば聞いたことのあるメロディーを認識するときに、抽象的情報が使われる。「ブラームスの子守歌」を聞けば、それがどんな楽器でどんなキーで演奏されていても、また演奏者が何度か失敗しても、「ブラームスの子守歌」だと認識できる。それが聞いたことのあるメロディーだと認識できるのは、過去にそれを聞いた具体的場面を想起できるためではない。もっと抽象的な手がかりのはずだ。私たちは常にこうした抽象的情報に基づいてさまざまなモノを認識しており、しかもそうしているという意識すらない。
フロネシスはコンテキストの技術
>アリストテレスがフロネシスの他に挙げている二種類の知識は、エピステーメー(普遍的に通用する科学的な知識)とテクネー(スキルに基づいた技術的な知識)である。価値判断を含むフロネシスと違って、エピステーメーとテクネーは客観的で知的な徳(アレテー)となる。エピステーメーは事実に関する知識であり、普遍的な原則 に基づくとともに、既存の知識に根差している。テクネーは「ものを生み出す」知識、あるいは別の言い方をするなら、自然には生じないものを生じさせようとする知識である。
> エピステーメーが「なぜを知る」知識、テクネーが「いかにを知る」知識だとすれば、フロネシスは「何をなすべきかを知る」知識といえる。フロネシスでは具体的な時と場合、社会にとってよいことや正しいことは何かが考慮される。
> たとえば、よい自動車とは何かについての普遍的なルールはないので、エピステーメーでは「よい自動車とは何か」という問いには答えられない。その問いの答えは、誰が自動車を利用するのか、その目的は何か、場所はどこかなどに左右されるだろうし、時とともに変化もするだろう。
> テクネーがよい自動車をどう作ればよいかを知ることだとしたら、フロネシスはよい自動車とは何かと、それをどう作ればよいかの両方を知ることだといえる。したがって、フロネシスがあれば、マネジャーは具体的な時や、条件や、状況において何がよいことかを判断し、その場で最善の行動を起こし、共通善に貢献することができる。
> もう一つ別の例として、あなたがレストランに入った場合のことを考えてみよう。そこではエピステーメーは、料理に使われている食材や、各食材の栄養価や、メニューに書かれている料理の値段についての知識であり、テクネーは料理の作り方や出し方、予想されるそれぞれの料理の味についての知識である。そしてフロネシスは、前日に食べたものや、体の調子や、財布の中身や、食事をともにする人や、その他その場における主観的な関心事がすべて考慮された、今、何を注文すればよいかについての知識である。
> もしメニューに、主な食材の産地は二〇一一年の東日本大震災で被害を受け、今も復興の途上にある東北地方の村であると書かれていたら、それもあなたが何を注文するかに影響を与えるだろう。フロネシスでは、その場の具体的な状況が考慮されるのに加え、社会のためになることは何かという大きな視点からの配慮もなされる。
コンテキストの構造と分類 河原修一
関連