>ネット草創期の人々は、ネットは人々の相互理解を促進し、社会を良くするだろうと期待していた。しかし、現実に私たちが手にしたのは罵倒と中傷の飛び交う荒れ果てた世界である。ネットで目にするのは、政治的に極端な意見の人たちが「ネトウヨ」(ネット右翼)や「パヨク」(左翼のネットスラング)とお互いにレッテルを貼り、攻撃を繰り返す風景ばかりで、相互理解が深まるようには見えない。ネットのなかで社会は二つの勢力に分断されてしまったかのようである。
>『ネットは社会を分断しない』(角川新書)の著者の一人、慶応大経済学部の田中辰雄教授(計量経済学)に、解説してもらった。
> 大半の人は自分と反対の意見に接し、むしろ穏健化している。ネットを使う若い人ほどこの傾向は顕著であり、時間がたつにつれてこの傾向は次第に広がっていくだろう。ネットによって自分と異なる意見と接し、相互に理解が深まっているとすれば、これはネット草創期の人々が期待していた姿である。ネット草創期の人々の希望はまだ死んでいない。