>極老の後、国歌に志て精を尽されし旨也。おのれが好む道なるが故に嘆美せるにはあらず、老てはますます壮成べし、といへる古人の心ばへに似て、朝に道を聞て夕に死すとも可也、といへる聖語にも愜へるもの歟。
>…兎角、古今をひたと読候はゞ、歌ことばにても覚え候はんやと存候に付、古今千遍読と申願を心に立テ申候而、最早百五十遍は昨日迄によみおほせ申候。今迄の積りにいたし候へば、八十四の七月に千遍の数満申候積りに御座候。
>元来八十一歳の時、古今千遍、歌万首と申ス所願を立候而、千遍読は二年かゝり相済、一万首は去年こしらへ仕舞申候。