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白河法皇が嘆いた話
>平家物語』の巻一には、白河法皇が「賀茂河の水双六の賽山法師、是ぞわが心にかなわぬもの」と嘆いたという逸話がある。
> 「賀茂河の水」とは、古来氾濫を繰り返す暴れ川として知られていた賀茂川がもたらす水害のこと。
>「双六の賽(さい)」とは、盤双六の二つのサイコロが出す「賽の目」のことである。
>「山法師」とは、勝手な理由にかこつけては日吉山王社神輿を担いで都に雪崩れ込み強訴を繰り返した比叡山延暦寺僧衆僧兵)のことである。
> 法皇がこの三つだけはどうしても思うようにならないと愚痴をこぼすぐらいだということで、やがてこれが「天下三不如意」として広く一般にも知られるようになった。今日ではこれを、白河法皇の権力はこの三つ以外のものであれば何でも思い通りになると豪語するほど絶大なものだった、という逆説的な意味に取ることが多い。しかし「賀茂河の水」は「天災」、「双六の賽」は「確率」であって、これらは誰が何をしようとしてみてもそもそも思い通りになるものではないのに対し、「山法師」は名目こそは「神意」であってもその実は「政治」に他ならなかった。既成の優遇措置を朝廷が他の寺社にも与えようとしたり、寄進された荘園国司横領しようとしたりするたびに、延暦寺は山王社の暴れ神輿を盾に、公卿百官を力で捻じ伏せていたのである。「天下三不如意」の真意は、この延暦寺に対して打つ手もなく苦悶する白河法皇の姿にある。