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世界大戦とジョン・メイナード・ケインズ
from 2021/08
世界大戦とジョン・メイナード・ケインズ
円城塔 の引用より

> 一九一七年、ケインズは母親にあてて、戦争の継続は「わたしたちがこれまで知っていた社会秩序の消滅を意味するでしょう。多少は残念な気もしないではありませんが、しかしそれほど悲しむべきことだとも思いません。金持ちがいなくなるのはむしろ快いことだし、そのほうが彼らにとってもいいでしょう。それよりも怖いのは、国全体の貧困化が予想されることです……わが国の支配者が狂っていて邪悪であると同時に無能であるがゆえに、ある特定の時代、ある種の文明が非常に近い将来に終焉するであろうことを考えると、わたしはかなりの満足を覚えるのです」と書いた。
第一次世界大戦
金持ちがいなくなるのむしろ快いことだ。それよりも怖いのは国全体の貧困化が予想されることだ
不平等の話?


> 第二次世界大戦のさなか、ジョン・メイナード・ケインズフリードリヒ・ハイエクは、ケンブリッジ大学のキングス・カレッジ・チャペルの屋根の上で、一晩中二人だけですごしたのだ。彼らの任務はじっと空をにらんで、英国の風光明媚な小都市に焼夷弾の雨を降らそうとする、ドイツの爆撃機を警戒することだった。 (中略) 夜が来るたびに、キングス・カレッジの教師や学生らは、シャベルを持って華麗なゴシック様式の礼拝堂の屋根に交代でのぼった。この礼拝堂の礎石は一四四六年にヘンリー六世によって据えられたものである。ロンドンのセント・ポール大聖堂の空襲火災警備員は、爆撃機に対抗する手段はないものの、落とされた焼夷弾を屋根に火がつく前に屋根の端から落としてしまえば、被害を最小限にとどめられることを学んでいた。そんなわけで、当時六十歳に近づいていたケインズと四十三歳だったハイエクは、石灰岩の手すりにシャベルを立てかけ座り込み、迫りつつあるドイツ機の空襲に備えた。
第二次世界大戦
大きい政府か? 小さい政府か?
ケンブリッジ大学、ケインズ60歳、ハイエク43歳