> 『国家』は十巻からなる大著です。文庫本二冊分の、しかも内容満載といった感じの、ソクラテス(c. 470 – 399 BC)を主人公とする対話篇です。古代ギリシア・ローマの昔は黙読という習慣はなくて音読していたそうですが、音読すると十二時間ほどかかります。このように長い対話というのは、もちろん、現実にはあり得ないものです。プラトン(427 –347 BC)はそれを承知で書いていると思います。これだけ長いと、それだけで全体を把握することが非常に難しくなります。それが問題のはじまりです。しかし、それは問題のはじまりでしかありません。