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ウォークス 歩くことの精神史


> アリストテレスは歩きながら哲学し、彼の弟子たちは逍遥学派と呼ばれた。公民権運動、LGBTの人権運動の活動家たちは街頭を行進し、不正と抑圧を告発した。 彼岸への祈りを込めて、聖地を目指した歩みが、世界各地で連綿と続く巡礼となった。 歴史上の出来事に、科学や文学などの文化に、なによりもわたしたち自身の自己認識に、歩くことがどのように影を落しているのか、自在な語り口でソルニットは語る。人類学、宗教、哲学、文学、芸術、政治、社会、レジャー、エコロジー、フェミニズム、アメリカ、都市へ。歩くことがもたらしたものを語った歴史的傑作。 歩きながら『人間不平等起源論』を書いたルソー。 被害妄想になりながらも街歩きだけはやめないキェルケゴール。 病と闘う知人のためにミュンヘンからパリまで歩き通したヘルツォーク。 ロマン主義的な山歩きの始祖・ワーズワース。 釈放されるとその足でベリー摘みに向かったソロー。 インク瓶付きの杖を持っていたトマス・ホッブズラッセルの部屋を動物園の虎のように歩くウィトゲンシュタイン。 刑務所のなかで空想の世界旅行をした建築家アルベルト・シュペーア。 ヒロインに決然とひとり歩きさせたジェーン・オースティン。 その小説同様に大都市ロンドン中を歩きまわったディケンズ。 故郷ベルリンを描きながらも筆はいつもパリへとさまようベンヤミン。 パリを歩くことをエロチックな体験とみなしたレチフ・ド・ラ・ブルトンヌ。 歩行を芸術にしたアーティスト、リチャード・ロング。 … 歩くことはいつだって決然とした勇気の表明であり、不安な心をなぐさめる癒しだった。

目次
第1部 思索の足取り The Pace of the Thoughts
第一章 岬をたどりながら
第二章 時速三マイルの精神
第三章 楽園を歩き出て――二足歩行の論者たち
第四章 恩寵への上り坂――巡礼について
第五章 迷宮とキャデラック――象徴への旅

第2部 庭園から原野へ From the Garden to the Wild
第六章 庭園を歩み出て
第七章 ウィリアム・ワーズワースの脚
第八章 普段着の一〇〇〇マイル――歩行の文学について
第九章 未踏の山とめぐりゆく峰
第十章 ウォーキング・クラブと大地をめぐる闘争

第3部 街角の人生 Lives of the Streets
第十一章 都市――孤独な散歩者たち
第十二章 パリ――舗道の植物採集家たち
第十三章 市民たちの街角――さわぎ、行進、革命
第十四章 夜歩く――女、性、公共空間

第4部 道の果てる先に Past the End of the Road
第十五章 シーシュポスの有酸素運動――精神の郊外化について
第十六章 歩行の造形
第十七章 ラスベガス――巡りあう道

訳者あとがき
注釈と出典