『教養の書』
『教養の書 (単行本)』
>「教養とは何か」にビシッと定義を与え、行く手を遮るものたちをバシッと指摘し、どう対処すればいいのかをブヒッと示す!
>全国のごく少数の幸福な読者のみなさん、ついに書いてしまいました。
>教養とは何か。どう身につけるか。すべて詰まった「知の教典」誕生です。
>果てしなく続くこのアブナイ道を、どう歩き始めればいいのか?
>そのための「予備知識」や「心構え」から、キミの旅路を助ける「装置」の数々、
>教養をめざし、身につけるのに役立つすべてを、手取り足取り伝授します。
>「ちくま」連載時から話題沸騰の「とびだせ教養」が大幅加筆!
>気合い入りまくりのトダヤマ節が、あなたも! あなたも! あなたも啓蒙しまくる。
>「……にもかかわらず学問は、人類が生得的な愚かさを克服してさらに幸せになるために不可欠で、かなり強力な、もしかして唯一の装置なんだ。ごめんなさい。われわれがキミたちに手渡すことのできる学問は、理想的というには程遠いものだけど、それでも貴重なものだ。だからわれわれは、キミたちを学問という理想郷に誘い出そうとしているのではない。(中略)キミたちに学問と人類の未来を託そうとしているのである。(中略)世の中をよくするという仕事は、教養に憧れ教養を目指す人々にしかできない。キミたちの健闘を祈る。」(本文より)
>序 私はいかにして心配するのをやめ、教養について書くことになったか
>第3章知識のイヤミったらしさとどうつきあうかについて、そして「豊かな知識」に何の意味があるのかについて
>第4章教養イコール「知識プラスアルファ」のアルファって何じゃ、と考えてみる
>第5章 「読書の意義は何だろう」ということを教養の観点から考え直してみる
>第6章われわれは何に向かってわれわれを教養するのか
>II教養の敵は何か、それとどう戦うべきか――現代イドラ論
>第8章教養への道は果てしなく遠い。だのになぜ歯をくいしばりキミは行くのか
>第10章 科学が発展したら、人間はかなりアホだということがわかってしまったという皮肉
>第11章 ベーコンの後継者は誰か。彼らからわれわれが学ぶべきことは何か
>第12章 どうやって、居心地のいい洞窟から抜け出すか
>第13章 批判的思考(クリティカル・シンキング)って流行ってるよね。でも、何のためにそれが必要なんだろう
>第14章 最後のイドラは「学問」だって。だったらどうすりゃいい?
>第15章 大学に入っても、大人になっても語彙を増やすべし
>第17章 種族のイドラと洞窟のイドラに抵抗するための具体策
>第18章 市場のイドラを再考する――インターネットとの部分的つきあい方
>第19章 劇場のイドラに抗うための「リサーチ・リテラシー」
>第20章 論理的思考は大切だと言うけれど、論理的思考って何かを誰も教えてくれない……
>第23章 大学は天国じゃないんだ。かといって地獄でもない
>第24章 無駄な勉強をしたくないひと、何かの手段として学ぶひとはうまく学べない
>【定義】われわれにとっての教養とは、「社会の担い手であることを自覚し、公共圏における議論を通じて、未来へ向けて社会を改善し存続させようとする存在」であるために必要な素養・能力(市民的器量)であり、また、己に「規矩」を課すことによってそうした素養・能力を持つ人格へと自己形成するための過程も意味する。
> ここでの素養・能力には、以下のものが含まれる。①大きな座標系に位置づけられ、互いに関連づけられた豊かな知識。さりとて既存の知識を絶対視はしない健全な懐疑。②より大きな価値基準に照らして自分を相対化し、必要があれば自分の意見を変えることを厭わない闊達さ。公共圏と私生活圏のバランスをとる柔軟性。③答えの見つからない状態に対する耐性。見通しのきかない中でも、少しでもよい方向に社会を変化させることができると信じ、その方向に向かって①②を用いて努力し続けるしたたかな楽天生徒コミットメント。
教養の書 (単行本) 戸田山 和久
14章では、「学問」がもたらす知性への弊害について。集団思考による愚策の決定、論文至上主義の評価による論文数の加速と限界突破などについて。これで第二部は終了。
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学問は、巨人の肩に乗ることで発展してきたが、情報商材は巨人のスネをかじることで、徐々に衰退していく。
第三部では、実践的ノウハウについて。15章では継続的に語彙を増やすことの重要性。著者はいまでも単語帳(ただし英語だけに限らない)を作っているとのこと。16章では歴史の勉強の仕方。年表を作る話は参考になった。よし、やってみよう。
17章では、私たちが陥りやすいバイアスに対抗するための方策。具体的には、反証思考を身に着けること、統計的思考を学ぶこと、相関と因果を吟味することなど。
18章はインターネットについて。特にウィキペディアとAmazonなどのレビューとの付き合い方について。ウィキペディアは複数言語でクロスチェックしたら有効性がます、という指摘はたしかに。
19章は、リサーチ・リテラシーについて。いかに調査するか、ではなく、調査結果をいかに解釈するかについての能力のこと。よくあるグラフの見せ方などに騙されないための考え方。
『教養の書』 (戸田山 和久)
20章は、論理的思考について。クリティカルシンキングの解説というよりは、論理学寄り。演繹と帰納法について解説されているが、よくある説明とは違った視点がとられているのが面白かった。
21章は、ライティングの秘訣。文章を「目指す相手に、目的を果たすこと」のための手段として捉えて、その上で「よい文章」を書くための基本的なメソッドを紹介する。目指すのはプレーンな文体──読みやすく、レトリックが抑制されている文体。
22章は、批判のやり方。アンチシュロギスモスとエンスタシスについて。特にエンスタシスの具体的にやり方を紹介。「うちのオカン型ツッコミ」には笑った。
23章は、大学の「使い方」について。一般的な大学に対する思い込みを相対化した上で、うまい利用方法を提案している。「野生の研究者」(≒在野研究者)についても少し言及がある。
ラストの24章は勉強とそれにつきまとう無駄について。「無駄な勉強をしたくないと思うと、かえって学びそこねる」。学ぶまで、それが学ぶに値するかを判断することは難しいので、意義の感じること、興味を惹かれること、そして偶然に身を任せることが大切なのではないか。