9839_心地よさは、車いすの使用を想定しておくことから
『この中にはパンが一切れ入っています。何かのお役に立つでしょう』ドイツ軍につかまったルーマニア人が、貨車から脱走する際、あるユダヤ教指導者から、ハンカチに包まれた「一切れのパン」をわたされました... 。ここに登場する「一切れのパン」。「バリアフリー住宅」に例えるのなら、『車いすの使用を想定しておくこと』なのだと思うのです。
119_心地よさは、車いすの使用を想定しておくことから
『この中にはパンが一切れ入っています。何かのお役に立つでしょう』ドイツ軍につかまったルーマニア人が、貨車から脱走する際、あるユダヤ教指導者から、ハンカチに包まれた「一切れのパン」をわたされました... 。ここに登場する「一切れのパン」。「バリアフリー住宅」に例えるのなら、『車いすの使用を想定しておくこと』なのだと思うのです。
中学の教科書に載っていた、F・ムンテヤーヌの短編小説『一切れのパン』。今でも覚えている方は、多いのではないでしょうか?
>『パン一切れ持っていると思うと、ずっと我慢強くなるもんです... 』
将来、必要になったとき、いつでも車いすを使い始められるように、
このお住まいには様々な、隠れた配慮を盛り込みました。
玄関ポーチ
玄関ポーチでは、歩けるうちは手すりの付いた階段を昇降します。
車いすを使うようになったときは、この玄関ポーチの段差を、
「段差リフト」で昇降します。
階段の左脇に、「段差リフト」の設置スペースを確保してあります。
玄関室
玄関室では、上がり框の段差が小さくなるようにしています。
玄関室から直進できる廊下は、車いすでの行き来しやすいのですが、
家の奥まで、丸見えになってしまいます。訪問客があった時は、
玄関室と廊下を、引き戸で間仕切ることができます。
デッキ
庭に回ればデッキがあって、寝室やLDKの掃き出し窓があります。
デッキに「段差リフト」を設置して、この掃き出し窓から出入りする、
という選択肢もあります。
LDKと1階の寝室
LDKと寝室は、隣りどうしになっていて、引き分け戸を開けると、
ワンルームになります。はき出し窓からはデッキに出られます。
ゆったりとしたLDKも寝室も、車いすで行き来しやすいです。
ベッドやソファーで、ゆったりとするためには、トイレとのつながり
が大切です。トイレは、寝室やLDKから、すぐに行ける位置です。
水回り
寝室のベッドからは、すぐにトイレ、洗面室へと繋がっています。
トイレと洗面室には、車いすでぐるりと回転できる広さがあります。
洗面化粧台は、当面、いす座で使いやすいことを優先しました。
下部の扉は取り外すことができ、車いすでも使いやすくなります。
洗い場にベンチ付きのユニットバスを選び、立った姿勢からではなく、
いったんベンチに腰を掛けてから、安全に浴槽に入ることができます。
洗い場は、車いすで回転する広さはありませんが、幅の広い引き戸で、
洗面室と一体にすることにより、回転することができます。
階段室
階段は、勾配が緩いだけではなく、踊り場を2箇所つくり、
ゆっくりと、体にできるだけ負担を掛けずに2階に上がれます。
この階段は体の調子がいい時の、リハビリのメニューになります。
窓から遠くの景色が眺められ、楽しいリハビリになりそうです。
1階の寝室の上に、2階の寝室
どんなに階段を緩やかにしたところで、車いすでは昇降できません。
1階と2階に、同じ大きさの寝室があります。
上の画像は1階の寝室で、下の画像はその寝室の真上にある、
2階の寝室です。その日の体調に合わせて、使い分けているそうです。
正面左側のクローゼットの引き違い扉まで、同じ位置にあります。
このクローゼットの床は、簡単に壊せるようなっていて、
将来、エレベーターを設置することを計画しているのです。
中学の教科書に載っていた、短編小説『一切れのパン』。
ルーマニア人作家の F・ムンテヤーヌ(Francisc Munteanu)。
日本以外では、忘れられてしまった作品のようです。
>『パン一切れ持っていると思うと、ずっと我慢強くなるもんです... 』
『一切れのパン』は、下記のリンクで読めます。