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Open problems toward realization of Nameraka (Smooth) Society

FtCTokyo Day2 2024-07-25 11:40-12:00

o1 Pro
全体概要
SmartNewsの創業者であり研究者である鈴木健氏が「複数の社会システムをアップデートし、滑らかな社会(namaca society)を実現するための思想」を語った講演。核となるポイントは、「複雑な社会を複雑なまま維持しながら、どうやって私たちが生きるか」という問題設定にあり、そこからお金・民主主義・契約・軍事など社会基盤を300年ほどかけて再設計する必要性を説いている。

主な論点とキーワード
複雑性を維持する社会 “namaca (滑らか) society”
フラット社会」(差異が乏しい)でもなく「分断社会」(二極化で対立)でもない、より多様性を内包した“滑らかな社会”の構想。
人が「アメリカ人でもあり日本人でもある」ような多元的なアイデンティティを同時に持つ世界を目指す。
かつての多数派 vs. 少数派という図式が崩れ、誰もが複数の立場を持つため、一人ひとりが結果的に“少数派(マイノリティ)”になる。

壁(境界)と敵味方区別の問題
社会の分断は“壁”を作り資源を囲い込むことが原因。細胞膜が外部と内部を分けるように、人間社会でも組織や国家が外部を「敵」、内部を「味方」と見なす傾向がある。
この構造は生物学的な細胞膜(自己保存)に由来するが、複雑性を維持するには境界を更新・透過的にする手立てが必要。
生物学者フランシスコ・ヴァレラオートポイエーシス理論

通貨システムPICSY
Google PageRank的な行列演算を使って、社会的貢献度が循環的に評価される通貨概念。
“良い医者”が儲かりにくい通常の貨幣システムを変えることを狙い、“投資(支払い)=価値の再分配”と捉えて、社会のつながり全体を循環させる。

Dividual Democracy(分人的民主主義)
一人一票を単に等分して投じるのではなく、「人の中にも複数の意見(複数エージェント)がある」前提で、票を細分化し複数先へ委任したり、再帰的に委任したりできる。
政党という大きな塊を作らず、多様な意見を保持したまま政策を決める仕組み。
哲学者ジル・ドゥルーズの「個人(individual)」から「分人(dividual)」への視点。
個人を単一の固まりではなく、「分割・流動化できる主体」(複数のエージェントを内包する)と捉える。
鈴木健氏が提案する「Dividual Democracy」は、この「分人」概念に近い。

社会契約の再構築 (Cyberlang / Smart Contract)
合意文書を機械的に読み書き可能な形式で作り、「社会契約を随時アップデート」できるようにする発想。
従来のように革命(暴力や大混乱)を伴わず、契約を結び直すことでガバメントを入れ替える余地を残す。
活版印刷(グーテンベルクの発明)から社会契約論やフランス革命など社会システム大変革まで、約300年かかった。
情報技術(印刷)の普及→社会制度(民主主義や契約概念)のアップデートまで大きな時間差がある。
現在の情報革命(インターネット)も、同様に数百年規模で社会制度を変化させると考えられる。
Cyberlang(サイバーラング)は、鈴木健氏が2005年頃に提案したアイデアで、「社会契約を機械が読めるプログラム可能な形式(XMLなど)で書き下し、人間にもわかるようにする」仕組みのことです。
これによって、現行の法律や契約のような社会制度を、ソフトウェアのアップデートをするように随時書き換え・実行できるようにし、革命などの大混乱を伴わずに社会契約そのものを動的に変更していこう、という発想に基づきます。
狙い: 人間の意思決定を細かなルールとしてコード化し、自動実行可能な状態で管理することで、変化に柔軟な社会契約を可能にする。
スマートコントラクトとの類似: ブロックチェーン技術で使われる「スマートコントラクト」の考え方に近く、契約内容をプログラム化し、自動執行する点が共通している。

国防の新しい捉え方
国防(軍事)は「公共財」とされがちだが、実際は“会員制クラブ財”に近く、敵国民には提供されない。
真に公共財に変えられるなら、境界を敵味方で分ける構造から脱却し得るが、それには長い時間と新しい設計が必要。

まとめ
この講演では、社会システムを細胞や生命進化になぞらえ、「境界(膜)」や「中枢(核)」が再帰的に出現するメカニズムが人間社会の分断や排他を生んできたと指摘。
しかし情報技術などを活用すれば、通貨システム・民主主義・社会契約を作り直し、複雑性を減らさずに共存できる道を探れるのではないか、と提案している。300年規模の長期的視点で、今の政治や経済システムをアップデートすべきというメッセージが核心である。


>nishio 後数分で鈴木健さんのPICSYトークが始まる
>

> 「世界は関係性のネットワークである」
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関連

>hayashiyus Funding the Commons conference in Tokyo Summer 2024
> @FundingCommons
> 濱田太陽さん,小池百合子都知事,平将明議員,鈴木健氏,オードリー・タン氏
>

>miyabi_00008 #FtCTokyo マルコフブランケット(膜)は社会契約なしに、集合的予測符合化によってボトムアップに構成される。しかしその時、〈敵〉も同時に生じる。中と外の区分け、領域国民国家、個人、こうしたmore is differentを〈なめらか〉にする。

>nishio #FtCTokyo 鈴木健「一票を分割するDivicracyによって政党や利害団体は仮想化されダイナミックになる。一人の人の中に複数の考えがある。一票を一つの候補にしか投票できないのでは自分の中の少数派を無視することになる」
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>tokoroten いまの一人一票の選挙は、自分の心の中のマイノリティを殺すイベントなんだな
>tokoroten デジタル民主主義は、心の中のマイノリティを殺さない政治、と言い換えるのが良さそう

>heat_1nt こちらの健さんの発表資料の作成+英訳
> 担当させて頂きました
> 皆様ご清聴頂きありがとうございました

>kensuzuki 木曜は、Funding the Commons Tokyoで「なめらかな社会とその敵」について講演しました。はやく本が読みたいという海外の参加者たちからのフィードバックもあり、頑張らねば。素晴らしいイベントを開催してくれた @HiroTHamadaJP @0xtkgshn @MorleySheen @hal_sk ありがとう!
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