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Civic Community Fund and Ecosystem, Korea & Japan
登壇者
Har Seki (Code for Japan)
Wan Seob Lim(PSC/Ethereum Foundation/Korea)
Vienna Ly(ETH Kuala Lumpur/マレーシア)
概要
アジア(日本・韓国・マレーシア)を中心とした「Civic Tech」や「パブリックグッズ(公共財)」の取り組み事例、コミュニティ運営、資金循環モデルについてのパネルディスカッション。
Code for Japan が誕生した背景(2011年の東日本大震災)や、学生を海外ハッカソンに送るための仕組み、国や自治体との協働事例などが紹介された。
地域や文化ごとに異なる課題や解決策を共有し合うことで、持続可能なポジティブサムのコミュニティを形成していく意義が強調された。

1. 登壇者のバックグラウンド
Hal Seki(Code for Japan)
2011年の震災を機に「公共に役立つデジタルサービスを作ろう」と Code for Japan を創設。
政府・自治体向けオープンソースソフトウェアの開発や、月例ハッカソンで市民のプロジェクトを支援。
COVID-19対策ダッシュボードのように、行政にオープンソースを導入・公開する事例を推進。
Wan So Bim(PSC/Ethereum Foundation/Korea)
本業は暗号技術の研究者だが、趣味で各種カンファレンス開催やコミュニティ構築に携わる。
学生を海外のハッカソンに参加させ、入賞した場合は賞金をコミュニティのファンドに100%還元する仕組みを実験。
オープンソース文化の「まず与える」「ポジティブサム」という考え方に共感。韓国特有の激しい競争社会を変える試みとしても捉えている。
Vienna Ly(ETH Kuala Lumpur/マレーシア)
マレーシアでの Web3 や NFT アーティストコミュニティ、自治体との連携の事例を紹介。
過去に政権批判で逮捕者が出るなど厳しい統制もあったが、現在はデジタル庁や大臣らと同じ場にコミュニティを呼び、対話の機会を作る試みを進めている。

2. 具体的事例・取り組み
Code for Japan の成果
COVID-19ダッシュボードを東京自治体と協力して構築し、ソースコードを公開。多くの開発者が貢献し、他地域へのフォーク(再利用)も進んだ。
オープンソース導入が行政に「市民参加のメリット」を実感させる好例になった。
韓国の学生支援ファンド
ハッカソン参加費や渡航費を支援するためにファンドを設置。出資者から寄付を受けて運用し、受け取った学生が賞金獲得したら元のファンドに全額を戻す。
台湾コミュニティでも同様のファンド設立が進むなど、アジアで横展開されている。
マレーシアにおける公共・民間・市民コミュニティの融合
デジタル大臣や関連省庁を Web3・NFT アーティストコミュニティと同じカンファレンスに招き、一緒に議論する場を作っている。
市民社会、政府、アーティストなど多様な立場を一同に集め、対話と政策提言を行う新しい取り組み。

3. 課題と今後の展望
持続可能性・ファンディング
多くの Civic Tech はボランティア頼みで、アイデアや試作品は多いが、実際のサービスとして根づかせるには資金が必要。
Code for Japan は基金(エンダウメント)を作り、利息収益でコミュニティを支援する仕組みを検討中。
関連: DRAGON FUND
文化的側面の醸成
まず与える」「ポジティブサム」の文化が多様な場所に伝播すると、競争社会を緩和し、協力的なコミュニティが生まれる。
お互いの成功事例をオープンソースのように“フォーク”し、各国・地域の文脈に合わせて再構築することで、より大きなインパクトが見込める。
社会・政治との接点
国や自治体、コミュニティそれぞれの歴史や背景が異なり、ガバナンスや規制も違う。
それゆえに、単純に欧米の仕組みを持ち込むだけではなく、各国・各地域に適した手法を模索する必要がある。

4. まとめ
公共財(パブリックグッズ)のための資金調達やオープンソース文化の推進は、アジアでも着実に広がっている。
競争的な社会構造の中で「与える」文化を育むことは挑戦だが、Civic Tech はその具体的なモデルケースとなり得る。
行政・企業・市民が協働できる仕組みを作り、ローカル課題に合った方法を共有・発展させることが、長期的なインパクトに繋がる。