Accepting Goodhart’s Law in Academia
「測定が目標化すると、その測定は本来の指標として機能しなくなる」という法則。研究者が“論文数”“引用数”などの指標を追求しすぎると、質より量を重視したり、不正に走る可能性が高まる。
研究資金の無駄
論文の大半が再現性を欠いたり(再現できない研究が50%超)、数多くの研究費が「当てにならない結果」に費やされている現状を指す。成果を出すどころか、そもそもネガティブ結果は公開されないため、資金の浪費が深刻。
出版と科学の質
引用数やインパクトファクターなど従来の評価軸では、研究の本質的な質が測りにくい。一部の研究者は“高インパクトジャーナル”狙いで内容より論文数やインパクトを優先したり、好都合な結果だけ報告する傾向がある。
バカにされる/少数しか認めない構造
「一流ジャーナルに載らなければ研究者として認められない」「投稿数が少ないと評価されない」といった風潮があり、オリジナリティ重視の研究や、時間のかかる慎重な研究が軽視されがち。
H-index
研究者の生産性を表す代表的な指標。発表論文数と被引用数を組み合わせた数値だが、これも“数値上げ”に注力する行動(論文量産や自家引用など)を助長し、本来の質評価とは乖離しがち。
ネガティブ結果を共有しない問題
再現性のある研究を進めるにはネガティブ(思惑と異なる)結果の共有も重要だが、引用されにくいしキャリアにも結びつかないため、共有が敬遠される。結果として再現性が低下し、研究効率が下がる。
Peter Higgsの例
ヒッグス粒子で知られるピーター・ヒッグスは数年おきに大きなインパクトを出すタイプだったが、今の「頻繁に論文を出してなんぼ」という競争環境では評価されにくいと本人が述べている。
Redditのように研究成果や論文を共有し、アップボートの代わりにトークンを付与する場。投稿や査読(ピアレビュー)に応じて独自トークン($RSC)が報酬として与えられる。
ResearchHubでは、事前登録(preregistration)やオープンデータなど、研究の質向上に繋がる行動にボーナスがつく設計を導入している。たとえば事前登録論文は報酬が2倍になる、といった具合。
DAOによる投票
どんな研究行動にどれだけ報酬を与えるかを、コミュニティ(DAO)で投票して決定する。運営が一方的にルールを決めるのではなく、トークン保有者たちが議論して「どんな研究が望ましいか」合意形成を図る。
$RSCのリワード
論文投稿や査読、オープンアクセスやデータ公開への貢献などに応じて付与されるトークン。これを獲得することで研究者が経済的なメリットを得られるようにする仕組み。
トークンリワードに興味がない人の話
既に十分実績のある研究者や、必ずしも金銭的報酬が必要ない層は、トークン報酬に消極的な面もある。しかし若手やポスドク層には、研究のオープン化のインセンティブとして大きく働く可能性がある。
実際は、トークンよりも“オープンな科学の向上”という理念に共感して参加する人も少なくない。そこに、DAOで投票し合うコミュニティ的価値も加わり、報酬以外のモチベーションを生む例もある。
まとめ
学術界では、Goodhartの法則により従来の引用数ベースの評価指標が目的化され、研究の質を害している。ResearchHubでは、トークン報酬とDAO投票による「理想的な研究行動の設定」が試みられている。具体的にはオープンアクセス・事前登録・オープンデータなど、再現性や透明性を高める行動を奨励し、トークン($RSC)を付与する仕組みだ。これにより、若手研究者や広く研究者コミュニティを巻き込みながら、新しい形の研究インセンティブ体系を構築しようとしている。