小さく始める
以下に、関さん（「Code for Japan」の方）の質問「どうやって（政府が求めている）良い分野を見つけるか？」に対して、Audrey Tang 氏が答えた部分の原文（話し言葉を一部整形）と、それに対する解説を示します。
Audrey Tang 氏の回答（英語原文）
>“I think ultimately very small-scale experiments have its place because for the government that is not much to lose anyway. And so if you start many such smaller experiments and get people into a mood of experimenting, most governments should be okay. As I said, we only started with, like, 10K USD with the Ethereum Foundation’s help.
>... Then each government agency or department also has their relative priorities compared to other departments, or other cities. So, in a sense, if trying out a new mechanism is an effective way to uplift their relative priority compared to others, that by itself increases the legitimacy of the decision maker of that department or that jurisdiction.
>So I don’t think it’s necessarily just because it’s a good mechanism for decision making, it’s also a popularity and legitimacy mechanism. So it’s important to frame it this way: ‘You can let these many people know about your priority, these many people now know about the digital public infrastructure, these many people now know the importance of this SDG,’ and then you can uplift that voice. Compared to the money they might spend on an advertisement agency, these small experiments are nothing, right? And so it’s always easier to frame it in this way.”
解説
小規模実験の重要性
Audrey Tang 氏は、政府側がリスクをあまり感じずに済む“少額・小規模”な実験から始めることを提案しています。たとえば台湾では、イーサリアム財団からの10,000ドル程度の小さな補助をきっかけにクアドラティック・ファンディングをスタートしました。
小規模であれば政府内での承認を得やすく、「まずやってみる」心理的ハードルが下がる点が大きなメリットです。
政府部門内の優先順位づけ（レピュテーション）
行政機関はそれぞれ別の課題や予算を抱えていますが、新しい仕組みを採用して成果を上げると、その部門の「優先順位」や「正当性（legitimacy）」が高まります。
つまり、「この小規模実験がうまくいけば、あなた（担当部署や首長）のアピール材料になる」という観点から政府を説得すると効果的だということです。
人気と正当性を高める仕組みとしての役割
Audrey Tang 氏はクアドラティック・ファンディングなどを「単に意思決定を効率化するメカニズム」に留まらず、「人気（popularity）や正当性（legitimacy）を高める手段」としても位置づけています。
たとえば、SDGs推進やデジタル・インフラの重要性を周知する宣伝効果にもなり、広告代理店に大きな費用をかけるよりはるかに安価で、かつ直接的に市民参加を促せるメリットがあります。
“小規模→成功実績→広がり”という流れ
小さな実験で「成功事例」を作り、成果をわかりやすく示すことで、行政内部の他部署や他自治体も同じ手法を試してみようと興味を持ちます。
この“拡張性”と“再現性”を強調することで、より大きな予算や新規事業につなげていく道筋がつくれます。
まとめ
政府にとっての“良い分野”や“興味を持ってくれる分野”を探すには、まずは小規模な実験でリスクを減らし、成功実績を積み上げることが効果的。
その際、「新しい仕組みを使えば、その部署の評判や優先度が上がる」といった“レピュテーション向上”の観点でアプローチするのがポイントです。
さらに、SDGsやデジタル化といった社会的に注目度の高いテーマと結びつけることで、政府が積極的に乗りやすい形へと持っていくことができる、というのがAudrey Tang 氏の示唆です。