脳科学わからんに入門する本 vol.1 - 参考資料(C105)
随時更新していきます
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がついてる文章は筆者の主観が強く混じっています
本文の補足情報
1. 元ネタはこちらのツイート
直感的に分かりやすかった引用ツイート:
縁取りによって、見える場所ごとに異なる解釈が生まれる
2. 元ネタはタイポグリセミア
単語を構成する文字順をちょっと並べ替えても意外と読めてしまう現象
以下のニコニコ百科事典の記事が秀逸なので説明はこちらに任せる
3. 元ネタはKarl Fristonによる以下のレビュー論文
a unified brain theoryの部分が日本語だと脳の大統一理論と訳されたりする
大雑把にいうと、自由エネルギーというたった一つの変数の最小化を起点に、脳科学のあらゆる現象を説明できるのではないか?という主張
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統一理論と言いつつ説明がつかないことも多いため、個人的には懐疑的
詳しくはDark Room Problemで検索
4. 脳の後ろ側が活動することで、物体が見えるようになる?
タスクと脳活動を単純に結びつけるのは危険。
例えば、PCで重い処理を行うときにCPUファンが強く活動したら、CPUファンが強く活動することで重い処理を行っている…と考えて良いのだろうか?
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この辺の踏み入った議論は以下の論文が面白い
ちなみに、視覚入力が脳の後ろ(視覚野)ではなく、横(聴覚野)に流れるように配線を繋ぎ変えると、視覚野のような応答が"聴覚野"で見られるようになる。
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位置そのものが処理に重要であるわけではなさそう
5.
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知識はシェアしよう
理論神経科学であれば以下の講義動画がオススメ
6. 脳では神経細胞以外も情報処理に関与している
脳といえば神経細胞(ニューロン)という説明が主流だが、アストロサイトとよばれる細胞なども神経細胞と接続して情報処理を行っていることが知られている
例えば、
Mu, Y., Bennett, D. V., Rubinov, M., Narayan, S., Yang, C. T., Tanimoto, M., ... & Ahrens, M. B. (2019). Glia accumulate evidence that actions are futile and suppress unsuccessful behavior. Cell, 178(1), 27-43.
7. 神経細胞間のシグナル伝達はいろいろある
シナプスにおける化学物質を介したシグナル伝達が一般的
一方で電気信号が他の細胞に直接伝わることもある:
ギャップ結合
シナプスを介さない伝達も知られている:
Ephaptic signaling: 隣接する神経線維の電場を介したシグナル伝達
Volume transmission: 化学物質をばら撒くことによるシグナル伝達
8. 樹状突起統合(Dendritic integration)
教科書では省略されがちだが、神経細胞は実に多様な形状をしている
そしてこの形によって計算が行われる
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次回のメインテーマ予定
9. 大脳皮質が知覚に重要であることはおそらく間違いないが、大脳皮質は他の領域(特に視床)とも強く結合しており、これらの重要性についても研究されている
10. 大脳皮質の機能局在については議論が多い
実際、視覚野と呼ばれる領域でも運動情報や聴覚情報を持っていることが知られている。
11. マウスの一次視覚野; V1における実験
私が知る限り、人ではここまで詳細な研究は行われていないが、
描かれていないのに見える線(illusory contours)の有無によって、
似ている画像であっても脳活動が大きく異なることは知られている。
12. 随伴発射(corollary discharge; CD)
随伴発射の詳細は以下のレビューがおすすめ
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ハエの図もこちらから使わせていただきました
同じ方が日本語で解説を書かれているのでおすすめ
13. 大乱闘スマッシュブラザーズのステージやりのはしらでは、伝説のポケモンパルキアが画面を左右を反転させることで、運動による予測と実際の感覚入力の不一致を引き起こす。
14. 機械学習は脳を模倣〜という文脈で、都合よく脳を順行的に扱う人は未だ多い
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これはおそらくパーセプトロンが原因なのだが、提案者であるRosenblattの著書を読んでみると彼は回帰性結合にも言及していることがわかる
15. LGN→V1の順行的な経路よりV2→V1の回帰的な経路の方が10倍多い
16. 脳の予測処理
この後に説明する予測符号化や自由エネルギー原理等の様々な脳の予測的な処理についての理論を包括する、脳の情報処理フレームワークの1つ
17. 2つの時間スケールのうち、早い方を予測(Prediction)、遅い方を学習(learning)と呼ぶ研究者もいる
それぞれ神経活動のダイナミクス、シナプス可塑性で実現される
18. ヘブの学習則(Hebbian Learning)
神経細胞間の接続が前後の神経細胞の活動によって決まる
Δw_{ij}=\eta r_i r_j
r_i:プレシナプスニューロンiの発火頻度
r_j:ポストシナプスニューロンjの発火頻度
w_{ij}:ニューロンiからjへの結合の強さ
満たすべき細かい条件等は以下を参照:
より詳細に、シナプス前後の神経細胞の発火タイミングが重要という説もある
スパイクタイミング依存性可塑性(Spike Timing-Dependent Plasticity; STDP)
シナプスの前後以外の要素が接続の強さに影響することも知られている
Hebbian plasticity by third factors
例えば、ドーパミンによって接続の更新が調節される
19. 脳における誤差逆伝播
以前書いたものがあるのでこちらを参照:
20. 予測符号化と自由エネルギー原理
どちらも予測処理を数学的に定式化している。
予測符号化がやっていることは基本的にMAP推定であるの対し、自由エネルギー原理では不確実性の情報まで含むフルのベイズ推定(近似)
これ以降の説明は基本的に以下の論文に基づいている
21.自由エネルギー原理の生物学的な実験での検証
予測処理全般の生物学的証拠も未だ限定的である
22. 推論として知覚(perception as Inference)の拡張
有名なのは以下の2つ
能動的推論 (Active Inference; AI)
解説書が英語版は無料で配られてる
日本語訳も出てる(無料ではない)
能動的予測符号化 (Active Predictive Coding; APC)
BRAINSTORM -OR- GREEN NEEDLE
おすすめ図書
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神経科学者 藤田一郎氏による視覚情報処理の解説書
知覚について基礎から解説しているのでまずはこれから読もう
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世界の見え方は個人に依るという話が事例たっぷりで解説されてる
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知覚は視覚ばかり注目されがちだが、この本は身体に着目している
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哲学者Andy Clarkによる脳の予測処理の解説本
この本に影響されてこの同人誌を書いた
一般層向けに優しい英語で書かれているので読みやすい