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第9回 弁別オペラント条件づけ

1. オペラント条件づけと弁別オペラント条件づけ
オペラント条件づけの基本であるという記述が散見される
厳密には3項随伴性は弁別オペラント条件づけの基本形であると言うべき

オペラント条件づけと同様に反応率の変化が観察されることが成立の必須要件となる

スキナー箱の実験で検討
レバーがある壁に照明光(light)や音提示用のスピーカーが備えられているものとする
被検体のラットにおいてはレバー押しのオペラント条件づけは確立されている
介入条件のときだけ反応率が高くなることが観察された場合に、弁別オペラント条件づけが成立したとみなすことができる
ベースライン条件(以下の操作でレバー押し反応の反応率を観察)
照明光提示あり:レバー押し反応あり:餌粒提示なし
照明光提示なし:レバー押し反応あり:餌粒提示なし
介入条件
照明光提示あり:レバー押し反応あり:餌粒提示あり
予想:餌粒を与えるので、レバー押し反応の反応率が増加する
照明光提示なし:レバー押し反応あり:餌粒提示なし
ベースライン条件
照明光提示あり:レバー押し反応あり:餌粒提示なし
予想:レバー押しの反応率が下がっていき、最初と同程度となる
照明光提示なし:レバー押し反応あり:餌粒提示なし
ここでは照明光提示
ここではレバー押し反応
弁別刺激はその弁別オペラントを刺激性制御(stimulus control)している状態にあると言われる

2. 強化スケジュール

自発されたオペラント反応に強化子を随伴させる操作の規則のこと
無数にあると言える

強化子が反応に依存しないで随伴されるスケジュール
時間スケジュール: オペラント反応とは独立に一定の基準の時間で強化子を随伴させる
一定の時間間隔
オペラントとは独立した、偶然の強化によって形成・維持される迷信行動(superstitious behavior)が観察される
平均値がスケジュール値になるようにランダムな時間を強化する回数分設定しておく方法
強化子を提示しないスケジュール
消去抵抗(resistance to extinction)に強化スケジュールの種類によって特徴がある
反応が減少していくパターン

強化子が反応に依存して随伴されるスケジュール
時隔スケジュール(間隔スケジュール, interval schedule): 1つ前の強化子の提示から一定の時間間隔をおいて最初のオペラント反応に強化子を随伴させる
一定の時間間隔を固定
スキャロップ(scallop)と呼ばれる反応パターンが見られる
強化子が提示される予定時刻に向けて反応率が次第に増加していく
動物の計時行動(timing behavior)の存在を示唆
一定の時間間隔を変動させる
時間間隔が変動するためスキャロップは現れず、安定した高い反応率が持続するパターンが観察される
比率スケジュール(ratio schedule): 強化子の提示後に、一定の回数見られたオペラント反応に強化子を随伴させる
一定の回数を固定
強化後休止(PRP)が見られる
強化子提示後にオペラント反応の休止が見られ、その後、ある一定の反応率で反応が増加して次の強化子が提示されるという反応パターン
一定の回数を変動させる
このスケジュールでもPRPは観察されるが、固定比率スケジュールに比較すると短い
強化率の等しい変動時隔スケジュール変動比率スケジュールを比べると、変動比率スケジュールの方が反応率が高いことも知られる

厳密には固定fixedと変動variable以外にもランダム(random)という性質によって区別することができる
実際には変動と区別することが難しい

3. 3項随伴性

という3つの項目がこの順序で連合していくこと
弱化子の場合でも同じ議論は成立する
弁別刺激:弁別オペラントの連合
刺激と反応
弁別オペラント:強化子の連合
反応と刺激
オペラント条件づけを制御するために、オペラントという反応に先行する刺激と、後続する刺激という環境要因を分析しようということ

スキナー箱の操作化と3項随伴性との関連について眞邉, 2019

4. 反応連鎖について


同様に、順序のある一連の行動がある
3項随伴性の考え方に従う解釈をすることが容易

反応連鎖(response chain)をメイザー(2008)のあげている例で検討
ラットが梯子で台に上り、ロープを引っ張ってドアを開け、トンネルをくぐり、別の台から滑り台でおり、レバーまで走って、レバーを押して、やっと「餌粒」を得るという状況
最初の「階段」
弁別刺激
「台を上る」というオペラント反応が生起し、
その結果「台」や「ロープ」という条件強化子が得られる
同時に次の行動の弁別刺激となる
連鎖によって一連の複雑な行動が見られたということ

エイザーは反応連鎖の明快な例としてサーカスで動物が行う一連の行動をあげている
どのように動物を訓練するのか考えよ

5. 確立操作

これまで食事制限の操作を実験における統制条件のように書いてきた

強化子や弱化子の機能がうまく働くようにする、その機能を確立するようにするための操作のこと
強化子の効果を少なくするための操作
強化子の効果を大きくするための操作
パブロフのイヌやスキナーのラット
厳密に操作する場合は、自由摂取時と操作条件との体重の割合を用いて操作の程度を決めていく
研究倫理上の観点から、自由摂取時の90%程度とすることが多い
motivating operationと総称されるようになっている
島宗, 2019によると
establishingは「高める」という意味を帯びているので、飽和化と矛盾してしまう
motivatingは「動機づけ」という意味が帯びてしまうために厄介な問題も生じてしまうという
ここでは確立操作のままとしている

食物遮断化は厳密には生得的確立操作の1つ
食物遮断化は強化子として働く
食物飽和化は弱化子として働く
ただしこれは、馴化として解釈することも可能であり、厄介

島宗, 2019が想定した例で検討
日本人にとって米は十分に飽和化している状態だが、購買場面では白米の写真を見ただけで購入してしまう

確立操作を1つの項として捉えると厳密には4項随伴性であろう
確立操作という概念を振り返ってみると、この概念は、動因(drive)や誘引(incentive)といった概念と関連しているために、動機づけ(motivation)研究の研究対象になったことも理解することができる

6. 弁別オペラント行動と概念形成

人間の言語行動(の発達)との関連が深い
概念形成の考え方の一つに弁別オペラント行動の成立ということがある

ここでの被験体はハト
スキナー箱には前面パネルに3つのキーが横一列
垂直線 - 垂直線 - 水平線
左の垂直線をつつく→餌粒提示
右の水平線をつつく右餌粒提示なし
垂直線 - 水平線 - 水平線
左の垂直線をつつく→餌粒提示なし
右の水平線をつつく→餌粒提示
以上の随伴性操作を多数経験すると、ハトは左右のキー配置を変えても、見本となる中央のキーの垂直線には垂直線のキーを、見本となる中央のキーの水平線には水平線のキーをつつく反応をとるようになる
ここで、見本は左右のキーの2つの弁別刺激のどちらで反応するかを指示している
人間であれば、環境と言語行動との関係において見られること
環境にある事物を、言葉で発音したり、書き言葉で書いたりすることと同じ
これはある種の概念が形成されたこととみなされる

7. プレマックの原理と反応遮断化理論

第7回 レスポンデント条件づけで随伴性の操作として4つを区別した
刺激:反応:刺激の随伴性: 本章 弁別オペラント条件づけ
反応:反応の随伴性をここで検討する
ある先行反応に別の後続反応が随伴するような操作

高出現確率行動は、それが随伴された低出現確率行動に対して強化子として働き、低出現確率行動は、それが随伴された高出現確率行動に対して弱化子として働く
宿題に取り組まない子どもの宿題に取り組む行動の出現頻度を高める
宿題をしたら(低反応確率行動)、遊んでもよい(高反応確率行動)という随伴関係を設定する
いたずらの出現頻度を低下させる
いたずらをしたとき(高反応確率行動)に、罰としてトイレ掃除をさせる(低反応確率行動)という随伴関係を設定する
プレマックの原理に反する研究例も報告されるようになってきている

プレマックの原理をより一般化
自由接近場面からの遮断化の程度によって強化子が決定される
プレマックの原理では、反応が自由に行える自由接近場面での生起頻度に基づいていた
米山の例では、「遊ぶ」「トイレ掃除」という機会を遮断する程度によって「宿題」「いたずら」の出現が変化するということ

8. 再び、連合という考え方について


古典的行動主義に対して呼ばれる
スキナーの他に、ハルトルーマンとがいる
新行動主義では、「刺激S-有機体O-反応R」の連合
刺激と反応とを媒介するものとして「有機体(organism)」を想定
ワトソンの古典的行動主義は「刺激S-反応R」の連合
仮説演繹体系に基づく連合論を唱えたと言われる
動因低減説と呼ばれるモデルを提出
刺激と反応に、反応ポテンシャル、動因、習慣といった要因を組み込んだ数式を構築
目的に対する能動性を有機体に認めたことから、認知主義として捉えることもできる
迷路学習の被検体であるラットの行動を認知地図によって餌場にたどり着ける、つまり、目的と手段との連合として捉え直した
バンデューラの考え方も新行動主義と言われる
自己効力感など能動的な主体を想定している
現代の心理学者の多くは、この新行動主義の考え方を肯定的に見ていると言える
新行動主義というよりも徹底的行動主義(あるいは行動分析学)として知られていると同時に大きな誤解を受けていると思われる
行動分析学では有機体Oは認めない
厳密には「連合」というよりも「操作化」による「随伴性」という研究方法論を採用している
そこで、上記の「カテゴリーミステイク」に陥ることはないという主張
そうして、私的事象をシングルケースデザインで確認する
行動分析学に基づいた応用行動分析学は、さまざまな実践場面で用いられていて、成果を出していることは事実