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文化相対主義
人類学用語。人間の諸文化をそれぞれ独自の価値体系をもつ対等な存在としてとらえる態度,研究方法のこと。
みずからの文化を,唯一・最高のものとして考えるエスノセントリズム (自民族中心主義) に対する批判として形成された概念で,アメリカの人類学者 F.ボアズが提唱し,R.ベネディクトによって確立されたといわれる。
たとえば,一夫多妻婚,嬰児殺しなど,他の社会では悪とみなされる制度や慣習も,文化相対主義に立って当事者の立場から価値評価することで,その意味や目的,役割は理解されうる。
このような中立的な姿勢は,文化の多様性を容認して異文化間の相互理解を促し,また,人類学の基本倫理ともなってきた。
しかしこれを推し進めれば,すべての価値は相対的であり,人類に共通の基盤が存在せず,相互理解,比較研究は不可能であるという矛盾に陥る。また完全に客観的な立場というものの可能性を疑い,研究者は中立的に沈黙するのではなく,対象社会の利益のために積極的に行動すべきであるという批判もある。