グリーンスレッド
グリーンスレッド(Green Thread)とは、ソフトウェアによって実現される軽量なスレッドの一種です。
通常の
スレッド(ネイティブスレッド)がオペレーティングシステム(OS)によって管理されるのに対し、グリーンスレッドはアプリケーションまたはランタイム環境によって管理されます。
グリーンスレッドの特徴
1. ソフトウェアによるスケジューリング
OSではなく、プログラミング言語のランタイムやライブラリがスレッドのスケジューリングを行います。例えば、Javaの古いバージョン(JVM 1.2以前)はグリーンスレッドを使用していました。
2. 軽量性
ネイティブスレッドに比べて、コンテキストスイッチやメモリ使用量が軽量です。そのため、大量のスレッドを作成してもパフォーマンスへの影響が少ないです。
3. マルチコア対応の制限
グリーンスレッドは通常、単一のネイティブスレッドの上で実行されるため、複数のCPUコアをフル活用するのが難しいという制限があります。
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メリット
1. リソース効率
ネイティブスレッドよりも少ないメモリとCPUリソースで動作します。
例えば、数百万のグリーンスレッドを作成することも可能です。
2. カスタムスケジューリング
アプリケーションのニーズに合わせて柔軟なスケジューリングポリシーを実装できます。
3. 移植性
OSに依存しないため、同じコードが異なるプラットフォームで動作しやすい。
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デメリット
1. マルチコア利用の非効率性
グリーンスレッドの実装が単一のネイティブスレッド上で動作している場合、マルチコア環境での並列処理能力が制限されます。
2. I/Oブロッキングの問題
ネイティブスレッドではないため、OSレベルのI/Oブロッキングが発生すると、そのグリーンスレッドを含むすべてのスレッドが停止する場合があります。
3. 実装の複雑さ
グリーンスレッドの効率的な管理には、スケジューリングや同期処理の工夫が必要です。
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具体例
Java
Javaの古いバージョンではグリーンスレッドが使われていましたが、JVM 1.3以降はネイティブスレッドに移行しました。
Go言語のGoroutineはグリーンスレッドの一種で、Goランタイムがスケジューリングを行います。
I/O操作を非同期的に処理することで、ブロッキングの問題を軽減しています。
Erlang
Python(geventやgreenlet)
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関連する概念
グリーンスレッドと似た概念で、軽量な並行処理を実現します。PythonやKotlinでサポートされています。
グリーンスレッドと非常に似ていますが、一般に明示的な切り替え操作が必要です。
「グリーンスレッド」という名前の由来は、1970年代にサン・マイクロシステムズ(Sun Microsystems)がSPARCプロセッサの上でスレッドを実装する際に用いたGreen Projectに由来しています。
当時、SPARCプロセッサ上でスレッドを効率的に動作させるため、OSに依存しないスレッドモデルをソフトウェアで実現する必要がありました。このプロジェクトが「グリーンプロジェクト(Green Project)」と呼ばれていたため、そこで実装されたスレッドが「グリーンスレッド」と呼ばれるようになりました。