連邦法
アメリカでは、
連邦法(Federal Law)
州法(State Law)
はそれぞれ異なる法律体系で運用されており、適用される範囲や権限が異なります。
以下にその区分と具体例を説明します。
1. 連邦法と州法の区分
連邦法
憲法で規定された権限に基づく分野で制定される法律。
全50州で統一的に適用される。
国全体に影響を及ぼす問題や州をまたぐ問題に適用される。
各州が独自に制定・施行する法律。
その州内に限定して適用される。
地域に根ざした問題や、連邦法で扱われていない分野をカバーする。
2. 連邦法と州法の具体的な適用範囲の例
連邦法で規定されている主な分野
1. 国際問題:
外交、移民、国籍(例: 入国ビザの発行)。
2. 州間取引:
州をまたぐ商業活動や通信(例: 州間バスや航空路線の規制)。
3. 知的財産:
著作権、特許、商標の保護。
4. 連邦犯罪:
麻薬密輸、連邦政府機関への攻撃、テロ行為。
5. 金融および通貨:
銀行規制、証券取引(例: SECによる規制)。
6. 民権:
差別禁止法(例: 1964年の公民権法)。
州法で規定されている主な分野
1. 刑法の大部分:
殺人、窃盗、性的暴行などのほとんどの犯罪。
2. 家族法:
離婚、結婚、養子縁組の手続き。
3. 不動産法:
土地の所有や賃貸に関する法律。
4. 教育:
公立学校の運営、学区の規定。
5. 労働法(州レベル):
州ごとの最低賃金や労働条件。
3. 連邦法でのみ制定され、州法では存在しない例
1. 移民と市民権
州は独自に移民法を制定することはできず、移民に関する規制は連邦政府のみが行います。
例: 永住権(グリーンカード)の取得、国外追放の規定。
2. 著作権および特許法
著作権や特許は連邦法で統一的に管理され、州法では扱われません。
3. 通貨および金融
米ドルの発行や連邦準備制度(Federal Reserve System)の運営は連邦法に基づいています。
4. 州間および国際貿易
州をまたぐ商取引(例: 州を超える鉄道や輸送サービス)は連邦政府の管轄。
5. 連邦の公民権法
民族や性別、宗教などによる差別を禁止する法律(例: 公民権法)は連邦法として制定されています。
4. 州法のみで規定され、連邦法で制定されていない例
1. 交通違反
各州が独自に交通ルール(例: 制限速度)を定めています。
2. 飲酒や喫煙の年齢規制
飲酒や喫煙の最低年齢は州によって異なる場合があります。
3. 州内の最低賃金
州が独自に連邦最低賃金を超える額を設定できます。
5. 連邦法と州法が競合する場合
優越条項(Supremacy Clause):
競合が生じた場合、連邦法が適用されます。