>兵事は詭道である。
> 故に為して為さざるが如く、用いて用いざるが如く、近くして遠きが如く、遠くして近きが如くにして相手を惑わすのである。
> 利をみせて誘いだし、乱してこれを取り、実あれば備え、強ければ避け、怒らしてこれを乱し、下手したてに出でてこれを驕らし、万全なればこれを労し、親しきあればこれを離す。
> その備え無きを攻め、その不意に出でるは、兵家の勝を得るところではあるが、これは常に根本たるべき五事七計あって後に用いるべきものである。
> いまだ戦わずして廟算するに勝つ者は、勝敗の義を幾重にも巡らして万全を期せし者であり、勝たざる者は、審らかにせずしてその備え全からざる者である。
> 計ること多き者は勝ち、少なき者は勝たず、ましてや計ること無きにおいては言うまでもない。
> 計の多少を以てこれを観れば、勝負の帰趨は明らかとなる。