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【ネタバレ有】ゴジラ(2014) - diary.jgs.me
みてきましたよ、今年の日本男児が最も期待していたといっても過言ではないであろう「ゴジラ」を。僕はもともとゴジラの熱狂的なファンではなく、同年代でちょいちょいいる平成ゴジラシリーズのファンということもなく、特撮界の草分け的な存在且つ唯一無二なキャラクター性、ある種のカリスマ性のようなものには畏敬の念を抱いていたが、ついこの前まで鑑賞することはなかった。東京に引っ越してきた春に、神保町でやっていたゴジラ一挙上映ではじめてオリジナルのゴジラの姿を拝んだ。無知だった僕は、勧善懲悪的な爽快感のある特撮映画なのだと思い込んでいたのだけれど、全くそんなことはなく、全面的に反戦反核のメッセージが刻み込まれていてそして人間たちのドラマにとてもフォーカスされていた映画だった。このギャップに面食らい、しばらくは飲み込めずにいたが次第にゴジラという潮流に興味を持っていった。
公開日が近づくにつれて、劇場でゴジラの予告編がかかることが増えて何度も見ていたのだが、どうにもただのディザスター映画の予告編にしか見えず不安の気持ちが大きくなっていった。
IMAX 3Dで鑑賞したので、上映前にIMAXのあの映像がいつも通りかかったのだけれどいつもの「The world most〜」のやつがゴジラ仕様になっていて気合いの入りように思わずアガったんだけど、そのあとの原発のくだりで一気に萎れていった。相変わらずの勘違いジャパン(ジャンジラ原子力発電所てなんやねん…)に、スリーマイル島かよ!みたいな原発(立地的に浜岡っぽいけど、荒廃した都市は東京のいち都市なのかってぐらい発展してて笑った)、片言の日本語(お父さんを警察署まで引取りに行ったときに端役で出てた親子3人組の片言とか)、都合よく始末されてしまうように亡くなってしまう主人公のお母さん…がっかりポイントを挙げればキリがない。それでもそういえば、オリジナルでもなかなかゴジラさんは姿を現さないしその辺もオマージュなのかもしれないな、なんておもいながら見ていた。なにより、渡辺謙の役名が「芹沢博士」なんだからこれはオキシジェン・デストロイヤーあるな、などとおもっていた。
そしてこの後、敵の怪獣がフィリピンからハワイを経由してアメリカへ向かうため、ホノルルでついにゴジラと鉢合わせてついにゴジラ様がその御姿を現し、そしてあの象徴的な鳴き声をあげる。その瞬間、僕は全身の毛が逆立ち、目から自然と涙がこぼれた。現代のテクノロジーによって蘇ったゴジラとその咆哮の後ろに、この60年余りこの「ゴジラ」というキャラクターを扱った映画を創ってきた、携わってきたひとたちの姿がフラッシュバックするように写ったからだ。もうそれだけで前述してきたことは全部許せた。そして、終盤のMUTOx2とゴジラの大立ち回りの迫力たるや!プロレス的展開を心得たゴジラ先生の放射熱線!本当に最高だった。ありがとう、ありがとう。
とはいえ、やっぱりご都合主義的展開(特に最後のボートで核弾頭を沖に運んでるときに救助が来たのは本当に萎え萎えだった。今作では芹沢ではなく尾形がその身を犠牲にするのかあ…お父さんとの約束を守って我が身を犠牲にして家族を守るんだなあ…などとおもっていた)や、放射能の描写(ガイガーカウンターの数値が低いのを確認するやいなやよっしゃー!とばかりにマスクを外したりなど)が杜撰だったりと、目に余る点が多かった。それから、これは深読みしすぎなのかもしれないけれど、フィリピンからハワイ、そしてハワイを経由してサンフランシスコが襲撃されて、サンフランシスコではチャイナタウンを中心に描かれているのは中国の膨張主義への風刺なんじゃないかと読んでしまう。終盤で主人公がタンクローリー車からガソリンを放出して卵を爆殺するくだりでは中華系のシンボルとも言える龍にガソリンがかぶって浸っていき、爆発するというのは確信的だとおもった。そして、その敵をある意味日本のメタファーとも言えるゴジラが撃退するのは、暗にアメリカが中共の防波堤として日本に期待してますよ、という意図を持ったメッセージなんじゃないかと、ついつい読んでしまうなあと。オリジナルの方でも、ゴジラの進撃ルートは第二次大戦B-29の爆撃ルートだったというし、それにかぶせて日に日に現実味を帯びるそれに恐怖しての演出だったのかもしれないし、単純に日本も出しつつアメリカでディザスターをしようとしたらこうなっただけなのかもしれないけど。あとは、なんせ「芹沢」の名を継いでいるというのに、オリジナルの芹沢の葛藤や聡明さが全て廃されてなんかわからんけどゴジラを盲信しているジャップとしてしか描かれていなかった渡辺謙が不憫であった。さすがに、現代版でまたオキシジェン・デストロイヤーやられたらさすがにリアルさが薄れて微妙になるかもしれないけれど、それに準ずるようなエッセンスはほしかった。
でも、天災のように出現するゴジラとMUTOに為す術もない人類の絶望感のようなものはよく描かれていて、ディザスタームービーとしてはとてもよくできた映画だとおもう。特にホノルルでのゴジラの上陸シーンは「ゴジラが出現するだけでもはや天災」というあたりがよく描かれていて無力感しかなかった。あの津波のシーンもおそらく3.11を参考にしたのであろう。MUTOの行動も実に生命感のあふれるもので、卵を爆殺された母親の悲愴な顔にはおもわず主人公に「てめえ!!!」みたいな気持ちにさえなった。
褒めたり貶したり褒めたりなんやねんという感じであるが、好き!嫌い!でも好き!みたいな女子中学生の恋愛みたいな(違う?)付き合いなんだとおもう、このゴジラとは。いろいろ書いてきたが、エメリッヒ版とは違ってオリジナルに対するリスペクトもかなりあったし、ゴジラというキャラクターを長い目で見れば911以降、短い目で見れば311以降の現在において娯楽作品として蘇らせたことにはひたすら感謝するしかない。続編も決定しているようだし、そちらにも期待したい。願わくば、オリジナルホルダーである日本で、オリジナルの技術である「特撮」をふんだんに使った現代の「ゴジラ」がみてみたいなあと祈らざるをえない。

July 27th, 2014 6:05pm