プリティ・ウーマン
めっちゃよかった。泣いちゃった。
一つ目の「書き換え」は「王子様が女性をお姫様にする」だけではなく、「お姫様が男性を王子様/騎士にする」ってところ。エドワード(リチャード・ギア)は冷徹な企業家で企業買収してバラバラにして売り捌くってことばかりしてる。眠らずに仕事ばっかりしてる。遊び心がない。これがヴィヴィアン(ジュリア・ロバーツ)との出会いによって、企業買収ではなく事業提携を選ぶし、眠れるようになるし、裸足で芝生の上を歩き、最後はあの有名なラスト。クラクション鳴らしながら「ヴィヴィアーン!」って叫びながら車で迎えにくるっていう。
もう一つの「書き換え」は「お姫様」が決して「囲われ」にならないこと。最後でエドワードが、NYにアパートメントも手配してある、一緒に来てくれとヴィヴィアンにいうのだが、これをヴィヴィアンは断る。囲われ女になんてなりたくない、そんなことしてもダメになる、自分はもう一度自分で自分の夢を追うという主体的な洗濯をする。
「キス」がこの作品では重要なキーワードになっている。まず、ヴィヴィアンはルームメイトから、仕事でフッカー(売春婦)をするなら唇へのキスだけはダメと言われており、それを守っている。唇へのキスをすると相手に惚れてしまうことがあるからだという。結果、エドワードとヴィヴィアンは
セックス先キス後パターンになる。
この「キス」に特別な意味を持たせるのは「いつか王子様が」パターンをイメージさせるためでもあるだろう。
ディズニープリンセスはキスで目覚めたり、魔法が解けたり呪いが解けたりするわけで。もう一つ、この作品ではキスの意味を強めるために、バスタブにつかりながらヴィヴィアンがプリンスの
KISSを歌うシーンを挿入している。入浴しながらめっちゃはずれた音程で楽しそうにKISSを歌うヴィヴィアン。このKISSの歌詞がプリティ・ウーマンそのままなのだ。
> You don't have to be beautiful to turn me on
> I just need your body, baby, from dusk 'til dawn
> You don't need experience to turn me out
> You just leave it all up to me, I'm gonna show you what it's all about
> You don't have to be rich to be my girl
> You don't have to be cool to rule my world
> Ain't no particular sign I'm more compatible with
> I just want your extra time and your kiss
美しくなくたっていい、経験だって必要ない、夜通しキミの体がほしいだけ!という歌を、美しさと経験をたっぷり持ってるフッカーが歌うくすぐり。サビでは「キミの時間と××××が欲しいだけ」と歌われる(××××のところはチュッチュっチュッチュってキスのマネ。
山口百恵の
美・サイレントと同じですね。肝心なところは伏せる。もっとも百恵のほうがプリンスよりも先なわけですが)。
その他気になったところとしては、エドワードの10年来のビジネスパートナーがチビだってことですかね。ハリウッドはチビ表象がひどい。冒頭ですぐにチビが出てきたので「まさか」と悪い予感がしたが、思いっきり悪役に。
ゴーストバスターズの法則参照。
作中、このビジネスパートナーにエドワードはヴィヴィアンがフッカーだと
アウティングしてしまう。ヴィヴィアンがスパイだとの疑いを晴らすためとはいえ、もうこれ完全にアウトだし、その結果、このビジネスパートナーから性加害をされそうになり、防衛したヴィヴィアンはこの男から殴られてしまう。
あとは音楽。
Roxetteの
It must have been loveもバッチリなタイミングでかかるし、そしてもちろんロイ・オービソンも.....と書いてきて、本当に音楽がいい作品なんだなと。それと脇役!!! ホテルの支配人、運転手のダリル、モース社社長、ヴィヴィアンのルームメイトとみんな脇役がいい人なので見ていてほっこりする。