>耽美主義ともいう。あらゆる価値のうちで美を最高のものとする世界観ないし人生観。芸術のうえでは美を唯一絶対の目的として追究する態度をいう。生活上の立場としては享楽主義と結びつき,実際生活をも芸術化しようとする傾向を含む。文芸史上では 19世紀後半に,いわゆる「芸術至上主義」としてポー,ボードレール,ワイルドらによって自然を排し,芸術独自の空想世界の創造を目的とし,思想や感情よりも感覚を重んじ,道徳性を超脱して美の自律性を追究することなどが主張された。そこから悪を顕揚する悪魔主義に近づく傾向があった。日本では,明治末から大正にかけて,自然主義に対抗する形で登場した。『スバル』の北原白秋や吉井勇などの歌人,永井荷風,谷崎潤一郎などの小説家がその代表である。