>『世界聖典全集』とは、大正年間に世界聖典全集刊行会から出版された世界中の宗教や哲学における聖典を網羅した稀有壮大な叢書です。まさに大正教養主義を象徴する全集でした。『論語』をはじめとした四書や仏典はもちろん、『古事記』や『日本書紀』、『旧約聖書』『新約聖書』『コーラン』、さらにはバラモン教の『リグ・ヴェーダ』『ウパニシャッド』、ゾロアスター教の『アヴェスタ』、エジプトの『死者の書』まで収めています。大正時代には仏教、宗教書出版が活発になり、『真宗全書』(蔵経書院)、『日本大蔵経』(其編纂会)、『仏教大辞彙』(冨山房)、『仏教大観』(丙午出版社)、『仏教大系』(其完成会)、『仏教大辞典』(大倉書店)などが続々と刊行されていました。それらの企画には東京帝国大学教授で仏教学者の高楠順次郎が必ずが加わっていましたが、彼こそ『世界聖典全集』の出版プロデューサーでもありました。つまり、『世界聖典全集』は各種の仏教全集の番外版というか、仏教以外のすべての宗教の聖典を網羅するという野望があったようです。