『ドリアン・グレイの肖像』の好きなシーン
オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』の終盤にさしかかった辺りから登場するモンマス公爵夫人(グレイディス)と、主人公のドリアン・グレイを道徳的に堕落させた皮肉屋のヘンリー・ウォットン卿(愛称:ハリー)とのやりとりが、ちょっと意味わからないけど奥深くて面白いな(厨二心をくすぐるカッコよさまである)と思ったのでメモ。
ヘンリー・ウォットン卿は彼女のことを「頭がよすぎる女」とドリアンに語っている。
パート1
>「わたくしはむしろきょうの誤謬を選びます」と夫人の返答。
>「あなたにはかなわない。武装解除だ、グレイディス」と夫人の気分のわがままさを見てとった卿は声高に言う。
>「楯を奪っても、槍は残しておいてさしあげます、ハリー」
>「ぼくは『美』にたいしては槍をふるわぬことにしている」手を振りながら言う。
>「いいえ、それがあなたのお間違い。あなたはあまりに美を尊重しすぎていらっしゃる」
>「どうしてそんなことがおっしゃれます? 善良であるよりは美しくあるほうがいいとは考えていますが、その反面、醜くあるよりは善良であるにこしたことはないと認める点では、ぼくはひと一倍ですからね」
パート2
>「わたくしたちの民族(19世紀末のイギリス人)には発展があります」
> 「とんでもない! 懐疑主義こそは信仰のはじまり」
>「糸は切れるもの。迷路のなかで迷い子におなりでしょう」
パート3
>ドリアンがなかにはいってガラスの戸が締まると、ヘンリー卿は向き直って懶げな眼で公爵夫人を見た。「ドリアンにすっかり惚れこんでおいでですか?」と尋ねる。
>夫人はしばらく返答せずに、じっと景色を見つめていたが、やがて「それがわかりさえすれば」と答えた。
>卿は頭を振った。「わかってしまえばおしまいですよ。不確実こそ魅力だ。霞はものをすばらしく見せる」
>「すべての道は同じ終点に通じます、ねえ、グレイディス」